第二話 異世界というもの
彼は顎に手を当てながら廊下を歩いていた。
眉間には皺がよっていて、目つきも気持ち鋭くなっている。
「大雑把に目標は決めたものの、どうするか……」
そう思考していると不意にクロノスの目の前で扉が開く。
すると中からボサボサの長い栗色の髪を掻いている女性が出てきた。
彼女は口の前に手をかざし大きな欠伸をしたのち、クロノスのいる方に目をやった。
「あら、クロノスもう起きてたの早いわね」
「昨晩は眠るのが早かったですから」
「そう? 早く寝たら長く寝ちゃわない? まぁ、少し待ってなさい今から朝ご飯作っちゃうから」
もう一つ欠伸をして目をこすりながら彼女は調理場へ向かう。
彼女の名はメアリ・アルベールといいクロノスの母であった。
とりあえずクロノスは特にやることがあったわけでもなかった故自室に戻りゆったりと過ごしたのち食事を取るために向かった。
すると卓の上には既に料理が並べられており、クロノスが座っている向かいにはメアリと一人の男が腰掛ける。
彼の顔には古傷が目立ち、短髪の黒髪だ。身体には衣服から浮き出るほど筋肉がついていた。
彼の名はロイス・アルベールといってクロノスの父親である。
ロイスはクロノスが来たとわかった途端にメアリの料理に貪るようにがっついた。
メアリはその姿を見てため息をこぼす。
「ちょっとロイス、自分の息子の前でそんなに行儀悪く食べて……恥ずかしくはないの?」
ロイスは顔を上げ、袖で乱暴に口を拭った。
「なんだ? メアリ、そんなこと言ったってどうしろってんだよ。お前の手料理を食ったら誰でもこうなるんだよ」
その答えに対して額に手を当てクロノスの方を一瞥した。
「誰でもって、ねぇ、クロノスはこんなに綺麗に食べてるのよ」
「おいクロノス早く食わないと父ちゃんが食べちまうぞ」
そう言ったロイスはクロノスの食事に手を伸ばす。
その手をメアリが叩いて静止する。
ロイスをメアリが注意してロイスがそれに反発する俗にいう夫婦漫才のようなものを繰り広げている。
当の本人はどこか楽しそうだからとクロノスは安心していた。
朝食をとった後、ロイスは自室に行きものの数分で着替えて玄関に向かった。
彼の服は白を基調としたものでマントを羽織っている。騎士のような格好だった。
そうして仕事に向かうロイスをクロノスとメアリで見送るというのがいつもの日常だった。
現在、クロノスは庭で木剣を握って素振りをしている。
この世界がクロノスの知っている異世界であるのならば、魔物の類はいると推測していた。
そこで、クロノスは自衛のために木剣で素振りをしている
だが、そのほとんどはロイスの見様見真似であり本当に効果があるのかはクロノスには判断できない。
が、やらないよりもやる方がマシだというだけである。
ふと、窓から自宅の中を見るとメアリが魔術を使って炊事をしていた。
そこでふと思う。本来であれば剣術には差があることが必須である。
であればロイスに教えてもらうことが最善といえよう。
だが多忙なロイスを頼ることはできない。ならば魔術ならばどうだろうか。
魔術なら普段から家にいるメアリに教えてもらうことができる。
そう思考する頃には既に走り出していた。
「母さん! 僕に魔術を教えてください!」
いきなりのことで目を白黒させていたが、すぐさまにんまりと笑う。
「お母さんに任せなさい!!」
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