この組み合わせ抽選会の最後に
日本各地の予選を勝ち抜いた代表が、この場に集結していた。
四十九の代表校だ。北海道が「北北海道」と「南北海道」、東京が「東東京」と「西東京」なので、四十七都道府県の数よりも二つ多くなる。
高校野球の全国大会、その組み合わせ抽選会が今から始まるのだ。この様子はインターネットで生中継されている。
各校からは監督と主将が参加しており、多くの顔が緊張していた。とにかく、まずは一勝だ。できることなら、初戦から優勝候補の学校とは戦いたくない。
それぞれの学校が順番にくじを引いていき、トーナメント表が次々と埋まっていく。
しばらくは誰も気がつかなかったが、やがて異常に気づく者が現れた。
(これ、おかしくないか?)
トーナメント表を見ながら、慎重に数を確認してみる。
やはり、そうだ。
トーナメント表の末端にある、各校の名前が入る枠。その数がおかしい。四十九ではなく、五十ある。一つ多い。
この異常、会場にいる者だけでなく、スマホやパソコンで抽選会を見ていた者たちも気づいた。
実はこれ、運営委員会のうっかりミスだった。
しかし、それを何となく察しつつも、気づいた者たちは好き勝手に想像する。
――この抽選会の最後に、謎の代表校が登場するらしい。
――地方予選で惜しくも敗れた強豪校たちが、秘密裏に敗者復活戦をしたんじゃないのか?
――ひょっとして、最後の一枠は海外からの参戦?
――いいえ、きっとプロ野球チームです。
こうしている間にも、抽選会は進んでいく。
残りの枠が減ってくると、さらに多くの者たちが気づいた。
会場内がざわつく。インターネット上も同様だった。
――これって、抽選会に注目してもらうために、わざとやってるんじゃないの?
仮にそうだとしても、この勢いは止まらない。ツイッターなどで情報を知り、抽選会の生中継を見る人の数は、どんどんと増えていく。
残り五校になると、インターネット上で有志によるカウントダウンが始まった。
最後に何が起こるのか、目を離すわけにはいかない。
そして、四十九番目の学校が、くじを引き終わった。
運営委員会の担当者は途中でミスに気づいていたが、このタイミングで遅ればせながら、それを伝えようとステージに上がる。
その時だった。
会場のドアがいきなり開け放たれて、
「最後のチームは俺たちだ!」
数人の男女が入ってくる。
少し前に彼らはそれぞれ、会場近くの別々の場所にいた。
で、一人一人が次のように考えたのである。
――これ、今から会場に行って参加を表明したら、全国大会に出場できるんじゃ?
それで、急いで駆けつけたのだ。チームのメンバーを一から集めるのは、後回しでいい。まずは出場権を確保する!
同じことを考えた者は複数いたので、会場の外で彼らは出会った。
そして、警備員を突破するために、共闘したのである。誰かが会場内にたどり着けばいい。
まさかの展開に、会場内は大きくざわつく。五十番目のチームが登場したのだ。
「今年の大会は荒れるな」
全国大会に何回も出場しているベテラン監督が、表情を変えずにつぶやいた。