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プロローグ《後編》ラスボス様を口説き落とす!

 黒魔術は我が国や周辺諸国では、使用も習得も禁じられている。あまりに倫理にもとる術が多くあるためらしい。

 それをシルヴァン様は自在に使うことができる。


 ラスボスは笑顔でなにか言おうとした。けれど、やめたようだった。

 頭のいいひとだもの。私が思い付きやはったりで発言したわけではないと、気づいているはずだわ。


「殺さないでくださいね」ラスボスが行動に移す前に、釘を刺す。「私は有用ですよ」

「どのあたりがかな?」

 さすがラスボス。先ほどの動揺を微塵も見せない笑顔だわ。ただそれは、以前のものとは違う。どこか闇をまとって不穏な雰囲気がある。好きすぎて、胸が高鳴ってしまうわ。


 だけど、冷静に。今は交渉をするときだもの。


「このままいくと、あなたの計画は良いところで邪魔が入りますの。その先にあるのは無念の死ですわよ。でも私は、それを知っている」

 にっこり。

「目的は?」

「ですから、おそばで見守りたいだけですわ。私、あなたが好きなんです」


 シルヴァン様がわずかに目を細めた。


「まさか、この前助けたことで」

「違います。あなたの本質を知ったからですわ」


 ますます疑わし気な顔をするシルヴァン様。

 そうよね。慈愛に満ちた天使より、腹黒な危険思想男のほうがいいなんて人間に出会うのは初めてでしょうから。


「一筋縄ではいかない人が好みなんですの。それと、ご心配なさらないで。迫ったりはしません。婚約者がおりますもの。全力で落としにはかかりますけど、基本はあなたが腹黒い本性を隠して善良ぶっている姿を、堪能したいだけです。それだけでも幸せですわ」

 そう、よだれが垂れそうなほどにね! じゅるり。


「気持悪い……」

 いつも笑顔のシルヴァン様が、はっきりと顔をしかめた。

 なんて尊い!

 私にそんな顔を見せてくれるなんて。ますますにやけてしまうわ。


「う……」と、ドン引きの表情のシルヴァン様。「不気味……」と、心持ち後ろにのけぞる。

「でもお役に立ちますわよ?」

「……どうしてそれ(・・)を知っている」

 急に話が変わったわ。黒魔術のことね。この疑問への返答は、ちゃんと考えてあるわ。


「見たからですわ」

「予知夢か?」

「そんなところでしょうね。私もよくわかりません」


 話をにごすと、猫かぶりをやめたらしいラスボスが、ギロリと私をにらんだ。


「私がなぜそう望むようになったかも、見ているのか」

 もちろん、知っているわ。番外編で読んだもの。だけれど、

「いいえ」と答えた。

 シルヴァン様が息を吐く。そしてぞんざいに前髪をかきあげると、

「口裏を合わせるぞ」

 と、だるそうに言った。


 やったわ。目的達成!!


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