その財布、どんな人が使ってる?折りたたみだけと思いきや…
その日のカウンターには、最近買い取ったばかりの、個性豊かなルイ・ヴィトンのコンパクト財布が並べられていた。
「よし、桃香ちゃん。頭の体操だ」
店長のコオタが、腕を組んで言った。
「ここに並んだ財布たちを、お前なりのテーマで3つのグループに分けてみろ。もちろん、理由も説明付きでな」
「えっ、私がですか? 面白そう!」
アルバイトの桃香は、目を輝かせて財布たちを見つめた。
「うーん、うーん……よし、できました! まずは第一のチーム、『キラキラ金具が主役』チームです!」
桃香はそう言って、3つの財布を並べた。
「この『ポルトフォイユ・ツイスト』は、LとVを重ねてカチッと回す金具が顔になってますよね。こっちの『ポルトフォイユ・カプシーヌ コンパクト』は、上質なレザーで覆われたLVロゴがとっても上品。そしてこの『ポルトフォイユ・ロックミニ』は、小さいのに存在感抜群のLVロゴがポイントです! まさに、金具が主役!」
「ほう。悪くない」
コオタが頷く。
「その通り、この3つは金具のデザインが命だ。だから査定の時も、金具の傷は1ミリ単位でチェックする。覚えとけ」
「はい! では、第二のチームは…『差し色がオシャレ』チーム!」
桃香は次に、2つの財布を並べた。
「この『ポルトフォイユ・エミリー 』は、なんといってもカラフルなスナップボタンが可愛い! こっちの『ポルトフォイユ・パラス コンパクト』は、モノグラムに鮮やかなグレインレザーを組み合わせているのが魅力です!」
その時、店の奥から
「その通りですな」と声がした。
いつの間にか現れた常連客の田崎さんが、にこやかに話に加わる。
「クラシックなデザインに、遊び心を加える。ルイ・ヴィトンの巧みさが光るモデルたちです。これを選ぶ方は、きっとオシャレ上級者でしょうな」
「では、最後のチームです!」
桃香は残った2つの財布を手に取った。
「最後は、『とことん小さいぞ』チーム! この『ポルトフォイユ・マイクロ』は、もう究極の小ささ! そして、この『ポルトフォイユ・ミュルティプル』は、普通のメンズ二つ折りをさらに小さくして、ポケットへの収まりを極めたモデルですよね?」
コオタが、感心したように言った。
「ああ。片やファッションとしての究極のミニマム、片や実用性としての究極のミニマム。同じ『小さい』でも、その目的が違う。そこまで分かれば上出来だ」
「やったー!」
自分の分類を褒められ、桃香は嬉しそうにガッツポーズをした。
田崎さんが微笑む。
「素晴らしい。ただ名前を覚えるだけでなく、それぞれの財布が持つ『個性』や『コンセプト』で分類できるとは。鑑定士としての大きな一歩ですな」
「まあ、チーム名は子供っぽいがな」
コオタはぶっきらぼうにそう言いながらも、その口元は少しだけ緩んでいた。




