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プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!レベル99になってシナリオをぶち壊す!  作者: 山田 バルス
第一章 ベアトリス、レベル99の少女編

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第34話 ベアトリス、この素晴らしい海鮮丼に祝福を!

紫の契約 ー海鮮丼のための戦い!港町騒乱編ー



「……この丼に、すべてをかけるッ!」


 初夏の陽気が町を包みこむ中、ベアトリスは真顔でそう宣言した。背景には湯気を立てる味噌汁と、お椀いっぱいのイクラ丼の幻影。

 隣のキャンベラはすでに軽く諦めた顔をしていた。


「はいはい、海鮮丼ね……」

「わたし、今すぐ食べたいの! 口がもうウニと甘エビとマグロになってる!」

「具体的すぎるわよ……」


 そんな折、日陰で魔道書を読んでいたランスロットが眉を動かす。

「海鮮丼なら、俺の領地の港町で食える。たしか“超弩級丼”とかって……デカいやつもあったな」

「そこ行く!!」

「いや、話終わってねえから……」


 こうして、一行は食の欲望に突き動かされ、港町メルティアへと向かった。


***


「……ん? 港、やけに静かじゃないか?」


 到着した三人が見たのは、閑散とした港。いつもなら威勢のいい漁師たちの声と魚の香りが漂っているはずなのに、人影もまばらだ。

 その代わり、港の倉庫群のあたりから聞こえてきたのは――


「おい! そこのタコ! 違う、イカだコラ! 運搬はこっちって言ってるだろ!」

「隊長ぉ! 俺たち、海賊っすよね!? なんか、物流の人みたいになってません!?」

「アホ! 倉庫を抑えるってことは物流を制するってことだ! 商業を制す者が海を制すんだよ!!」


 どこかズレた威勢のいい声。どうやら、海賊のようだ。


 だが、ベアトリスが真剣な顔で言った。

「……あいつらが、わたしの海鮮丼を止めてる張本人ね」

「動機が毎回ちっちゃい……」


 そんな時、後方から軽快な足音が響く。

「やれやれ、相変わらず騒がしいな。これは“介入”すべきかな?」


 登場したのは、金の髪を風になびかせた青年――アルフレッド。腰には鍛えられた長剣を下げ、堂々たる剣士の風格を漂わせていた。


「港町と聞いて、良い紅茶と貝のグラタンを期待して来たんだが……海賊、ね? 興が削がれる」


「いいところに来た!」ベアトリスが目を輝かせる。「海鮮丼のために一緒に戦おう!」

「……動機がまったく理解できないが、まあいいさ」


***


 海賊側は、“蒼き髭”の異名を持つ隊長・ドレイクと、その部下たち――


・副官で経理担当のフリッツ(冷静すぎて逆に浮いてる)

・筋肉しかない豪腕のミカエラ(見た目は女騎士なのに口が悪い)

・元貴族で“魚介類限定シェフ”のピエール(美食家で戦わない)


 という、バラバラなメンバーだった。


「隊長ォ、ベアトリスって娘が突っ込んできてますぅ!」

「なんだと!? あの“伝説級の変人”が!? やめろ、俺の港町経営計画が……!」


 ベアトリスが光の魔法を放つ。

「そこをどいて! わたしの海鮮丼が冷めちゃう!!」


 フリッツがそっと補足する。

「冷めるも何も、まだ炊飯すらされていませんが……」


 ミカエラが金棒を振るって突っ込むが、アルフレッドが鋭く抜刀し、それを受け止めた。

「おおっと。その程度の筋力では、俺の剣は折れないぞ?」


 一方、ランスロットは冷静に詠唱を紡ぎ、空に魔法陣を展開する。

「《雷精よ、空を裂け》――《雷轟閃》」


 青白い雷光が倉庫の上空に走り、海賊たちを怯ませた。

「マジかよ! 魔法使いのレベルじゃねぇ!」


 キャンベラは呪符を展開し、ピエールを封じ込める。

「あなた、まったく戦う気がないでしょ」

「うむ、だって包丁持ってきてないし。あと魚の目を見つめて今日は休業にしたい気分だった」


「もう全員ふざけてる……!」とキャンベラが嘆く頃――


 アルフレッドは一閃でミカエラを戦線離脱に追い込み、ランスロットの雷撃がドレイクを打ち倒した。


「おのれ、海鮮丼の力が、ここまでとは……」


***


 戦いの末、海賊団は全員撤退。港町メルティアには再び平穏が戻った。

 そして――


「できましたぞ! 特製・超弩級海鮮丼“英雄盛り”!」


 漁師たちの粋な計らいで、三段重ねの丼が現れた。イクラ、ウニ、マグロ、ホタテ、甘エビ、タイ、サーモン……とにかく何でも乗っている。


 ベアトリスは感動の涙をこぼす。

「これが……わたしの、戦いの果てにたどり着いた“ゆめ”……」


 アルフレッドは笑いながら箸をとり、

 ランスロットは湯気の向こうで魔道書を閉じた。

 キャンベラは呆れた顔をしながらも、最後には小さく笑った。


 こうして、海鮮丼のための戦いは幕を閉じたのだった。

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