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ロータスの花言葉  作者: toto


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第17話 自分との戦い

静寂が、ほんの一瞬だけ場を支配した。


——次の瞬間。


「もう一体くるぞ。集中しろ、剣真」


神代の声。


その直後、背後から気配。


「っ!」


剣真は振り返る。


そこにいたのは——異形。


爬虫類の特徴をもちながらも、どこか歪んでいる。


皮膚はざらつき、光を鈍く反射する。

目は左右で微妙に焦点がずれていた。


(……なんだ、こいつ)


異形が、ゆらりと揺れる。


次の瞬間——消えた。


「!?」


視界から、消失。


気配だけが、横へ。


咄嗟に反応する。


「——リリース」


一拍。


「白蓮」


光が滲む。


ペンダントが反応しし刀が手の中に再構築される。


同時に——


異形が現れる。


横からの一撃。


「っ!」


ギリギリで受ける。


その瞬間。


異形の身体が、ぐにゃりと歪む。


皮膚が波打つ。


骨格が変わる。


そして——


剣真と、同じ姿になる。


「……っ!?」


完全に同じだった。


顔も、体格も。


そして——構えまで。


目の前に、“自分”がいる。


「……こいつの能力なのか、」


息を整える。


観察する。


皮膚の質感。

目の動き。

(そうか、この異形のベースとなった生物は多分、)


「カメレオン!」


環境に合わせて姿を変える。


それだけじゃない。


“動き”までコピーしている。


相手が踏み込む。


同じ間合い。


同じ速度。


同じ太刀筋で、振るってくる。


「っ……!」


受ける。


衝撃が重なる。


完全に同じ動き。


(でも——)


剣真は目を細める。


自分の癖は、自分が一番分かる。


(踏み込みが、少し深い、何度も神代さんに注意されたことだ、客観的に自分を見るとこんなにも粗末な動きをしてたのか、俺は、)


次の瞬間を読む。


来る。


同じように踏み込んでくる。


——その瞬間。


半歩だけ、ずらす。


刃が空を切る。


「やっぱりな」


小さく呟く。


体勢が崩れた“自分”に向かって——


踏み込む。


「はあっ!」


一撃。


今度は、確実に入る。


浅くない。


しっかりと通る。


だが、まだ動く。


異形が無理やり体勢を戻す。


(まだか……!)


追撃。


今度は自分から仕掛ける。


だが、同じように返される。


「真似してるだけだろ」


呼吸を整える。


観察する。


癖。


間合い。


リズム。


全部、分かる。でも____


「それだけじゃ、勝てない」


踏み込む。


わざと癖通りに動く。


相手も同じように動く。


——誘い。


次の瞬間。


急に軌道を変える。


わずかに外す。


コピーが、遅れる。


「そこだ」


一歩、深く入る。


距離を潰す。


「——っ!」


振り抜く。


今度は——完全に入った。


衝撃。


異形の身体が歪む。


そのまま——崩れ落ちた。


動かない。


沈黙。


剣真はその場で立ち尽くす。


荒い呼吸。


やがて、刀がペンダントへと形を戻す。


「……はぁ……」


息を吐く。


剣真の意識はさっきまで“自分だったもの”に向いていた。


同じ動き。

同じ太刀筋。


まるで鏡を見ているようだった。


「……無駄、多いな」


小さく呟く。


踏み込みが大きい。

振りがわずかに重い。

次の動きに移るまでの“間”。


全部、見えてしまった。


自分では気づけなかった部分。


だが——


あの異形は、それをそのままなぞっていた。


「……そりゃ、神代さんに当たらないわけだ」


苦笑が漏れる。


そのとき。


神代の声が、頭の中で重なる。


——距離が遠い

——力みすぎだ

——無駄が多い


訓練中、何度も言われた言葉。


その意味が、今になってはっきりと分かる。


「……そういうことか」


ただ言われるのと、実感するのは違う。


身体で理解する。


その感覚が、少しだけ掴めた気がした。


神代が隣に立つ。


「何か掴んだか」


短い問い。


剣真は少しだけ間を置いて、頷いた。


「……はい」


まだ完璧じゃない。


それでも——


「前よりは、分かった気がします」


神代はそれを聞いて、わずかに目を細めた。


「ならいい」


それだけ言う。


それ以上は何も言わない。


だが、その一言で十分だった。


剣真は静かに拳を握る。


初めての実戦。


その中で、自分の“足りない部分”がはっきりと見えた。


そして——


それを、どう直せばいいかも。


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