第5話戦うお仕事
重たい扉が、低い音を立てて開いた。
剣真は思わず足を止める。
目の前に広がるのは、無機質な通路と、規則正しく並ぶ人影。
ここが――公安局本部。
外から見た建物とはまるで別物だった。
静かすぎる空気と、張り詰めた緊張感が、肌にまとわりつく。
「立ち止まるな。ついて来い。」
後ろからの声に、剣真は慌てて歩き出す。
瑠璃さんは振り返ることもなく、一定の速さで進んでいく。
やがて一つの部屋の前で足を止めた。
プレートには「第二課」とだけ記されている。
瑠璃さんはドアを開け、中へ入ると、そのまま剣真に視線を向けた。
「ここが、お前の所属になる場所だ。」
部屋の中には数人の人影。
どれも一癖ありそうな空気をまとっている。
剣真は無意識に息を呑んだ。
瑠璃は腕を組んだまま、部屋の中央に立つ。
「公安特務第二課の仕事について説明する。」
その声は落ち着いているが、空気を引き締めるだけの圧があった。
「ここは、能力を用いた大規模犯罪、テロ――それに加えて、異教徒や過激派宗派による儀式犯罪の取り締まりを担当する部署だ。」
剣真は思わず眉をひそめる。
聞き慣れない単語が、現実味を持って突き刺さる。
瑠璃は構わず続ける。
「対象は普通の警察では対処できない。だから私たちがいる。」
一歩、ゆっくりと歩きながら視線を巡らせる。
「第二課の人間には、あらゆる武力行使において、潜在解放の能力使用が許可されている。」
その一言で、空気がわずかに重くなる。
「つまり――お前が昨日やったことは、本来ここでやるべき仕事だ。」
剣真は無意識に拳を握りしめた。
瑠璃はその様子を見て、わずかに目を細める。
「ただし、好き勝手に使っていい力じゃない。命令のもとでのみ使用する。そこは履き違えるな。」
短く、しかし強く言い切る。
そして、軽く顎で周囲を示した。
「それと、ここのメンバーについてだ。」
部屋の中にいる隊員たちへ視線が向く。
「第二課は、潜在解放能力の高い人間を各所から引き抜いて構成されている。」
淡々とした説明。だが、その内容は異質だった。
「経歴はバラバラだ。元高校教師もいれば、軍人上がりもいる。」
一瞬の間。
「……お前みたいに、ただの学生だったやつもな。」
剣真の心臓が大きく脈打つ。
瑠璃さんはまっすぐに見据えた。
「共通しているのは一つだけだ。」
静かな声。
「“使える力を持っている”――それだけだ。」
言葉が、重く落ちる。
「過去は関係ない。ここでは結果だけが評価される。」
わずかに間を置いて、言い放つ。
「覚えておけ。」




