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第十一話 冒険者ギルド

 翌日。朝水汲みの手伝い。もちろん一人二桶だ。


 オレはユーシンと二人、「ダイゴすげえ、ダイゴすげえ」と――朝なので抑えた声で――言いながら水を運んだ。

 王子も途中から諦め顔だった。


 炊き出しの列に並びスープを貰う。

 スープは白。昨日とはちょっと違う、硬貨を丸めたようなパスタ入り、もきゅもきゅとした歯ごたえあって今日も、美味しい。



 さて今日は昨日行けなかった冒険者ギルドだ。


 ユーシンの叔父さんについては、ユーシンが幼い頃に一度会っているようなのだが、それから音信不通だったのだから、念のためユーシンの遠戚とおえんということは伏せて、ユーシンの父親の知り合い程度でさり気なく聞いたほうが安全かも知れない。気の使いすぎか?


 すっかり顔馴染(なじ)みになった炊き出しのおばちゃんに、冒険者ギルドの場所を聞く。中央地区に近い南地区にあって。ここから二十分くらい。とのことだ。


「そうだね、今の時間ならそれっぽい格好をしたのが、ぞろぞろ出てくる三階建ての立派な建物だよ」と教えて貰う。


 三人の荷物の置き場所について相談をしたら、避難所の受け付けの人に掛け合ってくれて、受付で預かって貰えることになった。


 それから、三人連れ立って冒険者ギルドに向った。

 ユーシンどころか王子まで落ち着きがない。そういうオレもちょっとワクワクしている。



 冒険者ギルドは一目で分かった。


 革鎧を着て武装した物々しい冒険者パーティーが出入りしている。建物を出てすぐに目的地へと走り出す少年たち。おばちゃんの言う通り、間違えようがない。


 石造りの三階建て、と言っても天井までが高いのか、日本での五階相当な高さがあり、入り口の扉は大きく開け放たれている。


 王都や首都でもなく街でこの大きさってことは、かなり力のある組織なんだろうと思う。


 入り口から中へと入ると、広いロビーがあった。左右両側の壁は掲示板なのか、冒険者たちが群がっている。奥にカウンターがあってギルド職員たちの受付けがずらりと並び、冒険者たちが列を作っている。


 おー、冒険者ギルドっぽい。と感心する。


 受付けの上に文字が書いてあるようなのだが、残念ながら読めないので、王子に「新規登録、みたいな受付けはある?」と聞くと、左手一番端の受付けを指さして教えてくれた。


 ラッキーなことに誰も並んでいない。が、なんかやる気のなさそうないかついオッサンが鎮座ちんざしている。なぜここだけ?

 大男なのか? 他の受付嬢との対比がひどい。横並びなのに遠近法? と思ってしまった。


 尻込みしつつ歩いていき、オッサンに声を掛ける。

「こんにちは。僕たち三人で、冒険者になりたいんですが、どうやったら冒険者になれるのか、教えていただけませんか?」


 オッサンはにたっと笑った。え、笑ったんだよね? 歯をいたわけじゃないよね?


 スキンヘッドに檻の中にでも居たほうが似合いそうな面魂つらだましいだし、肩幅もひどい。酷いって肩を形容する言葉じゃないと思うけど、言葉に出来ない。クマの獣人か? って感じだ。


 顔や身体に似合わずオッサンはちょっと低いが穏やかな声で話し始めた。


 おういいぜ。何が知りたい? 登録料は一人大銀貨三枚だ。見習いから始めてもらいこれがGランク。 初心者用の依頼は薬草だな。採取とか・・採取だな。で、依頼をこなしてギルドポイントが貯まったらFランクに昇格する。


 初めのうちは厳しいぞ。登録料だけじゃあなく、それなりに貯めこんでないと行き詰まるぞ。

 スムーズに行ったとしても一カ月分の生活費。怪我なんかを考えると治療費やら治るまでの生活費と雪達磨ゆきだるまだ。


 まあ登録料以外に二カ月分の生活費、一人金貨の一枚や二枚はあったほうが良いと思うぞ。


 そう言ってギロリと笑った。ギロリと? そうギロリだ。


 金貨一枚(十万円相当)と大銀貨三枚(三万円相当)か……。

 なかなか厳しいことをおっしゃる。


 王子は自己申告した残金だと、自分の登録料にも不足するはずなのに、ふんふんと頷き、ユーシンもそれならなんとか、と余裕の顔。


 そうか、オレだけか……


 オッサンは二人の顔を見て「まあ真面目に一カ月も頑張ればFランクにはなれる。Fで三人なら、下位の依頼でもなんとか食ってくことは出来る。討伐系の依頼の受注も可能になるし、街中での依頼も多いしな」と話を続ける。


 ここに居るヤツラだって半分がとこはFランクだ。人数が一番多いぶん仕事も多岐たきにわたる。つまり収入もピンキリだ。


 四、五年のベテランFランカーは結構な暮らしをしているぞ。あと、Fランクで実績を作って商人だとか兵士なんかに転職するのも多いな。


 Gというか見習いは初心者講習を受講出来る。もちろんタダだ。などなど。


 オッサン、「タダ」と言うときだけ、オレの目を見るの止めてくれませんか?


 二人を見ると目が輝いている。どうやらやる気に火が付いたようだ。目が合うと王子もユーシンも頷いてくる。


 金貨は王子を拝み倒すか……



 代表してオッサンに「分かりました。冒険者登録をお願いします」と言う。


 オッサンはにやっと笑って「おう、そんじゃあ登録すっか」と言って、後ろを振り向き「サクソン女史、ご新規さま三名ご案内だ」と大声で吠える。


 その大声にガヤガヤと五月蠅かったギルド内が静まり、冒険者たちがこっちを見ている。あ、ちょっと恥ずかしいかも……


 でも折角の機会だ。王子とユーシンに合図してから立ち上がって振り返り「今日から冒険者見習いになります。ハクブン、ダイゴ、ユーシンです。よろしくお願いします」と大声で言い、頭を下げる。

 王子とユーシンも遅れて頭を下げてくれた。


 ブーイングは起こらず、「おう、頑張れよ」とか「よろしくな」とか、「見習いだと採取か・・採取だな」などと、オッサンの口まねでつぶやく声とか、好意的な声が聞こえる。


 もう一度頭を下げる。顔が火照ほてっているのが分かる。

 その後、オッサンに呼ばれてカウンターの外に出てきた女性の案内で、二階への階段を上った。


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