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88 勝利の美酒というものだ

 左腕でクジャクニワトリにぶら下がっていた俺の身体は支えをなくして落下する。クジャクニワトリの口から俺のプレゼントが出ないようにスクロールを遠隔起動した。くちばし内部でストーンウォールが発生し、強引に俺の腕を喉の奥に追いやる。

 魔法陣のスキルレベルが7になって覚えた技だ。無線式になったことでオールレンジ攻撃が可能になったのだ。ついに俺はニュータイプとなった。人類の革新だ。クハハハハッ!


「爆ぜろ、クソ鳥」


 ついでにスクロールの位置がわかるようになったから、俺の腕が喉の奥に向かったことを確認して俺は止めのスクロールを起動だ。正確には俺の腕ではなく、装備の袖だがな。

 クジャクニワトリの食道でストーンウォールとストーンランスが乱舞する。いくら巨大だといっても食道で大量の石材が発生したら対処なんてしようがない。体内からストーンランスがあちこちに突き刺さり、ストーンウォールが傷口を広げて肉を引き裂く。断末魔すら許さずクジャクニワトリは絶命した。


「勝った……」


 俺は急いで回復魔法のスクロールを起動する。作るのに魔力をアホ程使うが部位欠損を治せる優れものだ。よもや俺が使うことになるとは思わなかったけどな。

 すると、アイナの閉じ込められていた檻がゆっくりと下降していき、地面に付くと同時に消失した。自由になったアイナは俺の方に駆け寄ってくる。


「あなた! よかった……!」

「心配いらねぇって。俺だぞ?」


 とりあえずアイナに怪我はないようだ。俺の血で汚れないようにすぐさま綺麗にしたのは正解だったな。折角の美貌が台無しになっちまう。


「おバカ……! どれだけ心配したと思っているのよ!」

「あー、すまん」


 あー、俺のステータスだと心配になるわなぁ。俺も昨日の今日で最後の手段を使うとは思わなかった。だがな、そもそもこんなことになったのはアイナのせいだろうに、っていう言葉は言わない。俺が強ければ問題なかったから。


「……なんでわたくしを責めないのよ。わたくしがわがままを言ったばかりにこんなことになって、あなたは死にかけたのよ!?」


 はぁ……わかってんじゃん。俺の心遣いは意味なかったよ。ぐすん。とまぁ、ふざけるのもここまでにしておこうかな。アイナに心に傷が残るのはいけないし。


「アイナ自身が原因をわかっているのに何を言えばいいんだ? アイナならどうすれば次を防げるかわかるだろ?」


 アイナは依然不満げだ。そんなに叱られたいのか? アイナは愛情のあるお叱りを受けたことがないのか。ならちょっと叱ってやろう。


「アイナ、人の忠告を聞かないこと、そして、自身の能力を過信することの怖さを理解したか?」

「ええ」

「アイナは賢い。だが、全てを知っているわけではないし、全てを守れるわけでもない。これからはよく人の話を聞いて、よく考えて行動するようにしなさい」

「わかったわ」

「うむ、いい子だ。アイナは素直で賢いから、どんどん成長できるさ」


 アイナは少し嬉しそうだった。……あれ? 俺って叱ってたんだよな? ま、いいか。考えるの面倒だし。それに疲れた。薬の効果が切れて身体中の倦怠感がパない。アイナがMだったってことにしておくか。早く帰ろう。

 俺はクジャクニワトリをマジックバッグに放り込んで歩き出す。いつもなら錬金術で何を作るか考えるところだが、それすらも億劫だった。31層の広場に到着するや否や、すぐに転移石でダンジョンから脱出した。


「一体何があったんだい?」


 屋敷に到着してすぐ、玄関にいた村正さんに言われた言葉だ。アイナは怪我一つないのに、俺の装備はボロボロ。左腕に至っては装備がなくなっていて、腕がそのまま出ていればそうも言いたくなろう。しかし、俺は答える気力など残っておらず、適当に生返事をして部屋に戻る。


「俺は疲れたから寝る」

「そう。わかったわ」


 俺の部屋に入ろうとするアイナをそう言って遮り、自室に一人にしてもらった。アイナの気配が離れていったことを確認すると、時を同じくして俺の緊張の糸が解けた。


「かはっ……」


 盛大に吐血した。全身に激痛が走り、意識が朦朧としてくる。

 これはやべーな。掃除しないと。あー、でもその前に眠い。先に寝ようかな。でも、アイナが見たら心配されるだろうな。やっぱり掃除しなきゃ。


「身体が……動かねぇ……」


 俺は床に倒れこんだ。寒気と眠気が俺に寝るように促す。俺はそれに抗うことができず、意識を手放すのだった。


「あなた、暇よ」


 そう言ってアイナが入ってきた時に目にしたのは、血だまりに倒れこむ俺の姿だった。


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