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プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!レベル99になってシナリオをぶち壊す!  作者: 山田 バルス
第一章 ベアトリス、レベル99の少女編

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第48話 ベアトリス、フェンリルをもふもふする!


 フェンリルと名乗った子犬姿のユゥと、銀髪の少年



 ドラゴンを倒したベアトリスは、白銀のもふもふに向き直り、やさしく手を伸ばした。


「うふふ……よしよし、怖かったわねえ、いい子、いい子……」


 もふもふ。もふもふもふ。


 その毛並みは思った以上に柔らかく、ふわふわで、ほんのりといい匂いさえする。癒される。魔法の研究で固くなった肩も心も、すべてがとろけるようだった。


「そういえば、お名前……どうしましょう?」


 ベアトリスは両手で子犬を持ち上げ、じっと顔を覗き込む。


「うーん……そうね、『ユゥ』とか、どうかしら。短くて呼びやすいし、柔らかい音がとても可愛いですわ!」


 すると――。


 白銀の子犬が、ふわりと宙に浮いた。


「……え?」


 光が彼女の体から溢れ出す。淡い金と白の光の粒が周囲を包み込み、風がさざめくように、音もなく舞った。


 そしてその光が、ベアトリスの胸元のペンダントに触れた瞬間――。


 「――契約、完了」


 少女の声が頭の中に直接響いた。


「わたしの名前は……ユゥ、ね。女の子よ。あなたの名前は?」


「えっ……? い、いま、喋った? えっ、しゃべった? い、犬が……!」


 思わずユゥを地面に落としそうになって、慌てて抱き直すベアトリス。


「ちがいます、わたしはフェンリル族です。神獣の血を引く、誇り高き……もふもふです」


「もふもふ自称した!? かわいい!!」


 混乱と萌えが同時に押し寄せてきて、ベアトリスの理性はあっという間に蒸発しかけていた。


 だが、そのときだった。


 山の斜面を駆け上がる足音と共に、冷たい声が響いた。


「――そこの女、うちのフェンリルから離れろ!」


 振り返ると、そこにいたのは――


 銀髪の少年だった。


 切れ長の目、整った顔立ち。肩まで届く銀髪が風に揺れ、その姿はまるで月光を纏った剣士のようだ。


 彼もまた、ベアトリスと同じくらいの年齢に見えた。


 しかしその視線は鋭く、手には鞘に収まった剣を携え、油断のない構えでこちらを睨みつけていた。


 「……フェンリル?」


 ベアトリスはそっとユゥを抱え直す。


「この子のことかしら?」


「その通りだ。彼女は俺の相棒――なに勝手に名付けて契約してるんだ!」


「え? でも、ユゥが『わたしの名前はユゥです』って言いましたわよ?」


「それは……! 名前を呼ばれたら、フェンリルは契約が成立する。そういう“種族の特性”だ!」


 少年が叫ぶ。どうやら、フェンリル族との契約は、名を与えられることで発動してしまうらしい。


「ふむふむ、では……契約完了ですね。よし、今日からあなたはうちの家族ですわね、ユゥ!」


「ええ!? 話聞いてた!?」


「聞いてましたけど、もう契約完了したんですもの。仕方ありませんわよ? わたくし、契約には責任を持つ主義ですの。ふふ、バーベキュー用にちょうどよい仲間も増えましたし」


「BBQ!? 戦利品の肉目当てで契約したのか!?」


 少年は憤慨しながら剣に手をかけるが、ユゥがぴょんと彼の前に飛び出して止めた。


「や、やめてルーク。このひとは悪い人じゃないわ! ドラゴンから助けてくれたの!」


 「……ユゥ。おまえ……」


 ルークと呼ばれた少年の顔に、かすかに葛藤の色が浮かぶ。


 「……でもな、これは大事な契約なんだ。俺たちの領地では、フェンリルと契約するのは、選ばれた者だけ。こんな、変な女に――」


「変な女とは失礼ですわね?」


 ベアトリスは微笑を浮かべたまま、手に光を灯す。


 「わたくし、ベアトリス・ローデリア。ローデリア辺境伯家の長女にして、王立魔術学院主席、ドラゴンを一撃で仕留める魔法の使い手にして、もふもふを愛する者です」


「も、もふもふを愛する……?」


「ええ。むしろ、ユゥを粗雑に扱うそちらの態度のほうが、契約者としては相応しくないのでは?」


 ベアトリスは胸を張って堂々と宣言する。


「わたくしはユゥに名前を与え、命を救い、契約を受け入れた。ならばもう、彼女は“わたくしのもの”ですわ」


 ルークはしばらく沈黙していたが――


「……くっ。いいだろう。ならば認めさせてもらう。おまえが“本当に”彼女の主に相応しいかどうかをな!」


「ふふ、望むところですわ」


 こうして、奇妙な出会いと勘違いから始まったベアトリスとユゥ、そしてルークの関係は――まだまだ波乱に満ちた物語の始まりだった。

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