表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ネトコン13受賞!2/6書籍発売】私は悪役令嬢らしいので、ラスボスを愛でる係になることにしました  作者: 新 星緒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/57

8・1 夜会の前日

 お使いを終えてシルヴァン様の執務室に戻ると、ラスボスは姿見の前に立っていた。鏡に対して斜めになっている。

「どうかされましたか?」


 シルヴァン様はこの世のものとは思えないほど、美しい。

 だけど彼はナルシストではないので、用もないのに自分の姿に見惚れたりはしないのよね。


「別に」と、ラスボスはぶっきらぼうに答えて、椅子にすわる。「……インクが飛んだかと思っただけだ」

「私が確認しましょうか?」

「必要ない。それより茶」

「ただいまお淹いれしますわ」


 キャビネットに向かい、茶器を用意する。

「シルヴァン様は歓迎会にはどんな服装で参加しますの?」

「答えるはずがないだろうが」

「残念。こっそりおそろいコーデにしようと思ったのに」


 明日の夜、王宮では大きな催しがある。新任の隣国大使を歓迎するもので、都に住む主だった貴族・名士が招待されている。

 正式な夜会は、私がオラスに軟禁されたときのもの以来。誰もが明日を楽しみにしているし、気合も入っている。


 だけど私は――

「どうせ壁の花になるだけですもの。服装ぐらいは遊びたかったのですけどね」


 オラスが私をエスコートすることはないはず。

 兄夫婦はそれぞれの交友関係で忙しい。気遣ってくれるけど、頼ってばかりでは申し訳ない。

 唯一の友達ルシールは不参加。


 ほかに私に声をかけてくる人はいない。

 私はいまでも、『氷の令嬢』のままだから。どうしても、顔の筋肉がうまく動かないのよね。シルヴァン様と家族の前では大丈夫なのだけど。


「前回の夜会は、シルヴァン様と踊ることができて僥倖でしたわ。あのときはまだ、本当のお顔を知らなかったことが悔やまれます」

「予知夢を見たのは、そのあとか」と、シルヴァン様。「明日は? 事件は起きないのか?」

「恐らくは」


「近頃、なにも予知をしていないな」

「近々、オラス殿下とピア・パッティは、視察を名目に街中でお忍びデートをしますわ。ちょっとしたハプニングに見舞われますけど無事に解決しますし、私は興味がありませんの」

「なるほど」


 正確に言えば、ヒロイン・ピアにとってはデートではない。友人に、貧しい地区の実態を見せるという使命感に燃えている。だけどオラスにとっては、デートのはず。だって小説の中では、いい雰囲気になっていたもの。


「明日は美味しい料理をいただきながら、上司の素敵な『慈愛の天使』ぶりを堪能しますわ。――はいりましたわ」

 トレイにカップを乗せて、上司のもとに運ぶ。

 かぐわしい林檎の香りがただよってくる。


「どうぞ。アップルティーです」

 カップを手にしたシルヴァン様の表情がやわらぐ。

 いつものことなのよね。よほどアップルティーが好きみたい。

 シルヴァン様はきっと顔の変化に気づいていない。

 私だけが知っている、秘密なの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ