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プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!レベル99になってシナリオをぶち壊す!  作者: 山田 バルス
ベアトリス、ゲルマンド王都学院 2学期

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第33話 ルーク=キリトから見た剣術大会への意気込み

晩秋の風、剣とぶどうと約束と ―ルーク=キリト視点―


 


 晩秋の風が、学院の銀樺並木を静かに揺らしていた。


 風が吹くたびに、赤く色づいた葉がひとひら、ふわりと舞う。足元に積もった落ち葉を踏みしめながら、俺は学院の石畳を歩いていた。


 ゲルマンド王国、王都。その中心にそびえる黄金の魔塔――その頂にある、王都学院。


 転校してきて、まだ二ヶ月足らずだ。


 だが、ここで過ごす時間は不思議と心地よく、そして、どこか懐かしさすら覚える。


 ――その理由は、おそらく彼女だ。


 ベアトリス=ローデリア。


 金糸のような髪、透き通る青い瞳、気品と誇りを纏った佇まい。けれど決して高慢ではなく、いつも誰かのために手を差し伸べる。その姿はまさに、「王都の金の薔薇」と呼ばれるにふさわしい。


 ……そして、俺がずっと憧れてきた人。


「剣術魔術大会、出るつもりなの?」


 朝の講義が終わり、食堂へ向かう途中。彼女と、ランスロットと話していたとき、気づけば口にしていた言葉だった。


「まだ考え中。あたし、こう見えても火属性魔法が得意だから、剣術組との連携が難しそうで……」


 肩をすくめて微笑む彼女は、まるで秋の陽だまりのようだった。


「ベアトリスが本気を出したら、決勝まで一瞬で行きそうだけどな」


 ランスロットの軽口に、彼女がくすっと笑う。


 ……その笑顔を、俺はきっと、何度でも見たくなるのだろう。


 そして自然と話は、出場メンバーの編成に移っていった。


「じゃあ、あたしが中衛、ルークが前衛、ランスロットが後衛って構成なら……バランスはいいかもね」


「……俺でいいなら、組もう」


 俺の返事に、彼女はぱっと顔を明るくした。


 心の奥で、ふわりと何かが灯る。


 この学院に来てから初めて、「誰かと戦う」意味を感じた気がした。


 * * *


 午後。図書室での自習を終えた後、また三人で顔を合わせた。


「……ところで、来週の休日、みんな空いてる?」


 ベアトリスが突然そんなことを口にした。


「ちょっとね、ぶどう狩りに行きたくて」


 その言葉に、少し意外に思った。


 彼女のような人が、ぶどう狩り……?


 だが続く彼女の言葉に、胸が少し締め付けられた。


「前世の記憶でね、秋になると母がよく果物を剥いてくれたんだ。だから秋になると、どうしても食べたくなるの」


 そう言って笑った顔は、どこか寂しげで、そして温かかった。


「……でも、一人で行ってもなあと思って。みんなで行けたら、楽しいじゃない?」


 その時、思った。


 ああ、この人のこういうところが、俺は――


「行こう。俺も……ぶどう、嫌いじゃない」


 少しだけ照れくさくて、だけどそれが本心だった。


 そこに現れたのは、アルフレッドとキャンベラ。


 文化祭以降、ふたりは自然と隣にいることが増えた。誰も何も言わないけれど、たぶん、そういうことなのだろう。


 休日の予定を尋ねるベアトリスに、アルフレッドは申し訳なさそうに言った。


「うわー、まじか……その日、キャンベラとデートなんだよね。前から約束してて」


「……そう。なら、仕方ないね」


 ベアトリスは笑っていた。でも、その笑顔の奥にほんの一瞬、影が差したように感じたのは、きっと俺の気のせいではない。


 キャンベラが静かに尋ねる。


「ぶどう、甘いの?」


「もちろん。現地の気候と魔法の水で育ててるんだって」


 その言葉に、キャンベラは少しだけ目を細めて微笑んだ。


「ふうん。……なら、ふたりで買って帰って、寮で食べる」


 アルフレッドが照れくさそうに頷く。キャンベラも、以前よりずっと柔らかくなった。……ベアトリスの存在が、彼女の心を溶かしたのかもしれない。


「……じゃあ、ぶどう狩りは、ルークとランスロットと、あたしの三人ってことで決定」


 ベアトリスが言う。


 その言葉が、なんとなく心を温めていった。


 秋風が、銀樺の葉をさらう。


 この季節は、終わりの始まりを告げる風だ。


 けれど、その中に確かにある、ひとときの約束。


 剣と魔法と、ぶどうと共に――


 俺たちの物語は、まだ始まったばかりだ。

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