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ロータスの花言葉  作者: toto


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第12話選ばれた理由

 ――翔が、死んだ。


 その事実は、剣真の中で何度反芻しても現実として定着しなかった。


 胸の奥が、空洞みたいに軽いのに、同時に押し潰されそうなほど重い。


 言葉が出ない。


 ただ、立ち尽くすことしかできなかった。


「……剣真」


 静かな声が、すぐ傍で響く。


 瑠璃だった。


 彼女はいつものように淡々としていたが、その声音にはわずかな柔らかさが混じっていた。


「落ち込むな、とは言わない。無理に立ち直れとも言わない」


 剣真は顔を上げない。


 握りしめた拳が、わずかに震えている。


「だが――止まるな」


 その一言が、胸の奥に沈んでいく。


 しばらくの沈黙の後、瑠璃はふと問いかけた。


「一つ聞く。お前はなぜ、私のスカウトを受けた?」


 剣真は、かすかに苦笑した。


「……何でって。半分脅しみたいなもんだったでしょ。断れない状況にしたのは、瑠璃さんじゃないですか」


 その返答に、瑠璃は小さく息を吐いた。


「あんな脅しは嘘だ」


 きっぱりと言い切る。


「観察力に優れ、人の機微に敏感なお前なら、気づいていたはずだ」


 剣真は、何も言い返せなかった。


 図星だったからだ。


「それでも、お前はここに来た」


 瑠璃の視線が、まっすぐに剣真を射抜く。


「なぜだと思う?」


 答えは、すぐには出てこない。


「お前は、怪物相手にその身一つで戦った」


 瑠璃の言葉が続く。


「友達を守るためにだ」


 翔の顔が、脳裏に浮かぶ。


「それは簡単なことじゃない。友達といっても他人は他人だ。自分の死がチラつけば、大抵の人間は他人より自分を優先する」


 一歩、瑠璃が近づく。


「だが、お前は違った」


 その言葉に、剣真の呼吸が止まる。


「友達を見捨てて逃げることを、これっぽっちも考えていない顔をしていた」


 静かに、しかし確信を持って言い切る。


「だから私は、お前を選んだ」


 剣真の胸の奥で、何かが熱を帯び始める。


「第二課でやっていくには、才能や実績が必要だと言ったな」


 瑠璃は一瞬だけ言葉を区切り――


「だが、それ以上に大事なものがある」


 はっきりと告げた。


「それは他人の命と自分の命を同等に扱う精神だ。他人の命も自分の命と同じぐらい大切にする心だ」


 その言葉は、鋭く、そして真っ直ぐだった。


「お前なら、もう分かっているはずだ。自分が何をすべきか」


 瑠璃は、試すように目を細める。


「私の見込み違いだったか?」


 その問いに。


 剣真の中で、何かが決定的に変わった。


 ――翔みたいに。


 これからも、消される人間が出てくる。


 何もできずに、理不尽に。


 そんなのは――


(……許せるかよ)


 歯を食いしばる。


 顔を上げる。


 その目には、もう迷いはなかった。


「……俺を」


 声が、震えながらも前に進む。


「俺を鍛えてください!」


 強く、言い切る。


「俺、強くなりたいです。もう、あんな思い……したくない」


 瑠璃はその言葉を聞いて――


 ほんのわずかに、口元を緩めた。


 そして何も言わずに背を向けた。


「ついて来い」


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