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第二話 異世界というもの

 死んで目を覚ましたら自分が転生していた、なんて夢物語だと思っていたがこうして現実になるとそれは違うと認識することができる。

 人生というものはそういうもので、自分が否定していても実際に起きてみなければ何もわからないのである。

 と、まぁそんなこんなで新たな生を受けた俺は新たな土地での調査も欠かさなかった。

 よって得た成果がある。

 それはこの世界が元々いた日本とは異なる異世界ということだ。

 そもそも、転生というのだからその可能性は疑っていた。だが、異世界の存在など信じられるわけもなく頭の片隅に置いておくぐらいのものだった。

 しかし、グローバルな社会になってきたにもかかわらず聞いたことのない言語、まだそれだけなら良かったのだが母が手から火を放ち炊事を始めたのだ。もう疑う余地などないと思った。

 つまり紛れもなくここは異世界である。だが、


「異世界に転生したら超常の力に目覚めるのは定石だってのに」


 未だ、力の目覚めの片鱗さえも見えないのだ。

 その現実に肩を落とし、小さな手で頭を抱えた。

 すると、廊下から足音が聞こえてくる。俺は急いで側にあるベットに入った。

 部屋の扉が開き、出てきたのは筋肉質な青髪の男性だった。所々古傷のような物が見られる。


「おい、クロノス! 起きろってんだ!!」


「ふぁい父さん、」


 転生したてでは理解することができなかった言葉も普段の生活や読書の甲斐あって理解することができた。

 そして、この世界での俺の名はクロノス・アルベールだ。

 そして、彼はクロノスの父、ロイス・アルベールである。


 ロイスはやれやれと手を横に広げながら首を横に振る。


「まったく、クロノスは男だろ? いつまで経っても父さんに起こされてるようじゃ、可愛い女の子は捕まえらんないぞ」


 またロイスはそんなことを言っている。クロノスの未来を案じて言っているのかわからないが、ただ女好きなだけだろうとクロノスは思っている


「また父さんはそんなことを言って、はぁ僕はそんな気はありませんよ」


 ため息混じりにそう言うとロイスが眉をひそめ、不機嫌そうにこちらを向いた。


「あのなあ、クロノス男として女との付き合いってのは――」


「はいはい分かってますよ父さんが女性が好きだってことぐらい」


 とロイスの話を遮るように言った。

 そのことに対し、ロイスは固まっていたので、その脇を通るように部屋を出る。

 と、ロイスが何か言っていたような気がするが、こういう時は無視に限る。


 そのまま階段を降り、いつものようにリビングへ向かうと金髪の女性が椅子に腰を下ろしていた。

 彼女はどこか柔らかい雰囲気がある。

 こちらに気づくと手を振ってきた。


「おはよ、クロノス1人で来たのを見るにまたお父さんが変なこと言ったんだろうね」


 と、目元を緩めて言った。

 彼女の名はメアリ・アルベールという。一目見ただけでわかる金髪美女、クロノスの母だ。

 クロノスはメアリの方を見やり、困った顔をする。


「わかりましたか……何故か父さんは早く女を捕まえろみたいなことを言ってくるんですよね、毎朝あれでは嫌になりますよ」


 クロノスがそういうとメアリは微笑んだが、目は笑っていない。どこか殺気のようなものを感じる。


「そうよね、まあお父さんは女性が好きですものね」


 そう言ったメアリな雰囲気にクロノスは背筋が凍りつくような感覚を味わい、わかった。

 これ、怒らせちゃダメなやつだ。


 メアリの本性のようなものを垣間見たところで階段を走り降りる大きな音が聞こえる。


「おおいクロノス! まだ父さんとの話は終わってないぞ!」


 ロイスが満面の笑みだったのでクロノスはため息をつく。

 まだあれが続くのか。その後、背後からロイスに向かって歩く影があった。

 こちらからメアリの表情を見ることができなかったが、ただならぬ雰囲気を感じた。

 そんなメアリの表情を見たロイスは目を見開き先程の笑みとは程遠い絶望したような表情を浮かべる。


「ロイス? もうここであなたとクロノスとのお話は終わったの、だからすぐ席についてね」


 ロイスの顔から血の気が引き、すぐさまクロノスの隣の席についた。


「さあ、クロノスご飯にしちゃいましょ」


 くるりとこちらを向いたメアリ口元は笑っていたが目が、目がまったく笑っていなかった。


 そうしてやっと朝食にありつくことができた。

 メアリはかなりの料理上手で毎度のご飯がものすごく美味しかった。

 やはり美味しいものを食べると心も和むのか先程の空気とは一転して穏やかになっていた。

 アルベール一家は軽口を交わしながら食事を食べ進めた。


 食事が終わるとロイスは仕事へ行く準備をする。

 軽いパジャマのような服から白を基調とした服に青いマントを羽織った。

 先程のロイスの少しだらしない服装とは一転してしっかりと様になっていた。


「それじゃあ行ってくるな」


 ロイスは手を振り玄関から出ようとした。


「あ、ロイス少し待って」


 と言ってロイスを静止した。

 その声に反応してメアリの方を向くと、とても穏やかではない顔をしていた。


「わかってると思うけど、向こうで他の女の子と関わりを持たないでね」


 と言うメアリの声はどこか圧があった。

 その声に対しロイスはとても穏やかとは言えない顔をした。


「わ、わかってるって! じゃ、行くから!」


 そう言ってそそくさと家を出た。

 その背中を眺めメアリはため息を一つこぼす。

 それにしても先の光景といい父親より母親の方が強いと言うのはとても安心できるのものである。

 何故なら父親が胡座をかき圧をかけて命令するというあるあるなことが起きづらくなるからだ。


 ロイスが家から出たことを確認したクロノスは部屋へ向かい、木剣を持って外へ出た。

 そして、クロノスは素振りを始める。


「ほんと、クロノスは偉いわよねぇあのバカ……お父さんにも見習って欲しいぐらいだわ」


 メアリの心の声が漏れていることは置いておくが、クロノスがこうして素振りをするのは自衛のためである。

 クロノスが来たこの世界には元の世界の常識は通用しない。もしかしたら魔物に襲われるかもしれないからだ。

 たが、剣の振り方を教わったことはなくほとんどはロイスがやっていることの見様見真似だ。


「いえいえ、お母さん。そんなことはないですよ。こんなのお父さんの真似に過ぎないんですから」


「はぁ、息子は謙虚なのにお父さんがあんなのじゃね」


 やれやれと言った感じで溜息する。

 まぁ、そう思うメアリには同感だ。かなり残念なお父さんだからな。

 そうしていたところふと、クロノスはあることを思いつく。


「あの、お母さん少し頼み事があるんですけどいいですか?」


「ん? 良いわよ何かしら?」


「あの、僕に魔術を教えてください!」


 そう言うとメアリは少し考えた後、にんまりと笑った。


「良いわよ、クロノス! お母さんに任せなさい!」


 クロノスは心の中でガッツポーズをとったのだった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字や、アドバイス等ございましたらコメントの程よろしくお願いします。

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