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85 慢心はダメ、絶対

 俺とアイナは広場を抜けて外に出る。鬱蒼とした森が広がり日が遮られているため、太陽は出ているはずなのに暗い。


「で、どうすんのさ?」

「挑むに決まっているじゃない」

「あの人が行くなって言ってたじゃんか」


 俺は先人の忠告を聞く人間だ。自身の能力なんて信用してないからな。正に他力本願。他人の力ってスゲー。

 しかし、アイナは行く気満々のようだ。アイナにとって他人の“できない”は“できる”なのだ。あのおじさんよりはるかに強いであろうアイナに迷いはなかった


「わたくしがいるなら大丈夫よ」

「アイナが囚われたらどうすんだよ」

「うふふ、わたくしならそれくらいどうにでもできるわ」


 謎の自信である。アイナが胸を張るとともに、俺はどんどん不安になっていった。何となく嫌な予感がするのだ。このまま行けば後悔する気がする。


「そっちは今度にしようぜ? もっと強くなって九城たちと合流してからでも遅くはないだろ」

「何よ。怖いの?」

「嫌な予感がする」

「意味わかんない。わたくしだけでも行くわ」


 このお嬢様を説得するのは無理そうだ。アイナを一人にするわけにもいかないし、仕方ねぇか。

 幸い、鬱蒼とした森には人が進んだ跡が残っていた。片方はしっかりとした道になっていて、そこから少し離れたところに獣道のような細い道が存在した。細い道を選んで進み、坂を上ると開けた草原に到着する。そして草原の中央にこれ見よがしに洞窟の入り口が鎮座していた。


「ここっぽいな。階段もあるし」

「さ、行くわよ」


 何の躊躇もなく入ろうとするアイナを一度止めて、俺はもう一度最後に確認を取る。


「本当に行くんだな?」

「心配し過ぎよ。わたくしのことが信用できないの?」

「アイナは信頼してるさ。だが、何が起こるのがわからんのが人生だ。甘く見ない方がいい」


 アイナが賢いのは知っている。めちゃくちゃ強いのも知っている。だが、たかが猪の血と内臓を見て具合を悪くする普通の女の子なことも知っているのだ。どれほど天才でも、自身が異世界転移するとは考えもしなかっただろう。何が起こるかなんてわかりゃしないんだ。


「あら、そう」


 俺の心配をよそに、アイナは俺の手を取って進み出した。俺は不安な気持ちに駆られながら階段を下りる。そして、人気がないこと以外はいつも通りな通路と扉が見えた。扉をくぐり抜けてボス部屋に入ると背後で扉の閉まった音が聞こえた。


「……え?」

「アイナ!?」


 扉が暇ると同時、俺の手を掴んでいたアイナの足元が光り何処かに消えてしまった。周囲を見回してもおらず、代わりに少し離れた地面が光って魔物が出現する。


「あなた! ここよ!」

「アイナ、大丈夫か!」

「大丈夫!」


 アイナは天井から吊るされた巨大な鳥籠の中に閉じ込められていた。幸い怪我はないようだ。俺はどうやってアイナを助けようかと思っていると、出現した魔物が「コケーッ」叫び声を上げて襲い掛かってきた。


「なんだよ、このクソニワトリが! てめぇの相手は後でしてやるよ!」


 俺はアイナを助けることで忙しいんだ。その後でフライドチキンにしてやるよ。ってか巨体に似合わず早すぎんだろ。しかも、くちばしで地面が抉れてるんだが? 強すぎんか。

 巨大ニワトリのくちばし攻撃を避けながらアイナの方を見る。アイナは俺の方を心配そうに見ていたので檄を飛ばした。


「アイナ! そこから脱出できそうか!?」

「扉も鍵穴もないわ」

「魔法は!? 力技で檻を破壊できないか!?」


 賢くても突然の出来事に頭は真っ白になるんだな。で、返答は不可と。ヤバいな。俺の独力でクソニワトリを倒さにゃならんのか。……勝てるかな?


「クソッたれがッ!」


 俺は全力で身体強化をしつつ、槍の一突きで目玉を狙う。魔物であっても生きの形を取っている以上、ここは弱点であることは判明しているのだ。


「嘘だろ!?」


 俺は少々魔物というものを嘗めていたらしい。巨大ニワトリは器用に片目だけ瞑り、瞼で俺の槍撃を弾いた。槍のスキルも全開だったはずなのに傷すらつけられない事実に動揺を隠せない。俺はその後も攻撃をするが、くちばしも足も胴体もノーダメージだった。


「冗談キツイぜ……」


 巨大ニワトリは俺に攻撃が当たらないことに嫌気がさしたのか、クジャクのような羽を広げた。目玉のような模様が実際にくりくりと動いて俺を見つめる。そして、俺の身体が急激に重くなった感覚に襲われた。


「なんだ、こりゃ……ガッ……」


 強烈なくちばしの攻撃を食らってしまった。咄嗟にシールドを発生させたが、威力を減衰させただけで砕かれてしまった。床をゴロゴロと転がり、止まったと思ったら上から踏みつけられる。


「あなた!」


 鉤爪が食い込んで痛ぇ。このクジャクニワトリ、俺を逃がすつもりはないようだ。上からくちばしが降ってくるぜ。あれを食らうわけにはいかんな。

 俺はマジックバッグからスクロールを取り出して起動する。複数の火でできた槍がクジャクニワトリの顔面目掛けて飛んでいく。クジャクニワトリはいきなり飛んできた火に驚いて奇声を上げて首を上げた。その際緩んだ鉤爪の拘束から俺は抜け出すことができた。


「ははっ、当たったはずなんだけどなぁ」


 視界の端にファイアランスが命中したところ見えたと思ったが、クジャクニワトリは無傷だ。それは、俺に想像以上の厳しい戦いになることを分からせるには十分だった。


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