表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/184

90 格好いい大人ってやつ

「アイナ、いるか?」

「……!」


 なんか部屋の中からドタバタと音がする。すぐにドアが開いたと思ったら目元を真っ赤にしたアイナがドアに隠れるようにして顔を出した。


「……大丈夫なの?」

「ヤバかったら寝てるさ」


 本当は安静にしろって言われたばかりだが、そんなことは言わない。子供に負い目を感じさせるような格好悪いことはしないのさ。


「立ち話もなんだ。入っていいか?」

「ええ」


 アイナの声に覇気がない。これは重傷だな。まぁ、俺がぶっ倒れたのが原因なんだけど。責任取って何とかしますかねぇ。

 アイナの部屋は綺麗にまとまっていた。入り口からすぐのところに机が置いてあり、来客の応対ができるオフィシャルな空間になっている。部屋の奥は衝立で隠されていて、恐らくプライベート空間だと思われる。俺は椅子に座り、アイナは机を挟んで対面に座った。


「ま、最初はお礼からだな。アイナのおかげで大事にならずに済んだ。ありがとう」

「……っ!」


 あのままだったらどうなってたんだろう、と言われるとわからないが、少なくともヨアヒムを呼んでくれたのだからお礼は言うべきだろう。相手にお礼を言えない子に育ったらよくないもんな。教育としても大事だ。

 しかしながら、アイナは納得していないような、悔しそうな顔をしていた。


「……わたくしのせいで……」

「アイナ、その話は決着がついただろ?」

「でも……」

「アイナは気付きを得た。それで十分だ。一人で抱え込み過ぎるな」


 確かにアイナの判断ミスもあるだろう。だが、それを言うなら止められなかった俺も悪いし、俺がもっと強ければ問題なかった。ミスをしたのはお互い様なんだよ。アイナ一人の責任じゃない。寧ろ、大人の俺がしっかりしなければならなかったのだから、俺の方が悪い。

 俺の言い分に反論しようとして口を開いたアイナが話し出す前に、俺は畳みかける。


「アイナ。アイナは確かに大人以上に賢い。だが、その前に子供だ。そして、俺はれっきとした大人だ。子供は大人に迷惑をかけるもの。大人は時に褒めて、叱って、笑って、泣いて子供の成長を見守るんだ。アイナは間違いを認めて成長した。子供にとって道を外れないように成長する事こそが責任だ。それ以上の責任はない」


 アイナが不良になってよそ様に迷惑をかけるのなら鉄拳制裁も辞さないが、アイナは己の間違いを理解し修正して成長できた。子供の責任を十分に果たしている。子供の暴走を止めきれなかったのは、親代わりである俺の責任なのだ。


「……わかったわ。あなたがそこまで言うなら、その意見を認めるわ」

「わかってくれたならよかった」


 少し不満げな表情を浮かべるアイナだったが、泣きはらして思いつめたような顔よりは遥かにマシだ。顔色もずいぶんよくなったようで何より。

 やっぱね、子供は笑顔が一番よ。屈託のない笑顔はそのうち万病に効くようになるさ。てか、俺って凄いいいこと言ったよな? 格好いい大人に見えてるかな? そうであってくれ。普段適当なおっさんがいざって時に頼りになるのは、得も言われぬカタルシスがあるんだよ。


「さてと、俺は部屋に戻るとするよ。一応、七瀬さんの意見を取り入れて大人しくしておく」

「待って」


 俺が立ち上がって部屋を出ようとしたらアイナに止められた。その目はすごく真剣で綺麗だった。


「あなたの意見は認めたわ。でも、あのお薬とスクロールは二度と使わないで」

「あれは緊急用だが?」

「絶対に使わないで。あなたがまた倒れると思うと嫌なのよ」


 えー、あれがないと本格的に俺は使えないゴミになるんだが? そもそもそんなホイホイ使うものではないし。待てよ? 改良して使えば問題ないか。


「言っておくけれど、改良したから別物っていう理論はなしよ」


 な、なんと!? そんなご無体な。抜け道を塞がないでよ。でもなぁ、アイナが自責の念に襲われるのならやめた方がいいのかな。アイナの悲しそうな表情は見たくねぇなぁ。別の方法で強くなることを考えるかね。


「わかったよ。あれは二度と使わない」

「絶対よ?」

「ああ、絶対だ」

「じゃあ、これ」


 あ? 小指を出してなんだ? 指切りげんまんか? あの物騒な約束のやり方か。冷静に考えると針千本飲ますってヤバいよな。どんな拷問だよって感じ。

 俺も小指を出してアイナと指切りげんまんをした。これで約束を破ったら合法的に拷問を受けることになった。


「うふふ、約束よ」

「そうだな。あ、そうだ」


 花のように笑うアイナだが、泣きはらした後で目元が赤い。俺はスクロールを取り出してアイナの目元に優しく触れる。

 うん、完璧。……あれれ? 目元の赤みが引いたと思ったら顔が真っ赤になった。リンゴも真っ青になるくらいアイナの顔は真っ赤だ。熱でもあるのか? それよかリンゴが青くなったら青リンゴだな。はい、座布団3枚。


「またダンジョンにでも行こうな」


 俺はアイナの頭を撫でてそう言った。アイナは返事こそないものの頷いているので問題ないだろう。俺も早いとこ体調を戻さないといけないので、大人しく寝ようと思う。

 俺が出て行った後、アイナは速攻でベッドに潜り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ