暗い男
路地裏のエアコンの上に男が座っている。
知り合いである。
知り合いだから声をかけた。
「おじさん」
「んん」
「汚れるよ」
「まあいいんだよ」
よくないだろう。
「…姉さんとこん子だったか」
覚えていなかったのか?
「うん。この辺か?そうか。」
話を聞け。
「もうすぐ雪が降るよ。傘は?ねえ。」
「フーディーだから」
「フーディー?」
「フード付きだから」
「なんにもよくない!」
「ね。駅まで送っていってあげるよ。そしたら電車に乗れるよ。電車に乗れば雪も大丈夫!」
「んん…じゃあ、まあ、入るよ」
わたしはボンっと傘を開いた。黄色色。
おじさんはぽんと頭を叩くようで叩かなかった。
「学校は、あれか、中学か?」
「うん!」
「平気か?」
「?うん。」
楽しいことがたくさんあるよ!とは、なんだか言えない様子だった。
「まあなんとかなるか」
「?」
「電車に乗るよ。知り合いがいるから」
おじさんは遠くを見ていた。
おじさんは私とは反対方向の、斜め上を向いていたので、なんだかすごく高いところを見ているような様子だった。
それでなくとも背が高い。
「寒くねえの」
「うん!」
「うん」
おじさんは会話が下手だなあと思った。
おじさんの肩には雪が積もっている。小学校のころから変えていないからだ。
おじさんにねだったら、駅ビルで新しい、緑色でヒラヒラの傘を買ってもらえないだろうかと思った。




