表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/184

37 さあ、代金を頂こうか

 昼飯をパパッと取り終えた俺は、アイナを連れて再び会議室に向かう。そこにいた爽やか君を鮮やかにスルーして、生産職の人間のいる場所を聞き出し、そこへ歩を進めた。


「良かったの? 放置して」

「先に注文しておかないと、装備品を作製するのに時間がかかるらしいからな。作製時間中に聞けばいいさ」

「時間がかかるの? 錬金術は一瞬じゃない」

「錬金術は錬金術だからな」

「意味が分からないわ」


 それは俺も分からないんだよ。研究対象だな。できればやるよ、できれば。

 俺たちが向かったのは、会議室と同じく一階にある部屋だ。正確には、この一帯全てが生産職の工房と化している。わざわざ自室から、製作用の道具を運んだらしい。


「村正さんはっと、ここか?」


 俺は教えられた部屋をノックする。中から返事があった後、入室した。


「もう来たのかい。ま、こっちとしては積もり積もった借りを返す、いい機会なんだけども」

「このあと九城さんと情報交換があるのですよ。依頼だけでもしてしまおうと思いまして」

「そうかい。じゃ、早いとこ決めちまおうか」


 机を挟んで座り、紙に要望を書き込みながら案を練っていく。

 俺の要望は、まず軽いこと。次に動きやすいことだ。その上で防御系や耐性系のスキルが欲しいことを告げる。


「中々、要望が多いね。だが、やりがいはありそうだ」


 村正さんは楽し気だ。この人も俺と同じく、作ることが楽しいタイプだろう。そんな感じがする。


「そう言えば、その娘ちゃんの服はアンタが作ったのかい?」

「そうよ」


 何故、アイナが答える? しかもドヤ顔で。


「ちょっと失礼。……こりゃまた、凄いね」

「そうでしょう」


 アイナの衣装に少し触れた村正さんは、驚きの声を上げる。そして、何故かアイナが胸を張る。


「負けられないね、これは」


 獰猛な目は、確かな熱があった。これは良い装備ができそうだ。

俺は村正さんが欲しいといった資材を渡す。数日でできるとの話なので、次の生産職から代金を毟り取りに向かう。





「結構、時間かかったわね」

「それだけ俺の商品が売れた証拠だな」


 ついでに使い心地や、この環境で欲しい道具のアンケートをとった。これで、次回も売れる商品が作れる。そして、高く売りつけて、ウッハウハだぜ。

 そもそも、時間がかかったのは俺のせいではない。俺は要望を伝えて資材を渡すだけなので、大した時間は必要ない。自分の考えたデザインまで要求した誰かさんがいたから、余計に時間がかかっただけである。


「俺は爽やか君の所に行くけど、アイナは?」

「爽やか君?」


 あ、やっべ。俺が頭の中でのみ使っていた、適当あだ名を口走っちゃった。


「九城って、見た目は爽やかだろ」

「ぷ……。み、見た目はね」


 笑って差し上げるな。人の顔を見て笑うのは失礼すぎる。人を傷つける行為だ。

 それをアイナに言うと、「勝手にあだ名をつけるのはいいの?」と返される。


「相手が傷付かないあだ名ならアリだ。ただ、俺は心の中だけで言うようにしている」


 あだ名自体を嫌がる人もいるからな。胸の内にしまっておく方が無難だ。

 そんな事を話しながら、会議室に戻ってきた。中には爽やか君とイケおじ、髭熊、俺を睨んでくる女がいた。恐らく、爽やか君のグループの首脳陣だろう。


「ずいぶんと長かったですね」

「自分の命に係わるものですからね。適当に済ますことなんてできませんよ」


 おい、アイナ。何だその目は? 俺は事前に決めていたから早く済んだだけだぞ。


「では早速、情報をいただきましょうか、九城さん」

「はい、構いません」


 爽やか君は、紙を張り付けて巨大な一枚の紙にした物を机の上に広げた。紙には中心に“拠点”と書かれていて、各方面に何かの記号が記入されている。


「これは……地図ですか」

「はい。この数日、各方面に偵察部隊を出して、様子を探ってみました」


 はー、頑張ってるなぁ。生きるのに精いっぱいの俺とは大違いだ。


「現在分かっているのは、この土地は四方を山に囲まれた盆地。もっと言えば、陸の孤島です」


 それは分かる。この建物の5階に住んでいる俺は良く知っている。三方は馬鹿みたいに高い山脈が連なっていて、残りの一方も、そこそこ高い山々が鎮座している。


「どの方向も探索を続けていますが、ここを出る時は、こちらの山脈を踏破しようと考えています」


 爽やか君が地図の一点を指差す。そこは、俺がそこそこ高い山々、と評した方向だ。


「ふむ、その方がよろしいでしょうね。他の方向よりは負担が少ないでしょう」

「……驚かないのですね」

「驚いていますよ。今の段階でここの脱出の事を考えているのですから」

「驚いているようには見えませんよ」


 苦笑い風ではあるが、その目は楽しそうだな、爽やか君。そして、俺を巻き込む気満々か。

 いつもなら営業スマイルをぶっ放すところだが、今回はわけが違う。俺一人の力で進めようにも、事が大きすぎる。

 仕方ない。今回は巻き込まれてやるよ。苦労するのは大っ嫌いだが、俺の命がかかっているのならば話は別だ。サービスしとくよ。

 俺はいつになく真剣な顔をして、口を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ