第10話再顕現
異形の内部。
異形と化した車両の前で、東堂は足を止めた。
歪に膨れ上がった金属の塊。
その内部に――剣真がいる。
「……」
一瞬で状況を見極める。
破壊は可能だ。
いや、容易い。
この程度の構造物なら、自分の能力を使えば一撃で粉砕できる。
だが――
剣真の気配は、確かに内部にある。
この状態で能力を行使すれば、巻き込む。
助けるどころか、殺しかねない。瑠璃はレールガンの顕現の反動でしばらくはうごけないだろう。
東堂は静かに息を吐いた。
(さて……どうする)
一方、
押し潰されるような圧迫の中で、剣真の意識は途切れかけていた。
その時――
胸元が、光る。
ペンダント。
ひびが入る。
次の瞬間、乾いた音とともに砕け散った。
零れ落ちる、白い粉末。
それは空中で止まり、ゆっくりと広がっていく。
粒子が集まり、形を成す。
あの時と同じ感覚。
白く、淡く、揺らめく存在。
――白蓮。
だが、それは何も語らない。
ただ、そこに“在る”だけ。
次の瞬間。
すべてが止まった。
異形の蠢きが、ぴたりと止まる。
そして――
内側から、崩れた。
音もなく。
抵抗もなく。
まるで最初から存在しなかったかのように、
異形の構造物は一瞬で消滅した。
「……っ!」
外にいた東堂が目を見開く。
瑠璃もまた、わずかに息を呑む。
中心に立っていたのは、剣真。右手には刀身が黒く、鍔のない使い古された刀が握られている。
その背後に、白い残光が揺れている。
そして。
少し離れた場所。
フードの高校生が、その光景を見つめていた。
「……へえ。」
小さく、息を漏らす。
その目が細まる。
明らかな驚き。
だが次の瞬間には、口元が緩んでいた。
「面白い。」
くすり、と笑う。
剣真を見据えたまま。
「今回は、ここまでにしとくよ。」
一歩、後ずさる。
気配が、薄れる。
「またね。」
その言葉だけを残して。
フードの高校生の姿は、掻き消えるように消えた。
まるで怪物たちが消滅するのと同じように。
後に残ったのは、静寂だけだった。




