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馬に乗ろう!

「今日は馬に乗りましょう!」


最近は私と王子とメリーの3人で遊ぶ事が増えてきたのだが、今日はメリーがいないので久々に体を動かそうと思った。


「う、馬…」


青い顔をする王子。


「馬、苦手?」


「うん、少し…5歳の時に落ちそうになってね…」


「そうなんだ。でも大丈夫!乗れるようになるから!」


「そ、そうかな?」


「まずは馬と仲良くなる事から始めよう!」


我が家の厩舎に手を引いて連れてくると、馬を見た途端に泣きそうな顔をする王子。


その泣きそうな顔の可愛い事!


ギューってしたくなる可愛さ!


「馬は賢いから、怖がってるのが伝わっちゃうよ?私が一緒だから絶対大丈夫!」


「傍にいてね?」


あー、王子が可愛すぎる。


目がうるうるしてて庇護欲と母性本能が擽られる。


「尻尾を振ってる子は機嫌がいいよ。耳がペタンとしてる子は警戒してる」


「へぇ」


「今日乗る子はこの子!尻尾振って鼻も伸びてるからご機嫌だよ!」


紹介したのは我が家で一番小さい馬、ポニー。


名前もそのまんまポニー。


背も低いし、気性も一番穏やかで優しい子だ。


因みに私が一番最初に乗った馬もポニー。


「撫でてあげて」


王子は怖々と手を伸ばしてポニーを撫でている。


「温かい。意外と滑らかなんだね」


慣れてきたのか少しずつ笑顔になってきた王子。


「この子なら怖くないかも」


そうでしょう、そうでしょう!


うちのポニーはほんと良い子なんだよ!


ポニーを厩舎から出して鞍を乗せ、首寄りの左側に踏み台を置いた。


(たてがみ)と手綱を握って、(あぶみ)に左足をかけて乗ってみて」


「こ、こう?」


「そう!その調子!」


多少手間取っていたのでお尻をグイッと押してやると漸く王子がポニーに跨った。


「うわぁ!乗れた!」


「右足もちゃんと鐙に掛けてね!」


「う、うん!」


「じゃあ最初は私が引いて歩くから、背筋を伸ばして前を見てね。乗ってる感覚を覚えて!」


「分かった!」


ポニーの手綱を引いてゆっくりと歩き出すと王子は私の言う通り背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見てお行儀良く座っている。


「歩いてるよ!あぁ、凄い!」


「最終的にはちゃんと1人で乗れるように頑張ってね!」


「うん、頑張る!」


ぐるりと厩舎の周りを一周したのでポニーにご褒美の野菜をあげた。


鼻を撫でながら「お利口さん。もう少し付き合ってね」と言うとブルルと鼻を鳴らしてくれた。


「しっかりと手綱を握って、背筋を伸ばして優しくお腹を蹴ってみて」


「こ、こう?」


王子が軽くポニーのお腹を蹴るとポニーは「心得た!」とばかりにゆっくりと歩き出した。


「わぁぁ!僕、一人で乗れてるよ!」


小走りで隣に張り付きながら暫く様子を見ていたけど、そのうち王子はコツを掴んだのか一人でもゆっくりとポニーを歩かせる事が出来るようになった。


厩舎の周りを何周かしてポニーから降りた王子はポニーの顔や首を優しく撫でながら「乗せてくれてありがとう」と優しい声で何度も言っていた。


ポニーは上機嫌で鼻を鳴らしている。


そして「ご褒美は?」と言わんばかりのうるんとした目で私を見たので、ご褒美に馬用クッキーをあげるとゆったりと尻尾を振りながら美味しそうにクッキーを食べた。


「可愛いなぁ」


「でしょ!ポニーは良い子で可愛いの!」


「リリーも可愛い!」


「うん?ありがとう」


今のどこに可愛い要素があったかな?


「落ちそうになった馬って大きい子?」


「うん、凄く大きかった」


「5歳の時でしょ?何で小さい馬から始めなかったの?」


「兄様が「この馬に乗れ!」って言ったから…」


馬のチョイスが悪かったとしか思えない。


まだ体の小さな子供にいきなり大きな馬は無理があるだろう。


その点ポニーは乗りやすい。


結構早い段階でちゃんと一人で歩かせる事が出来るようになったんだから凄い事だと思う。


乗れない人はとことん乗れないし。


「ヴェルはきっと乗馬の才能もあると思うよ?」


そう言うと少し驚いたような顔をした後に花が咲くような笑顔を見せてくれた。


何度も言いますが可愛すぎるぞ王子!!


「僕でも馬に乗れるかもしれないって希望が持てたよ!」


「そんな大袈裟な!ヴェルならすぐに乗りこなせるようになるよ!」


王子は大満足という顔で帰って行った。


ポニーで馬になれて、そのうち大きな馬にも乗れるようになるといいなぁ。



馬に乗れた!


奇跡が起きたのかと思った。


5歳の時に「乗ってみろ」と言われた馬は真っ黒な軍馬でとても大きくて、跨る事すら難しかった。


何とか乗せてもらったが鐙には足が届かないし、鞍も大き過ぎて不安定だった。


腹を蹴れと言われても腹に足が届かず、兄様がボンっと腹を殴った。


すると馬は走り出そうとし、僕は馬の背から落ちそうになり、必死で手綱に捕まったが、まだ握力も少なくしがみついている事が出来ずに振り落とされそうになった所を護衛の騎士に助けられた。


それ以降馬が怖かったのだが、リリーの家のポニーは怖くなかった。


最初は少しだけ怖かったけどすぐに穏やかな優しい子だと分かった。


僕の指示をちゃんと聞いてくれたとても利口なポニー。


きっとリリーが優しく世話をしているからあんなに穏やかな性格なのだろう。


「あぁ、いいなぁ、ポニー」


僕も優しく世話をされたい。


ポニーが羨ましく感じた。

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