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第17話 ベアトリス、運命のダンジョンに行く!

ベアトリス=ローデリアと運命のダンジョンアタック



その夜、王都の喧騒はベアトリス=ローデリアの耳に届いていなかった。


月明かりだけが照らす寮の部屋。机の上には、何度も確認された地図と、古びた万年筆型の剣。そして、銀色に輝く〈幸運のブレスレット〉と、魔力の揺らぎを感じさせる一冊の古書——〈魔力律動の書〉が並んでいた。


「行こう。これで、全部変わる……」


ベアトリスは静かに呟き、身代わりのペンダントを首にかけ、荷物をまとめた。向かう先は、学園地下にある古代遺跡の一部、通称「ダンジョン」と呼ばれる実践訓練場。その第三階層に、彼女の狙う“秘密の通路”があった。


このダンジョンは、学園の訓練施設であると同時に、かつての魔法帝国の遺産が眠る場所として、限られた者しか立ち入れない結界の中にある。ベアトリスは図書館に残されていた古文書と、自身の前世のゲーム知識を組み合わせて、その中に隠された“裏ルート”の存在を突き止めていた。


通路の左右には、まるで雰囲気作りのように等間隔で深い穴が空いている。そのうちの左側三番目の穴が、目的の入口だ。


「大丈夫……これはイベント。ゲームの通りに行けば、死なない……はず」


恐怖に震える身体を必死に抑えながら、ベアトリスはペンダントをぎゅっと握りしめ、覚悟を決めた。


そして——


「今っ!」


跳ぶようにして、ベアトリスは闇の底へと身を投じた。


耳元で風が唸りを上げる。視界は闇一色、重力が身体を引きずり落とし、心臓が握り潰されそうな感覚に陥る。目を開けていられず、声も出せないまま、ベアトリスはそのまま意識を手放した。


* * *


「……ん……?」


冷たい岩の床の上で、ベアトリスはゆっくりと目を覚ました。


生きている——それが最初の感想だった。


首元のペンダントは、真っ二つに砕けていた。自動発動型の防御魔具が作動した証拠だ。緊急時には、転移か肉体保護のどちらかが発動する設計。今回は落下の衝撃から身を守ったのだろう。


「成功……したのね」


周囲は岩肌が続く地下空間。だが、微かに魔力の粒子が漂い、空気そのものが違っていた。ここは間違いなく、ゲームでもプレイヤーたちが“最終調整用”に通った、伝説の裏エリア——レアメタルスライムの洞窟だ。


この洞窟の最大の魅力は、異常なまでの経験値効率にある。


現れるモンスターは、すべてが希少金属の名を冠するレアメタルスライム。倒すのは難しいが、成功すればとてつもない経験値を得られる。通常のレベル上げでは数ヶ月かかる経験値を、ここでは一体倒せば得られるのだ。


ベアトリスは万年筆型の剣を握りしめた。これは“知識の刃”という古代アイテムで、命中率と会心率が飛躍的に高く、さらにブレスレットの効果で会心の発生確率が二倍になっている。


最初に現れたのは、リチウムレアメタルスライムだった。


「出た……! 本当に、いた……!」


光を反射して銀白色に輝く球体のモンスター。攻撃してもほとんどの武器ではダメージが通らないが、会心の一撃なら話は別。


「いっけえええええええ!」


振るった万年筆の剣が、青白い軌跡を描き、スライムの中心を突き抜ける。効果音のような鈍い破裂音が響き、リチウムレアメタルスライムは跡形もなく霧散した。


【リチウムレアメタルスライムを討伐しました! 経験値+5,000,000】


「おいしすぎるっ……!」


さらに進んでいくと、ベリリウムレアメタルスライムが現れた。こちらはさらに経験値が高いが、逃げ足が早く、出現率も低い。


「ここで逃がしたら、一週間は出会えない……!」


全神経を集中させ、先手を取って攻撃。会心が出た——二連撃!


【ベリリウムレアメタルスライムを討伐しました! 経験値+10,000,000】


「うっひょおおおおお!!」


貴族令嬢らしからぬ歓声が、洞窟にこだました。


その後も、彼女は順調にモンスターを狩り、経験値を蓄積していく。インベントリには、高級ポーションと魔力回復薬を十分に備え、休憩をはさみつつ洞窟を探索し続けた。


数時間後、十分な成果を得たベアトリスは〈魔力律動の書〉を取り出す。


この書には、訪れた場所を記憶させ、詠唱によってその地点に転移する魔術が込められている。これで、今後は自室とこの洞窟を行き来できるようになる。


「これでもう、準備は整ったわ……!」


彼女は一度自室へ帰還し、地図の片隅に小さく「通称:チート空間」と書き足した。


こうして、ベアトリス=ローデリアは、レベルMAXへの道を駆け上がっていく。


2年後——ベアトリスの周辺を揺るがす?運命のとき、彼女はすでに、誰もが驚愕する力を秘めた“最強の令嬢”となっていた。


だが、これはまだ物語の“プロローグ”に過ぎない。


真に運命を変えるのは、これからなのだから——。

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