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そのGG金具、名前はマーモント? それともオフディア?

「店長ー、グッチって本当に種類が多いですね……。このGG柄のバッグ、なんて名前で登録すればいいんでしょうか?」


買取専門店「時の蔵」のカウンターで、アルバイトの桃香が首をかしげた。

彼女の手には、艶やかなレザーのハンドバッグがある。


高額品が面倒な店長のコオタは、店の奥から顔だけ出して答える。


「あー、グッチか。あのブランドは定番の柄に何か一つ特徴が加わるだけで、全く別の名前になるからな。面倒なんだよ」

「そうなんです! だから難しいんです!」


桃香が頬を膨らませたその時、カランコロン、とドアベルが鳴った。


「おや、こんにちは。何やら楽しそうな話をしているね」

現れたのは、いつもの常連客、田崎さんだった。その手には、コンビニのコーヒーカップが握られている。


「田崎さん! ちょうどよかった、グッチのことで悩んでて!」

「ほう、グッチ。あれは特徴的な『パーツ』や『追加アイテム』で名前を覚えていくのが一番の近道だよ。クイズといこうか」


田崎さんはにこやかに言うと、カウンターの椅子に腰掛けた。

面倒くさそうな顔をしつつも、コオタも聞き耳を立てている。


「まず、持ち手が竹でできていたら?」

「それは分かります! 『バンブー』ですよね!」


「正解。じゃあ、馬の口にはめる金具、あの独特なデザインの金具がついていたら?」

「『ホースビット』!」


「その通り。では、アルファベットのDの形をした金具は?」

「えーっと……『アビー』ですか?」


「素晴らしい! じゃあこれはどうかな。蛇の頭が二つ向かい合っているような、U字型のバックル」

「あ! それ、すごくカッコいいやつ! 『ディオニュソス』! ギリシャ神話の神様の名前なんですよね!」


「博識だね、桃香ちゃん。酒と豊穣、演劇の神様の名前だ。じゃあ最後に、緑と赤のシェリーラインがリボンの形になってあしらわれているものは?」

「『プリンシー』です! あれは可愛くて好きです!」


桃香が全問正解にはしゃいでいると、コオタがぼそりと言った。

「問題はGGの金具だ。あれが一番ややこしい」


田崎さんは「さすが店長、核心を突くね」と頷いた。


「GGロゴの金具、大きく分けて3種類ある。GGマーモント、オフディア、インターロッキングG。桃香ちゃん、違いは分かるかい?」

「うぅ……それが一番の謎です」


「まず、単純にGGマークが重なっているだけの金具。これが『GGマーモント』だ」

「ふむふむ」


「次に『オフディア』。これは少しトリッキーでね。『GGマーモント』と同じ金具を使っていても、バッグ本体の生地がGGスプリームだったり、シェリーライン(ウェブライン)が使われていると、『オフディア』という名前になるんだ」


「ええっ!? 金具が同じでも、他の柄と組み合わさると名前が変わるんですか!?」


「そういうことだ。そして『インターロッキングG』。これは見た目が分かりやすい。GGマークが互い違いに、逆向きに組み合わさっているデザインだ。金具だけじゃなく、レザーにステッチで表現されているものもあるね」


桃香の頭が情報でいっぱいになったのを見て、田崎さんは「でもね」と続けた。


「このインターロッキングGを使ったバッグでも、取っ手にフリンジが付くと、今度は『ソーホー』という全く別の名前になるから注意が必要だ」


「フ、フリンジが付いただけで!?」

「そうだ。だから正確に査定するには、全てのパーツをよく見る必要がある」


コオタがうんざりした顔で言う。

「だろう? 面倒なんだよ、グッチは」


「最後に、もう一つだけ。バッグの開閉に使われる『ジャッキー』という金具だ」


田崎さんは指を折りながら説明する。

「これも年代で3種類ある。旧型は布団ばさみみたいな形。少し後のジャッキーは四角くて中央のボタンで開けるタイプ。そして今主流の『ジャッキー1961』は、金具全体が丸みを帯びているのが特徴だ」


目からウロコが落ちるような解説に、桃香は深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、田崎さん! パーツと柄の組み合わせ……これで少し、グッチと仲良くなれそうです!」


「はは、それは良かった。じゃあ、また来るよ」


田崎さんが帰っていくと、コオタは桃香が持っていたバッグを指さした。


「で、そいつは結局なんて名前だったんだ?」

「えーっと、これは金具が逆向きのGGで、フリンジが付いてるから……『ソーホー』です!」


「正解だ。名前を間違えれば査定も間違う。しっかり覚えろよ」


そう言って仕事に戻る店長の背中を見ながら、桃香は力強く頷いた。

時の蔵の日常は、今日も新しい知識で満たされていた。

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