18.夏の空を見上げると思い出します。
あたしが短大生時代
バイト先の2コ上の人に
恋をした。
めったに話すことはなかったけど、一度だけ飲み会の席で話をした。
(あたしは未成年だったから飲酒はしてなぃ)
とても素朴な…ぼくとつとした人だった。
イケメンではなかったけど、笑顔がチャーミングな人という印象。
多くは語らないけど、仕事は丁寧で、それでいて周りの人には可愛がられていたのを覚えている。
どこが好きだったのか?と聞かれると。
「雰囲気が穏やかだから、居心地がいい」感じ。
「もっと近づきたい。だから次の飲み会で告白する!」と、バイト仲間に宣言し楽しみにしていた、ある日。
「おかしいな〜?まだ来てない…」
バイトに遅刻とかしたことがないのに…。
彼はなかなかバイト先に現れなかった。
もちろん彼のシフトは、チェック済み。
周りのスタッフも、何とはなしにソワソワしてきていた………。
バタンッ!!
『店長ちょっとお急ぎで!!』と、社員さんたちが、バタバタと事務所に集められた。
…やな予感がスルと感じながら仕事した。
あたしたちバイトには
知らされなかった。
だからバイト帰り
パートのおばちゃんたちにだけ告げられた内容を、バイト仲間が聞いてきて、あたしに教えてくれた。
『……さん。昨日のバイト帰り…バイクで帰ってて、あと5分で家に着くっていう交差点で、車と衝突した…って』
あぁ…亡くなった…?
…だから皆、あたしの顔をバイトの間、心配そーに見てたの?
…あたしの第六感は、その頃から急に当たるようになった。
だから嫌だって言ったでしょ?こんな能力いらない。
お葬式に参列する時
あたしはメガネをかけて行った。
メガネは仕事中しか
しなかったけど
だって彼が言ったもの。
『…ああ、誰かわからなかった…。メガネしてないと別人だねー』って。
今日はメガネしてるよ。
だから、あたしって分かるよねぇ〜。
ちゃんと見えてる?
空からだって分かるよーに。
メガネかけて
上を見上げて
…あの時も、夏。
夏の入道雲がもくもく…湧いてた真っ青な空。
「…うっ。ふぇっ…」
あたしはめずらしく
人前で泣きに泣いた。
暑い中、バイト仲間に
支えられながら駅まで
歩いた。
早く早く早く!
もっと早く気持ちを
伝えておけばよかったよ。
次って…ずっとあるもんじゃないんだー。
告白して、フラれても
結果が出る方がマシ。
もう二度と…もぅ二度と
どちらにも結論がでない。
あたしの想いも知らずに
逝ってしまったね。
昇華することのない
あたしの恋心。
二度と忘れてはいけないものだったのに。
…何年も忘れてたね?
今も新聞記事もっていますよ。この切れ端が恋心でしょうかね…。