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98 戦いは数だよ

 そんなこんなでそれから1週間も休暇を満喫した。おかげで身体の痛みは完全になくなって万全の状態だ。今日からダンジョン攻略を再開するぞ。


「はぁ……」

「ため息をすると幸せが逃げますよ」

「……」

「無言で蹴らないでください」

「おバカ」

「罵りながら蹴るのはもっとダメです」

「あなた以外は蹴らないわよ」


 おい、俺だけは蹴るのか。俺はMじゃないから嬉しくないぞ。そして野郎ども。何ニヤニヤしながら見てんだよ。そんなにアイナに蹴られたいか? 痛覚耐性がないとマジで痛いからな。


「では改めてよろしくお願いします」

「こちらこそお願いします」


 爽やか君がこのパーティのリーダーだ。そして、先日めでたくCランクに昇格した爽やか君はクランを設立し、クランリーダーにもなった。オメデトー。


「お二人は31層から探索されていないんですよね?」

「そうです」

「では31層から探索しましょう。私たちも32層に進んだところで止まっていますので、多少戻っても問題ありません」


 あー、俺が倒れてからダンジョンに行っても攻略しなかったのね。お気遣いどうも。こういう気配りがモテる一因だろうなぁ。あとは顔か。……やっぱりムカついてきたわ。殴っていい?

 そうして俺たちは31層に向かった。いつも通り転移石があるのは洞窟内の広場で、外に出る道が何本もある。転移してすぐに特徴的な匂いが漂っていて、適当な道を選んで外に出ると、そこにはこれまでの階層とは全く違う景色が飛び込んできた。


「海よ! 海! ねぇ、あなた、海よ!」

「はいはい、わかってますよ~」

「完全に神崎さんが保護者ですね」

「嬢ちゃんもあんな風に笑うんだな」

「いいじゃねぇか。年相応だ」


 アイナが滅茶苦茶はしゃいでいる。目の前に真っ白なビーチとエメラルドグリーンの海が静かに打ち寄せているその光景を見たら、テンションが上がるのも無理はない。俺も爽やか君たちがいなければ走り出していた。何度も海を見たことがある俺ですらそう思うのだから、自宅で軟禁状態だったアイナには新鮮でたまらないだろう。少しばかり付き合ってやろう。


「魔物もいるので気を付けてください」

「何のために九城さんたちがいるのですか?」

「何のって……ダンジョンを攻略するため……?」


 HAHAHA、なんてつまらねぇジョークだ。一本取られたぜ。爽やか君、空気を読もうな?


「この笑顔を守るために決まっていますよ」

「な……!?」

「やめとけ九城。神崎に揶揄われておるぞ。そして、神崎も守る側だろ」


 あ、他力本願がバレてら。でもさぁ、これから先、遠くない未来で俺はいないんだぜ? アイナくらい守ってくれないと俺が心配になるじゃん。


「見て下さい神崎さん! こんなデカいカニが獲れましたよ!」

「茹でたら美味しいかもしれませんね」


 もう一人はしゃいでいる人間がいたわ。門番君、楽しいのは認めるけど勝手にどこか行かないようにな。君みたいな年齢の人は毎年海で溺れてるんだぞ。で、そのカニはどこで獲れたの? へー、そうなんだ。


「神崎も浮かれているな」

「ま、気楽に行くさ。人数が増えたから攻略も楽になるだろ」


 こうして俺たちは攻略を開始し始めた。と言っても32層へのルートは判明しているので、今も魔物を倒しながら宝箱探しをしている。


「呆気ないわね」

「楽でいいですよ」


 魔物にエンカウントしても俺とアイナが戦うことはほとんどない。大抵、前衛三人が始末してしまうからだ。これまでエンカウントした全ての敵と戦っていたので、こうも手持ち無沙汰になるとどうしていいのかわからない。

 あー、暇。暇って言うとアイナみたいだけど暇だわ。マジ暇。暇。ひま? 段々ゲシュタルト崩壊してきたぞ。やっぱ人数がいると楽だわ。ちなみにこの階層の主な敵はカニと魚とクラゲだ。鑑定の結果、可食らしいので処理だけしておく。美味しいかどうかは知らん。


「神崎さんって魚も捌けるんですね」

「それはもう」


 いつでもあの会社を辞めてもいいように準備だけはしていたからな。準備だけは。辞める勇気とかきっかけがなくてズルズルとやってたけど。さて、血抜きも済んだこの魚を捌いていくっ!

 ちまちま魚を捌いていたら髭熊が宝箱を見つけたらしい。髭熊の方に向かうと半分水没した宝箱の周りに夥しい数の反応が気配探知にあった。一つ一つはスライム程度の強さしか感じないが如何せん数が多い。爽やか君たちも気配探知の範囲内なのか、俺の懸念がわかったようだ。


「どうしましょう」

「一匹ずつ倒すか?」

「時間かかりません?」

「やるだけやってみるさ」


 前衛三人が勝手に進んでいく。俺はその後姿を見ながらのんびりと構えていた。


「神崎さんは行かないんですか?」

「九城さんこそ行かないんですか?」


 俺は行かない。足が濡れるから。アイナも行く気がないし。そもそもアイナなら海水ごと氷漬けにするだろうな。もしくは雷属性魔法で一撃だ。スクロールにも雷属性魔法はあるので、それを使えばいいのに、と俺は思う。爽やか君も同じ結論だろう。

 そうして三人の様子を見守っていると、宝箱にある程度近くなったところで変な動きになって逃げるように戻って来た。


「気を付けろ。あの小魚ネバネバする」


 何それ。ヌタウナギ? ローション小魚? どっちにしろアイナの教育に悪そうだ。アイナがヌメヌメのネバネバになるなんて状況は断じて許容できない。すぐさま処分しなければ。行け、爽やか君。

 そうして、爽やか君がスクロールでローション小魚を一掃して宝箱を持ってきたのだった。前衛三人は目が点になっていた。


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