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69 これがデジャヴか

 翌朝、俺は部屋で尋問を受けていた。人権なんてお構いなしの最低な行為だ。この人でなし! いや、エルフとかドワーフとかだけど。


「それで、夜一人で抜け出した言い訳を聞こうか?」


 言い訳って、別に抜け出したらいけない理由なんてないだろ。てか、俺はおっさんだぜ? 深夜のコンビニ常連さ。夜出かけることに何の不思議があるのか?


「隣にイビキがうるさい人がいたら逃げるでしょう?」


 不眠症って厄介だよなぁ。明日の予定がある時に限って異様に目が冴えるんだもの。うとうとし始めたと思ったら朝だよ。嫌になっちゃう。


「確かに。あれはうるさかった。神崎さんが隣だったのか」

「大和さん。神崎さんなら問題ないでしょ。なんだかんだ言ってもいい人だし」


 俺が、いい人……? 馬鹿な、俺は傍若無人の孤独なおじさんだぜ? ……言ってて悲しくなってきた。真面目に考えよ。


「私は夜の食堂で噂話を集めていただけです。ここには多くの冒険者の方がいらっしゃいますので、ダンジョンの話題はよくでますよ」


 何層に何があっただの、効率の良い狩場だの、不穏な噂だの様々だ。それらを集めるためには彼らと行動を同じくしなければならない。日本の感覚でいたら馴染めないぞ。


「そうなんですか?」

「ええ。昨日は噂話を聞くだけに終始しましたが、お酒を飲みながら近づける人は馴染みやすいのではないでしょうか?」

「……今晩は俺が情報を集めます」

「俺も」


 おい、お前ら。ただ酒が飲みたいだけだろ。顔にそう書いてあるぞ。イケおじも苦笑いじゃないか。

 結局、俺の尋問は早々に有耶無耶となり、仲良く皆で朝飯を食らう。うん、微妙。


「腹ごしらえも済んだな。ダンジョンに行くぞ」


 宿の外に出ると爽やか君が爽やかに挨拶をしてくる。女性陣はまだ来ていない。と思ったら出てきた。……あれ? 昨日も同じこと言ったような? デジャヴか? それともエンドレスな夏休みのやつか?


「あなた、おはよう」

「ああ、おはよう」


 アイナとの挨拶だ。むさくるしい野郎どもばかりの宿屋で荒んだ俺の心を癒してくれる。あー、あの建物が如何に快適だったかよく分かるね。自室が欲しい。

 昨日と同じようダンジョンに向かい、同じように1層の広場で別れる。ただ、ここで違ったのは昨日とパーティが違う人がいたことだ。仲が良くても明確にステータスが違うと攻略に支障が出るのだろう。


「4層まで行ってノブタを狩れるようになれば普通に生活が成り立ちます。パーティでお金を工面できるようになったら、各個人で宿をとっても良い事にしましょう」


 何と! それを聞いたら攻略まっしぐらだぜ。アイナがいれば4層なんて楽勝よ。……俺? 俺は、ほら。賑やかしだから。うん。


「ほら、あなた。行くわよ」

「はいよ」


 アイナもやる気満々だ。昨日みたいにトラップに自ら突っ込むなんてことにはならないだろう。

 そう思っている時期が俺にもありました。アイナは超ハイペースで攻略していく。ゴブリンとかが見えた瞬間には魔法が飛んでいくんだから、魔物にとっては死神だな。随分と可愛い死神だけど。


「うふふ、4層に着いたわ。ノブタを狩りましょう」

「はぁ、はぁ……。疲れたぞ……」

「情けないわよ、あなた。これからが本番じゃない」

「……言っておくが、ノブタは燃やし尽くすなよ?」


 トラップだろうが何だろうが、文字通り圧倒的火力で燃やし尽くしたアイナのおかげで、そこそこのアイテムは手に入った。魔石も消し炭から取り出すだけだったので簡単だったが、数が多いのなんの。


「ノブタはあなたに任せるわ」

「血抜きと解体をしろと?」

「よくわかっているじゃない」


 Oh……、マジかよ。何て人使いの荒い幼女だ。ステータス的に俺よりも力がありそうだし、俺のやる意味あるか? いや、幼女に働かせて俺は休憩なんて体面悪いからやらないけど。


「あ」

「どうしたの?」

「気配探知に知らない気配がある。こいつがノブタか」

「連れていきなさい」


 女王様っぽい言い方に磨きがかかってきたな。仕方ない。お連れしてやろう。エスコートとかしたことないけど。

 俺は気配を感じた方に向かう。その気配はゴブリン程度の強さで、数は1つ。普通の猪より弱い。


「あれか?」


 曲がり角を曲がった先にノブタはいた。何というか、豚をデフォルメした感じだ。ただし可愛くない。しかも足が異様に短い。出来損ないの豚の貯金箱という言葉がしっくりくる。


「あなた、行きなさい!」

「おう!」


 ポケットなモンスターのゲームか! とツッコミたくなるやり取りをして俺は駆ける。作戦は何時ぞやと同じだ。通りすがりにジャンプしてすれ違いざまに首の動脈をちょんぱして着地。今度はしっかりと着地できたぞ。

 ノブタは地面に倒れ、赤い血が水溜りを作る。絵具みたいな色の血ではないようだ。


「お疲れ様」

「強敵だった……」

「どこがよ!」


 あー、ツッコミが気持ちええんじゃぁ。っとノブタも動かなくなったし、解体しましょうかね。

 俺はノブタを解体しようとロープを取り出して気が付く。そう、ここにはぶら下げる木が無いのだ。アイナに持っていてもらうことも考えたが、絵面が悪すぎるので即却下して、錬金術で校庭の鉄棒みたいなものを作り、そこにぶら下げる。


「アイナ、無理するなよ?」

「わかっているわ」


 解体を手伝うアイナに一応声をかける。大丈夫とは思うが念のためだ。内臓類は通路の端に捨てて、マジックバッグに放り込む。ダンジョンに死体などを置いておくといつの間にか消えているという、よくある設定のおかげで後処理が楽ちんだ。

 ご都合主義、万歳!



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