第13話訓練開始
連れて行かれたのは、無機質な扉の向こう。
訓練室だった。
中に入った瞬間――
剣真の視界に飛び込んできた光景に、言葉を失う。
ドンッ!!
鈍い衝撃音。
一人の隊員が、目の前の分厚い鉄板に拳を叩き込んだ。
次の瞬間。
鉄板が、内側から弾けるように――貫かれた。
「……は?」
思わず声が漏れる。
ありえない。
人間の拳でどうにかなる厚みじゃない。
だが、驚きはそれだけじゃ終わらなかった。
訓練室の天井付近から、無数の砲口が展開される。
次の瞬間――
一斉射撃。
轟音と共に、無数の砲弾が男に降り注ぐ。
だが。
煙が晴れた後、そこに立っていたのは――
無傷のままの、その男だった。
「……なんだよ、それ」
剣真は呆然と呟く。
「あれは……どうなってるんだ?」
目を凝らす。
だが、潜在解放を使えるモノを身につけている様子はない。
特殊な装備も、防具も。
「装備を何もせずに、無傷………、いったいどうやって、」
その言葉に。
瑠璃は静かに答えた。
「彼も二課所属の隊員だ。つまりあれが彼の潜在解放能力。」
剣真の視線が、瑠璃に向く。
「奴は、自分の鍛え上げてきた“肉体そのもの”を自身の戦うための道具として認識し潜在解放能力を適応させている。」
「それによって奴の肉体は鋼鉄のように硬く、鞭のようにしなやかでかつ、見た目からは想像もつかないほどの俊敏な動きを可能にしている。また格闘術のプロでもある。奴から近接戦闘と基礎的な解放能力の使い方を学べ。」
瑠璃さんは彼を信頼しているように見えた。
瑠璃が剣真に視線を向けた。
「紹介しよう。——第二課所属、神代剛」
神代は軽く手を差し出す。
「神代剛だ。よろしくな」
剣真は背筋を伸ばし、小さく頭を下げた。
「初めまして、守谷剣真です。よろしくお願いします!」
その表情には、先ほどまでの訓練を見た後の緊張と、わずかな敬意が混じっていた。
瑠璃はそんな剣真を見て、淡々と続ける。
「剛は第二課の中でも、潜在解放の扱いに関しては頭一つ抜けてる。さすが神父といったところか、神から与えられた力、潜在解放の造詣が深く、その使いこなしも一番上手いとわたしは思っている」
(このムキムキの人が神父……?)
一拍置いて、言い切る。
「だから——最初学ぶなら、こいつが一番いい」
剣真はわずかに目を見開き、そして静かに頷いた。
「……はい」
神代はそのやり取りを見て、ふっと笑う。
「随分ハードル上げてくれますね、瑠璃さん」
肩を回しながら、剣真の方へ視線を向ける。
「まあ、期待には応えますよ」
一歩近づき、軽く顎で示す。
「ついて来い。基礎からやる」
剣真はすぐに反応する。
「はい!」
その返事に、神代は満足そうに口元を歪めた。
「いい返事だ」




