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86 後悔してもしきれませんわ

 わたくしは今、物凄く後悔しています。神崎に甘えてわがままを言い、自分の能力を過信した結果、大切な人を死の淵へ追いやってしまったのですから。神崎や忠告をしてくださったおじさんの言葉を軽視したわたくしへの天罰なのでしょうか。


「あなた!」


 神崎が巨大なニワトリの攻撃を受けて踏みつけられてしまいました。でも、わたくしは叫ぶことしかできません。この檻は頑強でわたくしのステータスでも壊すことは叶いませんでした。さらにこの檻の中では魔法を使えないようで、わたくしの魔法全般が封じられているのです。


「よかった……」


 神崎は巨大なニワトリの拘束から逃げ出せたようです。しかし、魔法が当たった巨大なニワトリは驚いただけで効いていません。スクロールでは攻撃力が足りていないのです。魔法なら威力調節ができるのですがスクロールはそうはいきません。つまり、神崎の持っているスクロールのほとんどがダメージを与えられないということです。


「あなた……」


 悪い方向に思考が流れていきます。神崎のステータスはわかりませんが、この状況を打開できるとは考えにくいです。少なくともわたくしの知り得る範囲では、神崎の勝率は限りなくゼロに近いです。物事に絶対はあり得ないと言いますが、わたくしの脳内シミュレーションでは神崎が勝てるビジョンが見えないのです。


「ニワトリみたいな鳴き声の癖に強すぎるだろ! さっさとフライドチキンになっちまえ!」


 神崎が巨大なニワトリの側面に回りながら魔法を撃っていきます。ですがどの魔法もダメージを与えることはできません。それどころか魔法自体が弱いことを学習したのか、巨大なニワトリは魔法をものともせず神崎に向かって行きます。神崎は避けようとしましたが、突然動きが鈍くなって体当たりをもろに受けてしまいました。


「あなた……。この……!」


 わたくしはどうにか檻から脱出しようとがむしゃらに剣を振るいますが、檻は傷一つつきません。金属同士のぶつかり合う音が虚しく響くだけです。魔法は相も変わらず使えません。

 わたくしがこうしている間にも神崎は痛めつけられています。回復魔法のスクロールで強引に怪我を治しているようですが、それもいつまでもつかわからない。一刻も早く助けなければならないのに、どうすることもできない自分自身の無力さがこれほど恨めしいと思ったことはないわ。


「かはっ……」


 どれだけ外傷を治そうとダメージ自体は蓄積しているのでしょう。神崎の動きが目に見えて悪くなっています。しかし、巨大なニワトリに手加減という言葉はないようです。その屈強な足で神崎を蹴り飛ばしました。鋭利な鉤爪が神崎の身体に突き刺さり、神崎の腹部から血が滴っているのが確認できました。


「鳥の癖に前蹴りとは器用か……。珍獣として動物園にでも行けよ……」


 明らかに劣勢。いえ、劣勢というのも烏滸がましいくらいの戦いです。ただ死亡時刻を少し遅らせているだけのような戦いとも呼べない何かでしょう。そんな状況の中でも軽口を叩ける神崎はすごいです。わたくしですら諦めるような状況でさえ、未だに足掻いているのですから。


「ハァ……ハァ……、チッ。やるしかねぇか」


 神崎は何かの小瓶を取り出しました。魔力回復ポーションが入っている小瓶と同じ形ですが、色が違います。同時に何かを察した巨大なニワトリが神崎に止めを刺そうと体当たりを仕掛けました。


「あなた!」


 壁際に追い込まれていた神崎に逃げ場はありません。神崎のあの様子では回避も絶望的でしょう。わたくしはもうすぐ起こるであろう惨劇に顔を覆いました。神崎の死ぬところなんて見たくなかったからです。すぐに地面に何かが衝突する音が聞こえました。


「おいおい、どこ狙ってんだよ。鳥頭」


 神崎の声が聞こえました。わたくしは恐る恐る顔を上げると、そこには巨大なニワトリの背後に佇む神崎がいました。神崎はあの攻撃を回避して背後に回ったようです。


「でも、どうやって……?」


 わたくしが本気を出せばそれくらいは簡単にできます。でも、神崎に同じことができるとは思えません。今までの神崎の動きから考えると、どう考えても不可能です。それができるのなら初めからしているでしょう。となると、あの小瓶に仕掛けがあるに違いありません。


「かかって来いよ、鳥頭。サラダチキンにしてやんよ」


 神崎の言葉を理解したわけではないのでしょうが、挑発したことはわかったのでしょう。巨大なニワトリはおどろおどろしい羽を広げて猛然と突き進んできます。対する神崎は不敵に笑っていました。


「ハッ、チキンレースと行こうぜぇっ!」


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