04-19_ヒーローと変態との遭遇
今回はアリエルとあの男が遭遇します。
勘のいい人ならこのサブタイで誰かもう分かったと思います。
04-19_ヒーローと変態との遭遇
「さて、僕は任務終了の報告に行くけどみんなはどうするんだい?」
怪人退治が終わり、基地に帰還した直後。井戸亜の発したこの言葉から話は始まった。
「えっと~、イトアさんはあたしに魔術を教えてくれるんじゃなかったんですか?」
「勿論そのつもりだよ。でもまずは報告とか準備があるからね。
それにそろそろ夕食時だ。ここで一度解散にすると言うのはどうだろう?」
「そうですね・・・では僕はこれで「おっと、待ちな。テメェは俺らと一緒に飯だ。」」
「えッ!・・・純さん。こんなスプーンよりも役に立たない僕を誘ってくれるだなんて・・・僕、感激です。」
「・・・」
「アリエル、突っ込んではダメだ。」
「うん・・・分かってる。」
「それじゃ、僕はこれで。」
蒼太の卑屈スイッチが入りなんとも言えない空気になった所で井戸亜が解散を告げる。
そこへ、いつもより少し堅い雰囲気のナナシが井戸亜に声を掛ける。
「井戸亜さん。夕食を合成携帯食で済ませてはいけませんよ。」
「別にいいだろう。食事なんて必要な栄養素が取れればそれで。」
「ダメです。」
「はぁ~っ。ウチの風紀委員長は厳しいね。分かった。適当にバランスを考えて食べるから。
全く、携帯食なら1分で食事が終わると言うのに・・・ブツブツ・・・」
「なぁ、フレイム。お前が出かけている間、あの引きこもり全部携帯食で済ませていたぞ。」
「・・・露木さんを交えて生活指導だな。」
「ははぁ、じゃああたし達も食事に行きましょう。あたしお腹空いちゃった。」
純の密告により井戸亜のお説教が決定した所で、一同は食堂へと足を運ぶ。
今は夕食時という事もあり、食堂は賑わっていた。一応、まばらに空いている席はあるものの4人同時に座れる場所は限られる。
純が素早く空いている4人用のテーブルを発見して、席を確保しながら大きめの声でナナシに語り掛ける。
「フレイム!俺が席、確保しておくからお前とアリエルで飯取って来てくれ。ちなみに俺はBセットヒーロー盛りな。」
「僕も・・・純さんと席の確保でいいですか?人混みはどうも苦手で。」
「分かった。蒼太君はどうする?」
「僕はAの普通でお願いします。」
「了解した。アリエル、行くぞ。」
「うん、分かった。」
こうしてナナシとアリエルが食事を取りに行く事になった。
この基地での夕食は魚、野菜中心のAセットと肉中心のBセットの二種類から選べる。
本日メニューはAが焼き魚と野菜の煮っころがし定食で、Bが豚の生姜焼き定食である。
大きさも、少なめ、普通、大盛り、ヒーロー盛りの4段階ある。
ここは日本ヒーローの総本山であるとともに、それに携わる様々な関係者が利用する為、食べる量も人によってまちまちだからである。
ちなみにヒーロー盛りについてはマジで洒落ならない量(焼き魚10匹とか肉1キロとか)を盛られる為、大食いのヒーロー以外は非推奨である。
今回アリエルはBセットの大盛り、ナナシはAセットのヒーロー盛りを選択、4人分の注文をカウンターで行う。
「お待ちどう様。A普通とヒーロー、B大盛りとヒーローですね。」
「ありがとうございます。」
こうして特に何事もなく、料理を受け取った2人が純と蒼太の元へと向かう。
そこにはオドオドとした様子の蒼太とお腹を空かせて待ちくたびれた様子の純の姿があった。
さて、ここからは楽しい食事の始まりだ。
「2人ともお待ちどう様。」
「おっ!待ってました!流石ヒーロー盛り!これ見るとテンションの上がっちまうな!」
「お前はいつもBのヒーロー盛りだろう。たまには別のものも食べないとバランスが悪くなるぞ。」
「余計なお世話だっつーの!それより蒼太。それで足りんのか?」
「はい・・・僕、そんなに食べませんし、僕の為に地球の資源を無駄に使うなんて恐れ多くて出来ませんから。」
「ははぁ・・・ところであたしもヒーロー盛りにすればよかったかな。それくらいなら食べられそうだし。」
「マジかよ!一般人にこの量はキツイはずなんだけどなぁ。でもアリエルはそのくらいにしておけ。この後売店でデザートにアイス買うんだからな。」
「えっ!!ここにはそんな背徳的な楽しみがあるの。ちょっと異世界移住考えてもいいかも。」
「背徳的って・・・それに異世界移住決める理由が安すぎねぇか。あっちじゃ甘味とかなかったのか?」
「あるにはあるけど、貧乏なあたしには高級品でなかなか手が出なかったから。」
「うぅッ!!そうか・・・よし!デザートは俺の奢りだ!ついでにプリンもつけてやるぞ!」
「なんですと!!!ジュンさん!あなたは神ですか!!」
「・・・アリエル。君が食べ物に釣られて誘拐されないか心配でならない。」
こうして涙ぐむ純とテンションが上がるアリエルと思わずツッコミを入れるナナシ。
そんな賑やかな食事風景の片隅には独りで静かに豊かに食事をする蒼太の姿があった。
だがこの平和な光景に波乱を齎す集団がナナシ達もといアリエルの前にやってくる。
集団の人数は5人、1人は165cmくらいの黒の短髪に赤みがかった黒の瞳の少年。
1人は170cmくらいの黒髪、黒目の知的な美少年。
1人は168cmくらいの黒髪ポニーテールと切れ長の黒目のスレンダー美少女。
1人は150cmくらいの黒髪を三つ編みで後ろに纏めた、黒の大きな瞳のボイン(推定D)美少女。
最後は195cmくらいの刈り上げた黒髪に鋭い黒目、太い眉毛が如何にも厳つい、言い方を変えれば男らしい顔つきの筋肉質の漢。
この中のリーダー格と思われる大柄な男がナナシ達に声を掛けて来る。
「すまない、フレイム君。こちらの席は空いているかな?」
「えぇ、空いてますよ。光太郎さん。」
どうやら彼等は食事の席を探していたようで、ナナシ達の隣にある空いたテーブルに座りたいようだ。
大柄な男改め光太郎がナナシに一言断りを入れ、5人が席に着く。
彼等の姿を確認したアリエルがヒソヒソと純に話掛ける。
「ねぇ、ジュンさん。あの人達は・・・特にあの大柄で落ち着いた感じの素敵な男の人は誰?」
「アッ!やっぱりアリエルはああいう感じがタイプだったか。
彼等はヒーローチーム『エレメンタルズ』。まず、あの大きいのが鉄光太郎、俺が紹介しようとしていた男だ。
それから小さめの男が赤坂列人、頭良さそうなのが青葉総司、ポニテ少女が桃梨百香、三つ編み少女が白井百合だ。」
「へッ!!アカサカ・・・レット・・・ですって!!」
この瞬間、アリエルが咄嗟に純の影に隠れて、列人から見えない位置に陣取る。この奇行を流石におかしいと思った純は、訝しむような目でアリエルを見ながら理由を聞く。
「おい!いきなりどうした?なんか怖いものでも見つけたのか?」
「えぇ、あれがこの前ナナシ君に聞いたアカサカ=レットなら、あたし達は重大な危機に直面しているわ。」
アリエルはここに来る前にナナシから聞いたアカサカ=レットの話を思い出し、恐怖に震えていた。
何故なら、
「ねぇ、ジュンさん。あのケダモノは女性の身体情報を盗み見る変態だって話じゃない。そんな人間の視界に入るなんて悍ましい事、あたしには耐えられないわ。」
「おい、アリエル・・・何を吹き込まれたか知らんが初対面の人間にエライ言いようだな。」
「じゃあ、ナナシ君が嘘をついたっていうの!あの変態は男女問わず、身体にフィットする防具を買い揃えたそうじゃない!」
「・・・あぁ~~。その話聞いたんだ。そりゃ確かにそれだけ聞けば赤坂は変態だな。」
「でしょう!そうに決まっているわ。あのド変態はきっと女性の身体情報で妄想を膨らましていやらしい事を考えているのよ。
これだから男って生き物は・・・本当にみんな不潔だわ。」
「・・・そこまで言うか。たかが3サイズを知られるくらいで大袈裟な。」
「えっ!まさか!ジュンさんもカガリさんと同じ痴女だったなんて・・・やっぱり異世界は怖いところだわ。」
「おい!テメェ~~!誰が痴女だ!それからあのお姉ちゃん(笑)と一緒にするんじゃねぇ!終いにゃシバキ倒すぞ!コラ~~~ッ!!!」
始めは小声だった2人のヒソヒソ話がドンドンエスカレートしていき、それなりに大きな声になった所で周囲も彼女達の様子に気づく。
そして最初に声を掛けたのは、この話の元凶、赤坂列人である。
「姉御ともう1人の見慣れない子。一体何の話をしているんだ。」
「きゃぁ~~~~~~!!こっち見ないで~~~~~!!このチカ~~~~~~~~~~ン!!!!!!」
「グァ~~~ッ!!!!!!」
アリエルは近づいてきた列人に躊躇う事無くお手本のような目突きを叩き込む。
「この女~~!!いきなり何しやがる!!!」
「うわぁ~~、こりゃ痛そ~~・・・」
「ほぉ~、素晴らしい目突きね。列人のバカがのたうち回る姿で飯が美味いわ。」
「モモちゃん先輩、発言が外道ですwwww」
「百香・・・テメーは後で殺す・・・」
「・・・お前ら!!食事中は静かにしろ!!!」
こうして、アリエルのせいでカオスになったのにも関わらず、騒いでいた列人、百香、百合の3人に光太郎のゲンコツが落ちるのであった。
食事中は静かにしろ、と言う当たり前の事をきちんと叱る光太郎に一縷の希望を見るアリエルであった。
あ~あ~、やっぱりアリエルと列人が会って無事で済むわけがありませんでしたね。
そしてアリエルは常識人に飢えているみたいです。
次回、エレメンタルズとのお食事会をお送りします。




