第7話初任務
剣真たちの乗る公安車両が止まった。
剣真が外に出ると、目の前には古びた施設があった。
「ここが現場だ。」
東堂の声は穏やかだ。
だが、その視線はすでに周囲を鋭く観察している。
「天顕教の関連施設。最近、こういう場所での発生が増えてる。」
瑠璃さんが淡々と補足する。
建物の周囲には、異様な静けさが広がっていた。
「……なんか、嫌な感じするな。」
思わず漏れた剣真の言葉に、瑠璃さんが小さく頷く。
「正常な反応だ。」
その瞬間――
建物の奥から、何かが軋むような音が響いた。
全員の視線が一斉に向く。
「来るよ。」
東堂が静かに告げる。
次の瞬間、壁が内側から歪む。
――現れた。
異形の怪物。
剣真の呼吸が止まる。
「剣真。」
瑠璃さんの声。
「お前は今回は見ていろ。」
「見て、覚えろ。」
その言葉と同時に、隊員たちが一斉に動き出した。
速い。
まるで、訓練された動き。
剣真はただ、その場に立ち尽くす。
(これが……第二課の戦い)
瑠璃さんが一歩前に出る。
迷いはない。
銃口を向け、引き金を引く。
乾いた銃声が、連続して響く。
――だが。
弾丸は確かに命中したはずだった。
それなのに、怪物の体は波紋のように揺れただけで、何事もなかったかのように元に戻る。この怪物の体は水のように流動性を帯びており瑠璃の銃による攻撃はまったく効いていないように見える。
剣真の目が見開かれる。
「……効いて、ない?」
瑠璃さんの表情が、わずかに変わる。
「厄介だな。」
短く呟く。
怪物の体がゆらりと揺れ、次の瞬間、腕のように伸びる。
速い。
「下がれ!」
瑠璃の声。
地面が弾ける。
剣真は車両の中からじっと観察することしかできなかった。




