ヒロイン補正?
あれからアイネちゃんも一緒にランチをするようになった訳だが、アイネちゃんが妙に萎縮してて何だかこっちが申し訳なくなる。
誘っちゃ駄目だった?!と聞きたくなる程に小さくなってる。
どうしたもんか?
アイネちゃんにもっと友達が出来ればいいんだろうけど。
マギーはと言うと、初日と2日目こそヒロインっぽいキャラで目をうるうるさせてぶりっ子してたけど、今ではすーっかりそんなの脱ぎ去ってて『頼れる姐さん』キャラで友達を着実に増やしている。
貴族令嬢は長い髪が基本のところ「邪魔だしアイネと被るから嫌」とサッパリしたボブに切ってきちゃうし、それがまた似合うし。
同級生に「お姉様」と呼ばれるまでに見事な変身を見せている。
アイネちゃんは性格もいいしこんなに可愛いんだから友達の1人や2人や3人や4人出来てもおかしくないのに、ここでも可愛すぎる弊害が出ているようで男子以外寄ってこないという最悪な環境になっている。
めっちゃ良い子なのにそれが正しく伝わらないって勿体なさすぎる。
そしてなーんとなくヒロインが攻略対象者とやたらと親密度上げてく乙女ゲームの世界観が理解出来た。
あんな風に周りからは相手にされず、そんな中で唯一自分に興味を示してくれる攻略対象者が目の前に現れたら、そりゃ婚約者がいようが恋に落ちるってもんだわ。
逆ハー目指す気持ちはまだ分かんないけど。
しっかしアイネちゃんを取り巻く環境を何とか改善出来ないもんかな?
ぼんやりとそんな事を考えていたら先生に怒られてしまった。
「授業中にぼんやりしているとは随分と余裕ですね、リリーナさん」
濃紺髪で丸眼鏡が特徴的な、眼鏡外せば絶対イケメンなパーシー先生に。
髪色的に攻略対象者だとしてもおかしくないけど、パーシー先生はサポートキャラなのだそうだ(マギー談)。
パーシー先生は社会科の先生で、この国の歴史や近隣諸国の歴史を教えてくれている。
素敵なバリトンボイスで、授業を聞いていると心地良過ぎて眠くなるというオプション付きだ。
「すみません」
取り敢えず謝罪をして授業に集中した(その後睡魔が襲って来て必死で戦ったが)。
「リリーが怒られるなんて珍しいわね」
「どうしたの?何かあった?」
「女神の御心を乱す原因は?!」
レナンさんよ、学園で女神呼びはするなって言ったよね?!
今まで授業中に怒られた事はなかった(休み時間には何度か怒られた。主に廊下を走って)から心配されてしまった。
「ちょっとねー、アイネちゃんの事考えてて」
「アイネ様?」
「あの子がどうかした?」
「女神の御心を乱すとは許せん!!」
だからレナンは黙れ!!
アイネちゃんが孤立してしまっている事が心配だと説明すると皆が納得したように頷いた。
「アイネちゃん凄く良い子なのに何であんなに遠巻きにされちゃうのかな?」
「それは私も思ってたわ。あの子普通に良い子なのに変よねー」
「身分差別かと思ったがそうでもなさそうだよね」
「アイネちゃんが可愛すぎる弊害かな?」
「アメリア以上に可愛い者はいない!」
「レナン、黙りなさい」
すかさずメリーに黙れと言われるレナン。
なんか少し気の毒だ。
「まぁ僕的にもリリー以上に可愛い子はいないと思ってるけど、あの子、リリーが言う程可愛い?」
「え?ヴェルって目が悪いの?!可愛いでしょ!天使のような可愛さでしょ!あんなに可愛い子見た事ないけど?!」
「そう?僕にはリリーが言う程可愛くは見えないんだけど」
「うんうん!僕もそう思う!」
「まぁ確かにアイネ様は可愛らしいお顔をされてるけど、私もリリーが言う程可愛いとは思わないわ」
「どういう事?!」
話を聞いてみるとどうやら私が見ているアイネちゃんとみんなが見ているアイネちゃんの可愛さには齟齬があるようだ。
私には絶世の美少女に見えているアイネちゃんだが、みんなには普通より上の、まぁ美少女は美少女ね。でも絶世の美少女って言う程じゃないんじゃない?位の可愛さなのだそうな(それでも美少女には変わりないんだけどさ)。
何故?
美意識の違い?
マギーは「めっちゃ可愛い」って言ってたから私と同じ感覚で見ているんだと思うんだけど、何この違い?
因みにたまたま通りかかった男子(イアン君)を捕まえて同じ質問をしたら彼は「いや、あの、可愛いと、思います」と顔を真っ赤にしていた。
だよね、可愛いよね。
試しにカミーユ様はどんな感じに見えてるのか聞いてみると、メリーは私と同じ意見だった。
王子とレナンは「男の見た目を男に聞くのはおかしい」と言われた。
そういうもの??
その後も近くにいる男子女子に聞いてみたが、男子の反応は私やイアン君と同じで、女子の反応はバラバラ。
何?美少女って見る人によって見え方変わるの?!
どう贔屓目抜きに見てもくっそ可愛いんだけど!
何故その可愛さがメリーや王子達には伝わってないの?!
今世紀最大の謎だ!
「可愛いとかそういう事は抜きにしてもあの子が置かれてる状況は同じクラスメイトとして看過できないね」
「そうよね、確かに良くないわ」
「何か原因があるんじゃないか?悪魔に取り憑かれてるとか」
レナン!!お前本当に黙ってろ!!
てかレナンって何かにつけて悪魔に取り憑かれてるって考えるの好きだよねー。
私も最初悪魔憑きだって言われたしさー。
でも何か原因があるんじゃないかって言うのは間違いじゃないのかもしれない。
私が見えてないだけでアイネちゃん自身に何か問題があるのかも。
…………ないな。
多分ない。
だってアイネちゃんが何か問題行動をしてる所なんて見た事も聞いた事もないもん。
だったら何故?!
堂々巡りである。
「ハッキリした原因が分かるまでは取り敢えず積極的にこちらから話し掛けて孤立しないようにしよう」
取り敢えずそういう事で落ち着いたけど、色々と腑に落ちない事だらけだった。
*
「アイネが孤立してる原因?うーん…」
放課後マギーの部屋に押し掛けた私はマギーにも相談してみた。
同じ世界で生きていた上に花乙の知識を持つマギーだから何か原因を知ってるかと思って。
「あの子がやっかまれてる事は知ってるけど、そういう事を言ってる子には私が「そういうのはみっともないからやめなさい」って窘めてるんだわ」
「そうなの?!さすがマギー!」
「でも何でかあの子へのやっかみって全然なくならないんだよね。まさかヒロイン補正かな?」
「そんなヒロイン補正、ある?」
「ほら、乙女ゲーの世界のヒロインってさ、身分だの何だので周りからは虐められたりしてヒロインの立ち位置って結構過酷じゃん?でもそれでも明るく立ち向かうヒロインが攻略対象者達からは眩しく見える、みたいな所あるじゃん?だからその補正的なものが働いてたりするのかな?って思ったんだよ」
「強制力はないのにヒロイン補正だけはあるっておかしくない?!」
「そうなんだよねー。それが腑に落ちない」
「何かさー、相応しくないって先輩達に言われたとかでちょっと前まで中庭の奥の四阿でぼっち飯してたんだよー、アイネちゃん」
「四阿?!あのボロの?!ぼっち飯?!」
「これからは一緒にランチしようって言ったらさ、目の前で泣いちゃってさー」
「マジかー…」
「何とかならないもんかなー?」
「何とかしてあげないと可哀想だわなー」
「とりま話し掛けてボッチにならないようにしようとは思うんだけど、それじゃ根本的な解決にはならないよねー」
「だねー。何とかクラスの女子が話し掛けるキッカケでも作れればいいんだけど…」
「実は聖女でした!的な展開とかないの?」
「あー、そういうのないない。花乙の世界は魔法とかのファンタジー要素なかったから。ひたすら明るく健気なヒロインの姿に攻略対象者達が心惹かれ、優しい心に癒されて距離が縮まっていく、ある種やり込みゲー的な感じだったから」
「そんなゲームによくハマってたねー」
「めっちゃ美麗スチルでさー!描いた人神!って言われてる位にめっちゃヤバい位に綺麗なの!それ見たさにどハマりしたよねー」
「へー。因みにマギーは誰推しだったの?」
「私はパーシー先生」
「へ?!メインキャラじゃなくない?」
「うん、違う。でもさー、パーシー先生のスチルもあったんだよー、何枚か。それがもう鼻血出そうな位カッコよくてさー!知ってる?パーシー先生って眼鏡取ると色気のあるイケメンだって」
「知らないよー。でもイケメンだろうなぁとは思ってたけど」
「もうね、ヤバい位にイケメン!眼鏡常時外してて欲しい位にイケメン!目が合ったら妊娠しそうな位の色気!あれは惚れる!」
「まさか今でもパーシー先生推し?」
「勿論!婚約者いない事は既に確認済み!因みに伯爵家次男!年齢差10歳だけどこの位許容範囲!絶対落とす!推しと結婚するって最高でしょ?!」
「そうなんだ…頑張って」
「卒業までには落とす!絶対!」
鼻息の荒いマギー。
うん、頑張れ。




