第11話残酷な現実
剣真は、目が覚めると白い天井を見上げていた。
どれくらい寝ていたのか、身体中が鈍く重い痛みに包まれている。
「……ここは……」
低く呟く。返ってくるのは、無機質な機械音だけ。
そのとき、端の方から鋭い声が響いた。
「意識は戻ったようだな、ここは公安局内の医療施設だ。お前は丸一日眠っていた。」
振り向くと、瑠璃が腕を組んで立っていた。
壁にもたれ、表情は淡々としているが、その瞳は鋭く、剣真をじっと見つめていた。
「はい……状況を教えてください」
剣真は痛む身体を押さえながら答える。
瑠璃は小さく頷き、端末を操作する。
「お前を襲ったフードの高校生についてだが——」
画面に映し出されるのは、先日の戦闘の記録。
怪物を操って剣真を追い詰めた、あの少年の姿。
「……この少年がこれまでの怪物を生み出していたのだろう。」
剣真は息をのむ。
「彼は……戦闘後に、怪物と同じように消滅した」
瑠璃は淡々と説明する。
「これまでの怪物のデータと照らし合わせると、おそらく彼は異能によって様々な生物に変異を起こさせ、怪物を作り出していた」
「そして、異能によって作られた怪物は共通して時間が経つと消滅し、元には戻らない」
「……つまり、彼自身もまた、異能によって変異した別の何かである可能性が高い、そしておそらくその何かは人の可能性が高い。戦闘中に得られた生体データで奴は95%人間であると出ている。このことからも敵は」
(動物や人間に対してまで異能を使うなんて...)
画面の隅に、小さく映る物体がある。
「現場には、変異前の人間のものと思われる物が一つだけ残っていた」
瑠璃が指で示す。
それは……翔が肌身離さず持っていた腕時計と同じものだった。
剣真の胸が、強く締め付けられる。
「……翔……?」
不安と嫌な予感が、身体の奥から押し寄せる。
すぐに端末を手に取り、翔に電話をかける。
だが、何度呼び出しても、繋がらない。
焦った剣真は、瑠璃に頼んだ。
「瑠璃さん……俺と同じ高校の二年の高槻翔が無事か、確認してもらえますか」
瑠璃は部下に連絡を取った。そして数秒後短く答える。
「……剣真、お前の通っていた高校に、高槻翔という人物は存在しない」
「……え?」
剣真は言葉を失った。
「部下が学校への連絡と、名簿の確認を行なった。間違いない。」
剣真の頭の中が真っ白になる。
翔の姿、声、笑顔——全て、なかったことにされていた。
覚えているのは、剣真ただ一人だけかもしれない
胸の奥で、絶望が重く沈む。
「……そんな……嘘だ……」
瑠璃は端末を置き、冷静に告げる。
「残念だけど、お前の友達がもし異能の力を受け変異してあのフードの高校生の姿となっているとしたら彼はもう……」
剣真は目の前でフードの彼が消滅した事を思い返す。
剣真をいままで感じた事のないほどの哀しみと憎しみが襲っていた。まだその残酷な現実を受け入れることはできない。




