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【ネトコン13受賞!2/6書籍発売】私は悪役令嬢らしいので、ラスボスを愛でる係になることにしました  作者: 新 星緒


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11・幕 筆頭魔術師の動揺

(シルヴァンのお話です)


 ベルジュが乗り込んだ馬車が走り出す。

 これで、無事に園遊会終了だ。ほとんど彼女と一緒にいて、主に魔術省の知人とだけ会話した。

 特筆すべきことはなにもない。穏やかに過ごせたと言っていいはずだ。


「なにも起こらなくてよかった」

 斜め後ろから、アロイスの能天気な声がした。

「そうですね」と、答えながら振り返る。


 笑顔のアロイスと目が合う。

 助手は「私はこれで失礼をします」と一礼して去って行った。


「まあ、肝心の方が不参加だったからな」

 意味ありげに笑うアロイス。

 そう。先日のオラスの振る舞いを見て、アロイスは園遊会中はベルジュに付き添うことを決めた。

 人の好さそうな顔をして。


「少し時間はありますか?」

 俺は問いかけてから、アロイスを連れて執務室に転移した。園遊会が終わったばかりの庭園は人が多すぎる。


「なんだ、わざわざこんなところまで来て」と、アロイス。

「どうして、ベルジュ公爵令嬢と私をふたりにしたがるのですか」


 観劇のチケットに始まり、なにかと俺たちふたりで行動させようとする。今日も、『挨拶に行く』と言ったアロイスが戻ってきたのは小一時間ほども後だった。


「男女の噂が立つことが狙いですか? 私を失脚させたいというのなら受けて立ちますが、彼女まで巻き込むのは――」

「ちょちょちょ、待った! そんなんじゃない!」アロイスが前のめりになって否定する。「参ったな、そんな風に勘違いしていたのか。確かにそこは問題になるところではあるが」


 勘違いだと? 俺の失脚が狙いなんじゃないのか?

 いや、口ではなんとでも言える。


「口実が必要だろうと思ったんだ」と、アロイス。

「なんのですか?」

「君がロクサーヌと一緒にいる口実だよ」

 ……は?


「余計な世話だとは思うが、あまりに辛そうだから」

「アロイス、なんの話ですか」

「悪い」とアロイスが申し訳なさそうに肩をすくめる。「他の人間には平気だと思う。でも、俺には分かりやすかった。君、ロクサーヌを好きだろ?」

「……なにをバカな」


 どうしたらそんな勘違いをするんだ。

 ベルジュは、ただの駒だ。

 有能なところは買っているが、駒は駒にすぎない。


「おかしな勘違いもほどほどにしてくれ!」

「――わかった。そういうことにしておこう」

「『しておく』ではなくて! 違うと言っている!」


 ガッと腕をつかまれた。

「君が取り乱すことが尋常じゃないだろ? 気づけ!」


 取り乱す?

 俺が?


 ベルジュの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 苛立ちしか感じない。

 これのどこが好きなんだ。


「彼女を好きでいいと思うよ。僕が知っていた殿下は、虚像のようだ。ロクサーヌは結婚すべきじゃない」

 アロイスの腕が離れる。

 俺は邪魔な髪をかきあげると、首を横に振った。


「雑用係としては重宝している」 

 書類整理でも調合でも、仕事は丁寧で早い。各部署との折衝も任せられる。なにより俺の魔力をろ過できるのが、いい。今後も必要になることがあるかもしれない。


「でも、それだけだ」

「わかったよ」アロイスがわざとらしくため息をつく。「エレーヌ()のことでずっと誤解していたし、罪滅ぼしに力になれればと考えていたんだが。僕の勘違いだというのなら、やめる」

「そうしてくれ。迷惑だ」


 うなずくアロイス。

「じゃあ、帰るよ」

 続く呪文。

 執務室にひとり、残される。


 俺はベルジュを好きなんかじゃない。

 使える駒としては、気に入っているがそれだけだ。

 特別な相手なんて、いらないのだから。


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― 新着の感想 ―
仮面被り忘れてますよっと。 ……情緒はおかあさまを(見)殺された5歳のままなんですね。
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