表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度俺は人生を謳歌する。  作者: 空豆
第一章 故郷の村で
4/4

第四話 邂逅と決闘

 クロノスは7歳となって家の外に出ることを許された。

 そうしてできた友達が三人。

 目つきは悪いが心優しいチャリオ。

 ぽっちゃりとした体型なグラス。

 どこかずる賢いオスカ。

 この3人と外で遊ぶことが多くなったクロノスは子供の頃に友人と遊ぶという貴重な体験を噛み締めながら知見を広げることができた。

 まず村の名前はクロフ村といい、国の境に存在している。

 そのため、国と国との検問所としての役割を果たしていた。

 ロイスがたびたび騎士のような格好で出掛けていくのもそのようなことが関係しているのだろう。


 そうして今、クロノスはかくれんぼをしている。

 子供の遊びトップ3に入るであろうかくれんぼだが、中身は30代のおっさんであるクロノスは未だに見つからず2時間が経過している。


「まぁ、このままあいつらに帰られたら困るんだけどな」


 という子供の頃のトラウマを思い出しながらあたりを見回す。

 なんとも綺麗な景色で本当にいつ見ても惚れ惚れしてしまう。

 そんな綺麗な景色を破壊するかのように、空気を切る音が鳴っていることに気づいた。

 音の方向を見てみると、浅葱色の髪を長く伸ばした少女が木剣を振るっていた。

 その太刀筋は素人目から見ても綺麗で少女がまるで名画のように美しく輝いているように見えた。

 少女に目を奪われていると視線に気づいたのか少女がクロノスの方を向く。

 そうしてゆっくりと近づいてきた。ぐいっとクロノスに顔を近づける。

 その少女の行動に対しクロノスは驚き戸惑った。


「なにかしら? ずっとこっちばっかりみて、なにかよう?」


「え? 何って、ただ綺麗だなって……」


「きれい……?」


「あぁいや、ほら太刀筋がさ」


 少女は少しの間後ろを向いたらくるりとこちらを向き隠そうとしているが隠しきれていない嬉しさを顔に浮かべる。


「そ、そう? ありがとう……とだけいっておくわ」


 なんともまぁつかみどころのないような性格だとクロノスは思う。

 しかし、まだ幼いというのに木剣を振っているというのは感心する。

 が、まだ年端もいかない女の子なのだから自由奔放に遊べば良いとクロノスは思った。


「そうだ、君も一緒にかくれんぼしようよ」


 と、子供らしく目の前の少女を誘う。

 クロノスの誘いに対し少女は先程までの嬉しそうな顔とは違う、真顔で何処か嫌な顔をした。


「そう、かくれんぼ……ね、そうだ、あなたって剣術をしたことはある?」


 唐突な質問に対してクロノスはキョトンとしてしまうがその問いを飲み込み答えを出す。


「うん、やったことあるよ。齧ってるくらいだけど」


 「そう」と言うと少女は少しの間この場を立ち去り再び現れたと思ったら木剣を二本握っていた。

 そのうちの一本をクロノスの方へと投げる。


「へ? 木剣?」


 少し戸惑いながらもクロノスは木剣を握る。

 クロノスが普段素振りで使うものよりも少し長く重みがあった。


「さぁ、かまえて」


 言われるがまま、胸の前に剣を立てて少女の方を向く。

 彼女は上段に構えていて、何処を見ても隙が感じられなかった。


「ええと、けっとうっていうんだっけ? まぁ、あなたがかてたら、かくれんぼとやらにまざってあげてもいいわ」


「二言はないな?」


 少女はコクリと頷く。

 クロノスと少女の間に緊張が走る。

 対人戦が初めてであるクロノスは緊張から心臓が強く脈打っていた。

 風が強くなり、まるで環境そのものが少女の味方であるかのような錯覚があった。

 クロノスと少女の丁度真ん中に木の葉が落ちる。

 それが決闘開始の合図となった。


 先に動いたのはクロノスであり、上段に構える少女を一瞥した後足に狙いを定め剣を振るう。

 すると少女はいとも容易くクロノスの剣を受け流し左肩を突く。

 左肩の痛みに顔を顰める。

 その痛みをグッと堪え、少女に無数の剣撃を繰り出す。

 しかし、少女は剣撃の一つ一つその全てを見事に受け流してみせた。

 息の上がっているクロノスに瞬きの間に剣撃を2つ入れる。

 その一回一回が凄まじい重さであり、それをやってのける華奢に見える少女に驚きを隠せない。


「ぐ、はぁ、はぁ」


 肩で息をするクロノスは眼前の少女を睨みつける。 少女に疲れは見られずこちらを憐れな目で見てきていた。

 その事に怒りを覚え、小さく舌打ちをする。


「さぁ、もうこないの?」


「ぐっ、まだ、まだぁ!」


 余裕中の少女に一矢報いる。顔色を変えるぐらいはしてやる。

 そう思ったクロノスは強く地面を蹴り、剣を高く振り上げる。

 毎日繰り返している動作をなぞるように全身の力を使って少女の脳天を切り裂くほど振り下ろす。

 その一撃は視界が揺れて目の前が見えなくなるほどのものであった。

 が、一歩届かなかった。

 少女はその攻撃をいとも容易く受け止め、打ち返す。

 そしてできた隙を逃さず、握った木剣でクロノスの足を払い転倒させ、木剣を弾き飛ばす。

 そうして馬乗りになりクロノスの首元に木剣を突き立てる。

 それをやってのける少女の顔が歳にあわないほど冷酷で平然としていた。

 クロノスは少女に恐れを抱き息が詰まる。


「さぁ、どう? つづけるきはある?」


 息が詰まり声が出せず喉で言葉が突っかかって口をパクパクさせるだけだったが、なんとか絞り出す。


「ま、参り……ました」


 降参の言葉を聞くと少女は立ち上がり少し離れて膝の草を払う。

 急な転倒で受け身を取れなかった事により強打した背中がまだ痛むが、なんとか起き上がる。

 少女の顔を見てクロノスは驚愕した。

 かった事に喜ぶではなく、失敗を見つけて悔しがるでもなく、ただ淡々とクロノスを見つめていた。


「それじゃあそういうことだから」


 とくるりと背を向け、何処かへ行った。


 その後、クロノスはかくれんぼを再開したが日が暮れても彼らを見ることはなかった。

 後から知った話だが、少女と決闘をしている間に腹を空かせて帰ったらしい。


 トボトボと暗くなった道を通り家へ帰るとメアリが出迎えてくれた。


「クロノス、今何時だと思ってるの? もうこんなに暗くなってるじゃない!」


 メアリの顔は見れば怒っていることがわかった。

 しかし、表情が暗いクロノスに気づくと怒りは心配へと変わった。


「クロノスどうしたの? なんか元気ないみたいだけど……それに、身体にアザが……」


 心配をしてくるメアリに今日の少女との決闘のことを話すとメアリの表情は穏やかになる。


「そう、それなら良かったわなんだか似てるわねロイスに」


「え?」


「なんだか負けず嫌いなところがね、似てると思って。」


「それって……」


 負けず嫌いなロイスを見たことがなかったクロノスはどういうことなのかを訊こうとした。

 すると、メアリは手を叩き甲高い音を鳴らした。


「はい、一旦話しはお終い。早く上がって、ご飯できてるから。早くしないとロイスが痺れを切らして全部食べちゃうわよ」


 ロイスのご飯を食べる速度は尋常ではない為、とりあえず家に上がった。

 食卓につくと既にロイスが座っていて「遅い」と顰めっ面でメアリとクロノスに言った。


「ごめんなさいね、ロイス。ちょっとクロノスと話をしてて」


 するとロイスは耳に手を当て、メアリに顔を近づける。

 メアリは少し呆れた顔をしたがすぐに笑顔になった。


「実は……」


 と、メアリがロイスの耳元で何かを話していた。

 ロイスはうんうんと頷きながら聞いていると、急に笑顔になりクロノスの方を向く。


「そうか、女の子に負けたんだってな」


 クロノスはむすっとした表情を浮かべる。


「そうですけど……馬鹿にしてます?」


 するとロイスは手を左右に振る。


「違う違う。えぇっとそうだな。お前にとある人を紹介してやるよ。そうすればその子に勝てるはずだ」


「本当ですか!?」


「あぁ、本当だ」


 クロノスは心の中でガッツポーズをとり、あの少女に勝てる手立てができたこと、剣術を教えてもらえることを喜んだ。

 そんなクロノスの様子を見ていたロイスは拳を身体の前に突き出す。

 それに応じるように拳に拳を重ねた。

読んでいただきありがとうございました。アドバイスや誤字脱字などございましたら教えてくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ