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僕らの墓標に咲く花  作者: 疑堂
第三話
13/51

予兆①

 アブルは無言で考える。遠退く自動車、パキフィリアの表情、そして遅刻を考慮し、

「それは、恋泥棒的な比喩か?」

『違うよぉ……犯罪的な直訳だよぉ……』

 精神的衝撃で内面に引っ込み、さらに幼児退行したザヘル。表層に出てきたアブルは面倒臭さと情けなさを等分した表情で辟易する。

「というより、私にはパキフィリアの表情が輝いていたように見えたが?」

『あれは作り笑いだよぅ。そのくらい分かれよぅ』

 アブルは力の限り「分からん!」と叫びたいのを、非常事態につき苦い顔に留める。

「パキフィリアを連れ去った男に心当たりは?」

『ない。…………いや、少し待て』

 記憶のどこかに引っかかりを感じて、ザヘルの口調が意識の奥に潜っていった。

 アブルの視線が横移動。先方に、筋骨隆々の中年巨漢が立っていた。二m近い長身に、張り裂けんばかりの筋肉、柔和な表情は、どこか大猩猩(ゴリラ)を連想させる。

「レイダースのハダンと申します」

 ハダンは律儀に一礼。一挙手一投足から隙のなさが窺える、そんな動作だった。

「ゲルザヘルさんですね」

 アブルは答えない。レイダースの隊員であるハダンなら、二人の関係は既知のはず。返答がなければアブルだと予想しているだろうと仮定。

「パキフィリアの件か?」

「何のことでしょう?」

 ハダンの態度ははぐらかしているようにも、不思議がっているようにも取れた。

 パッキィが誘拐された直後の出現は都合がよすぎる。ザヘルかハダンかが、何者かに誘導されたのだ。となると、超新米巡査の件すら足止めの可能性が出てきた。

「我々の勧誘を十年近く断り続けていると聞きました」

「アルディオンの差し金か?」

 うんざりと、心底からうんざりと、アブルは言葉を吐き捨てた。ディオとの邂逅は十年以上前にも遡る。当時、各地の武装組織と対立していた二人の元に、一介の勧誘員だったディオが接触してきたのが切欠だ。

「いえ、私の独断です」

 ハダンの発言は、裏を返せば独断で処理できる用件で接触したと言っていた。

「これからも、我々の勧誘を断り続けるおつもりですか?」

「だろうな。ザヘルが首を縦に振ることはない」

 そうは言ったものの、アブルもザヘルに同意見だった。二人は組織に属するのが性に合わないという以前に、レイダースの活動そのものを疑惑に抱いていた。

 宿主の自殺と犯罪を防ぎ、寄棲獣の被害を減らし、人類と寄棲獣の安全を保障する。それは賛同されるべき理念だ。

 しかし、助ける者と助けざる者を強制されるのには納得できなかった。ディオのように全てを救おうとする者、仕事だからと割り切れる者は否定しない。だがどこかの誰かの、もしくは世界の都合を押し付けられているような命令には、承諾も服従もできない。

 結果として二人は、レイダース支部隊を含めた、宿主を擁する武装組織との対立に身を置く羽目になった。

 パッキィとの出会いやマリオと高等学科以来の再会、〝強敵〟と書いて〝とも〟と呼ぶ連中との遭遇と激突。刺激と起伏に満ちて退屈はしなかったが、我を通して行き着いた先は破滅でしかなかった。挫折と敗北の連続が、腑抜けた一因だとして過言ではない。

 アブルは初見からハダンに感じていた、違和感と危機感を唐突に理解した。

 先程から、いや最初から、ハダンは全ての場面で柔和な表情も泰然自若とした態度も一切変化させていない。それは人格から感情を切り離しているがため。ハダンという男は、完璧に演技された〝刃断〟という別人で役名なのだ。

「じゃあ、死ねよ!」

 ハダンが仮面をかなぐり捨て、本性を剥き出しにする。同時に放出されたのは、平時からは想像もつかない激烈な敵意と殺気、そして憎悪。

 怪物が人間の生皮を脱ぎ捨てるように、ハダンの面構えが凶悪に変貌。掌に波紋が生じ、鉄棒が握られ、鉄板が伸び、身の丈を超える巨大な剣が出現した。

 カテゴリwは物質の三態中の固体を操り、寄棲獣は哺乳類に酷似する。加えてレベル5--のハダンにとっては、自分の体積に等しい質量を召喚するなど造作もない。

「どうしてそこで『死ね』なのだ? 最近の若者は、そこまでキレやすいのか?」

 アブルは頭痛に耐えるため、目頭を指で押さえてきつく目を閉じる。気がするではなく、本当に軽微の頭痛が襲っていた。

 本来肉体の主導権を握るザヘルが奥に引っ込み、アブルが前面に出ている現状は、体と心が上手く噛み合わない状態だ。慣れない体に脳が負担を覚える。

 そうでなくても、普通の多重人格は一つの人格が表層に出ている場合、残りの人格は眠っているといわれている。普段から二つの人格が同時に覚醒しているのは、脳に多大な負担をかけているのだ。精神的な負荷に耐えられるほど、二人の脳に余裕はない。

 そのためザヘルの睡眠頻度は極端に多く、お蔭で義務教育の中等学科は卒業できても、居眠りで単位の取れなかった高等学科は中退するしかなかった。

「寄棲獣はすべからく死ぬべきだ」

「お前、レイダースだろ。寄棲獣や宿主の害意から一般人を護るのと同様に、一般人の敵意から寄棲獣や宿主を護らねばならないのではないか?」

「ああ、確かに規約ではそう取り決められている」

 ハダンは意外にもあっさりと認めた。しかし瞳には殊勝さも弁護の成分も見られない。

「だが、レイダース隊員が寄棲獣を殺戮してはならないと、規約には記されていない。

 レイダースの隊員とは、寄棲獣と宿主への殺人許可証なんだよ」

 ハダンの宣戦布告にアブルは鼻を鳴らした。冷静沈着を身だしなみとするアブルは、内心を表層に出す頻度が少ない。しかし失笑と嘲笑が止まらなかった。

「不幸自慢は飽き飽きだ。宿主か寄棲獣の被害に遭ったのだろうと容易に推測できて、私に名推理を披露させぬ腹積もりが明白にすぎる。

 下らない。下らなすぎる。たかが有り触れた悲劇で、大量生産品の憎悪と殺意だ。そんな安物の悲劇は、路傍の石ころと何ら変わらずそこら中に転がっている」

 底なしの悪意を叩きつけてくるハダンに、それ以上の言葉と憤怒をぶつけるアブル。

「たかが悲劇だと? 私にとっては人生で最大最悪の絶望だ!」

「それでもたかがだ。どこまでも遠い世界の、有り触れた悲劇で悲劇的な演目だ」

 ハダンの怒号が迸った。寄棲獣に対する復讐心は、アブルに対する激怒となって燃え上がる。正午の暖気にあっても冷たさを宿す剣に、さらに怒気が乗せられた。

 アブルの拳に力が溜め込まれていく。暴力の予感で吐く息は蒸気を帯び、残虐な興奮に顔が歪む。破壊衝動に急かされる足取りは荒々しく、流血を期待して瞳が爛々と輝く。

 普段はザヘルが表層におり、アブルが頭脳労働担当だから誤解されがちだが、

「特急の用だ、速攻で排除する。悪しからず」

 肉体労働は、アブルの担当だ。


「あれは……」

 中年巨漢を不必要なまでに痛めつけたアブルが単車に跨り、猛速度で走り去っていく。

 その様子を見ていたマリオも、アブルと同じようにチャリンコに跨っていた。自転車の籠と荷台には、仕入れたばかりの食材が山と積まれている。

 マリオの直感は、親友の危機だと告げていた。



「お~いしぃ~っ♪」

 一方その頃のパッキィさん。恋人の奮闘なぞ露知らず、誘拐犯に提供された牛乳プリンに舌鼓を打っていた。パッキィを拘束した椅子はさらに床に固定され、隣の机には空になった牛乳プリンの容器が山を成している。

 監禁部屋にはパッキィを含めて数人の男女が待機している。綿密に計画され、それぞれが役割を持って行動する、組織的な犯行だった。

 耳に入ってくるのは、他愛のない雑談ばかりだ。どこの食堂が美味いだ、可愛い給仕がいるだ、音楽や漫画やお洒落の話題に、今どき『彼氏に迎えを頼まれたので、どうぞ車にお乗り下さい』で騙される奴はいないだとか。

 パッキィは彼らの会話を聞いているだけで、腹が立って匙の動きが止まらなかった。

「そろそろあいつがくたばる頃合だろう」

 粘着性さえ伴ってパッキィの耳朶に滑り込んだ言葉は、匙の動きすら止めた。

「どういう意味?」

「どうもこうもない。奴は我らが好みそうな隠れ家の特徴を把握している。ならば逆に、該当する物件全てに罠を張ればいいだけのこと」

 パッキィは誘拐犯の目的が自分ではなく、ザヘルであると気付いた。

 自分が窮地に陥れば、必ずザヘルが助け出してくれる。だが実は、ザヘルは狩人ではなく狩られる側だったとしたら? 追い詰めていると思い込んでいる状況ほど、逆に自分が追い込まれているとは思わないものだ。

 パッキィも、誘拐犯の誰もが、ザヘルの絶望的な敗北を予感する。

 その勝利の確信と油断が、結果として反応を遅らせた。

 凶悪な物体が室内に飛び込んできた。輝く雪崩となった強化硝子の破片をまとい、巨大な影が床に着地。勢いを殺せずに数mを滑走し、進路上の誘拐犯を撥ね飛ばし、車体の向きを九十度曲げ、壁に激突する寸前でようやく停車。

 小型自動車並みに巨大な超大型単車が、地上三階に突如として出現していた。

「失礼。呼び鈴が見当たらなかったので、勝手にお邪魔させて貰った」

 押し込み強盗が模範するであろう凶悪な顔つきで、アブルは唇を歪めた。

 待ち望んだ助けの出現にも、なぜかぶすっと頬を膨らませてそっぽを向くパッキィ。

『アブル、代われ』

 お目当ての王子が現れなくてご機嫌斜めな意図を察し、ザヘルが表層に出現する。

 ザヘルの敵意の視線が向けられた先、誘拐犯連中の首筋には、金、銀、銅の三つ首犬の刺青があった。ザヘルが素性を特定した、唯一にして決定的な特徴だ。

「久しぶり、と言った方がいいのか? 傭兵旅団〈ケルベロス〉」

 ザヘルが口にした組織名に、パッキィが怪訝な顔をする。ザヘルがカルギアに定住する以前に一悶着起こした経験があるのだが、今はそれを説明している暇はない。

 刺青はわざと気付くように偽装しなかった。だからケルベロス団員は不可解だった。

「なぜお前はここにいる? 罠はどうした?」

「やはり、罠を仕掛けていたか」

 ザヘルは単車に肘を乗せて頬杖をつき、不動の体勢。そのくせ視線だけは鋭く、ケルベロス団員とパッキィの位置を確認していた。

 ザヘルの一言で、ケルベロス旅団は裏をかかれたのだと察した。ケルベロスの好む要素を持たず、逆に狙撃と観察の困難さ、内部からの監視のしやすさと脱出経路などの、外せない要素を有した物件はそんなに多くない。

 現場の指揮を任されているらしき男が、地団駄を踏まんばかりに悔しがる。

「くそ、罠を見抜かれるならまだしも、こんなに早く発見されるとは!」

「伊達や酔狂で、市内を徘徊してるわけじゃないんだよ!」

 悪辣に嘲笑するザヘル。その態度がケルベロス団員どもから冷静さを奪っていた。

 しかしこの場で最も冷静さを欠いているのは、挑発している当のザヘルだ。

「で、どうして俺の恋人を攫った?」

「知れたこと。かつて貴様に敗れて自害した()(がしら)、銀の牙のパグと、金の首輪のマルチーズの報復だ。正々堂々と葬り去ってくれるわ!」

 最初から、ザヘルはその解を導き出していた。顔を俯け、深く、深く息を吐き出す。肺の空気が全て搾り出されているような長い時間、ザヘルは息を吐き続けた。

「たかがそんなことのために、パッキィを巻き込んだのか?」

 上げられた面には、闇黒が宿っていた。普段の世捨て人然とした無気力さからは想像もできぬ、鬼気と殺気が噴出している。

「貴様にすればたかがでも、我らには至上の命題だ!」

 指揮官の合図を皮切りに、一斉に銃弾が放たれた。

 ケルベロス旅団の故国であるルートヴェヘナは、寄棲獣の生息数が少なく、寄棲獣や宿主に対しての知識がほとんどない。逆に言うなら、ケルベロス旅団は常人の集団でありながら、寄棲獣や宿主に対抗しているのだ。

 当然、装備も対寄棲獣、対宿主を想定した物品。拳銃が厚さ数㎝の鉄板すら貫く。

 対寄棲獣用の高価な弾丸を惜しみなく投入した点に、ケルベロス旅団の本気が窺えた。

 必死の銃撃を足止めに、さらに必殺の長斧による連続攻撃が降り注ぐ。

 弾丸の嵐が殺到し、天頂から長斧が振り下ろされ、両者は無意味に無効化された。弾丸は不可視の障壁に弾き返され、長斧はザヘルの掌に受け止められて停止。出鱈目に跳ね返った弾丸はケルベロス団員どもを傷つけ、長斧の団員は飛び退って仕切り直す。

 そこでようやく、ザヘルは単車から地に降りた。構えも取らずに、無造作に歩く。

「最近誰かに言った気がするが、あえてもう一度言おう。たかが有り触れた復讐劇で、大量生産品の憎悪と殺意。そんな安物の展開は、路傍の石ころと並べて転がしておけ。

 お前らにとってどれほど重要事だろうが、俺にとっちゃ遠い別世界の話題だ」

 ザヘルは無造作に進んでいるだけなのに、付け入る隙が見当たらない。

 誰からともなく喉が鳴り、ケルベロス旅団はようやく気付いた。仇敵を相手にするにも拘らず、精鋭ではなく自分たちのような下っ端が派遣されたのは、戦力を温存しているから。自分らは先遣隊であり、宣戦布告の通達員であり、ただの人柱なのだと。

「だがお前らは、別世界の問題にパッキィを巻き込んだ。その報いを受けて貰おうか」


 結局ザヘルはすぐにやる気をなくして、アブルがぶちのめしたわけだが。



「それにしても、あいかわらず化け物じみた高機能よね。何食べたら防御障壁なんか発生出来るようになるのよ? てゆーか、どこから飛び込んできたの?」

「そこの女、私の愛車に勝手に触るな! 指紋をつけるな!」

 アブルのぞんざいな物言いに、パッキィはむっと表情を尖らせる。

「ザヘルの弟の癖に生意気ね」

「誰が弟だ、誰が。断っておくが、ザヘルの方が人間社会で暮らすのに適しているから、普段は私が引っ込んでいるだけだ。私たちに兄、弟の関係性は存在しない」

「口答えとは笑止千万ね。えーい、硬貨で単車に傷付けてやるー!」

「あぁん! ごめんなさいすいませんわたしがちょーしぶっこいてましたぁ」

 アブルは目鼻口汁を滂沱と降らしながら、床板に額を叩きつけて土下座を繰り返した。

 勝ち誇るパッキィは、興味の視線で単車を眺め回す。素人目にも入念に手入れされ、小さな傷は多いが塗装などで目立たないように工夫されているようだ。

 車体横には〈ホライゾン〉と車名が記されていた。

 マジ凹みして引き篭もったアブルの作業を引き継いで、ザヘルは行動不能に陥ったケルベロス旅団の男どもを縛り上げていく。同様に女性陣はパッキィの担当だ。

「しっかし……」

 ザヘルは改めて、パッキィの縛り上げたケルベロス旅団の女性陣を見た。ザヘルが他の女を緊縛するのを嫌ったパッキィが自ら進み出たのだが、

「もうお嫁に行けないよぉ……ぐすんぐすん」「くそっ、殺せ! 殺せぇ! こんな辱めを受けるくらいなら、いっそ殺して下さいお願いします!」「らめぇぇぇぇっ!」

 女性陣は後転の途中で両脚を開いた格好、いわゆる恥ずかし固めの刑に処されていた。

「パッキィさん、相変わらず性格がお悪いようですなぁ」

「あら、ザヘルだって似たようなものだと思うけど?」

 パッキィの指摘の通り、ザヘルが担当した男連中は体中の関節を外された上で球状に畳まれ、その挙句に縛り上げられていた。

 げひげひげひ。ふへふへふへ。

 さも愉快そうに、下卑た笑い声を堪えようともしない男女二人。ケルベロス旅団を完全制圧し、あまつさえ玩具にしているという闇黒の愉悦がそうさせていた。

 ザヘルの視線が砕けた窓の外に向けられる。空はすっかり茜色に染まっていた。

「というか、もうすっかり夕飯前だな。予定が台無しだ」

 頬を掻くザヘルと、ザヘルの肩を叩くパッキィ。二人は談笑しながら昇降機で地上に降り、建物を出て、市街に歩いていく。どこにでもある、恋人の日常だった。

「本当はね、」

 堰を切ったように言葉が聞こえてきた。ザヘルが見下ろした先で、パッキィの表情が泣き出す寸前に崩れている。

「すっごくすっごく怖かったんだよ。不安だったんだよ」

 歩きながらザヘルの胸に顔をうずめて、嗚咽を流すパッキィ。ザヘルは何度も何度も頷いて、パッキィの頭を撫でる。

 いくら雌獅子といえど、牙を抜かれ爪を折られては子猫と変わらない。それでも傍らに選んだのが勇ましき雄獅子であったならば、彼女は最後の瞬間まで雌獅子であろうとし、死の運命に挑むのを躊躇わなかっただろう。

 だが、ザヘルは座敷犬だ。だから彼女も一匹の子猫で、一人の女でいられる。

「大丈夫だ。キミは俺が守るから」

 ザヘルは腕を回し、パッキィをきつく抱き寄せる。悲痛に、痛切に。

「オレは一度全てを失った。もう誰も、何も失いたくない。

 だからこの両手に摑んだものは、どんなことをしてでも守り抜いてやる」

 パッキィを守ろうとする言葉と仕草を裏切り、ザヘルの表情は見捨てられまいと必死になる子供の顔に泣き崩れていた。

「大丈夫、私はキミから離れないから。最後まで付き合ってあげる」

 寄り添う恋人の仲睦まじい姿は、しかし裏腹に、有刺鉄線で雁字搦めにされているような痛々しさ。離れようとすれば針で傷つくため、身を寄せ合うしか出来ないように。

 一方、去っていく男女の後姿を、途方に暮れて眺める姿があった。マリオの全身は無数の包丁と鉄鍋で完全武装されている。力の抜けた手から岡持ち型収納箱が落下し、物悲しい音を奏でて爆発物が転がり出た。

「食材を放棄してまで駆けつけたんだぞ?」

 一足遅かった。

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