第一話白蓮顕現
平凡な高校生・守谷剣真は、下校途中に突如現れた異形の怪物に襲われる。
普段から人や物の動きを観察する癖がある彼は、怪物の弱点を見抜くが、武器がなく倒すことはできない。
絶望の中、代々受け継ぐペンダントに刻まれた刀の印が光を放ち、鋼の粉末が集まって一振りの刀――白蓮――となる。
身体が驚くほど軽くなり、意識よりも早く刀を振った守谷は、怪物の弱点を斬り裂き勝利を収める。
こうして、平凡な日常は終わりを告げ、彼の新たな運命と戦いの物語が幕を開ける。
放課後の街路は、夕暮れの影に染まりかけていた。
守谷剣真、その日もごく普通の高校生として、部活終わりの道を急いでいた。だが、静かな路地を曲がった瞬間、背後から異様な気配が迫る。
「うわっ……!」
目の前に現れたのは、見るからに異形の生き物だった。
獣のような四肢、歪んだ顔、そして不自然な動き。頭身はゆうに3メートルは超えている。通行人たちは逃げ惑うが、剣真だけは一人観察の目を光らせていた。
普通なら恐怖で逃げ出すこの場面──だが、剣真には目の前のものを見ては特徴を分析し、どう動くか考察する病的な癖があり、無意識に、目の前の怪物にも同じことをしてしまったのだ。
──動きは速いがぎこちない。前脚の関節の軸が僅かにぶれている。
──顔の動きは一定のパターンを描く。
──攻撃のタイミングは……
「弱点は…前足の関節だ!」
だが、手元には何の武器もない。倒す手段はない──その時、怪物の一撃で吹っ飛ばされ、地面に倒れ込む。
集中が切れ、正気に戻った剣真は痛みと恐怖で、「もうダメか…」と諦めかけた瞬間、視線の先に光るものがあった。
地面に転がるペンダント。剣真の一族が代々受け継いできた小さな銀のペンダント。その裏側に細かく刻まれた刀の印が目に入った。
「……刀があれば、おれなら、、」
思考が閃いた瞬間、ペンダントが白く光を放ち、人間の体温のように温かい光が手元に集中した。
弾ける音とともに、中に封じられていた鋼の粉末がこぼれ落ちる。
粉末は、まるで剣真の思考に応えるかのように、空中で形を取り始めた。
光が散る中、鋼の粒子が集まり、細く曲線を描き、やがて一振りの太刀へと変化した。その刀は鍔がなく簡素な作りだったが、蓮の紋様の施された美しい刀であった。
手に握ると自然に体に馴染む感覚。軽く、しかし確実に鋭い刃の手応え。この刀の力なのか、単にアドレナリンのせいだろうか不思議と怪物に対する恐怖心は無くなっていた。
「これは……いける」
目の前の怪物を睨むと、その刀身は剣真を支えるかのように微かに光った。剣真は構え、怪物にきりかかる。驚くほど体は軽くまるで重力が半分になったかのようだった。剣真本人が気づくよりも早く刀先は怪物の前足の関節部分を切り裂いた。その瞬間
、歪んだ体は光に包まれ、次の瞬間には跡形もなく消え去った。
静寂が戻る街路。剣真が力を抜くと、刀は淡い光を発しながら元のペンダントへと形を戻した。
──その刹那、下校途中の平凡な高校生の日常は、静かに、しかし確実に終わった。
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