04-15_ヒーローと通常任務
今回からヒーローの普段の仕事風景に触れていきたいと思います。
加えて、この世界の日本についても話していきたいと思います。
04-15_ヒーローと通常任務
「ア・・アリエルさん・・・今回の任務参加を希望する・・か・神崎蒼太です。
僕は・・・ゴミムシ以下の存在ですけど・・・アリエルさんやフレイム兄さんに迷惑を掛けない様に、が・頑張ります。
な・何卒・・・ご指導、ご鞭撻のほど、よ・よろしくお願いいたします。」
等と、アリエルに対して、蒼太がどもりながら就活をしたのは、医務室での純の検査が終わり演習場に戻った直後である。
今にも土下座せんばかりの勢いで頭を下げてくる最強の天才児の超卑屈な態度に、アリエルの顔面の痙攣が止まらない。
黙り込むアリエルの心中を察しながらも、これ以上放置すると蒼太がネガティブモードに入って面倒くさい事になると判断した井戸亜が助け舟を出す。
「アリエルさん、何か言ってやってくれ。そうしないと蒼太君が変な勘違いを起こしかねない。」
「・・・はい、ソウタ君、こちらこそ・・・よろしくね。」
井戸亜に肘で横腹を突かれた事で正気を取り戻したアリエルが声帯を全力で制御し何とか声を出す。
そんな永久氷壁の様なガチガチの雰囲気の中、ナナシが空気を無視して口を開く。
「よし、蒼太君。これで君のアナシス行きの許可を得る事が出来た。これから君は自分達はチーム、ヒーローズジャーニーの一員だ。」
「えっ・・・ありがとうございます。こんなバクテリア程度の価値しかない僕を受け入れてくれて。」
「蒼太君、謙遜は良くない。君は自分達と同じチームに選ばれたんだ。君には大間産天然クロマグロ(落札価格約3億円)くらいの価値があるぞ。」
「そんな!・・・僕にそんな高級魚と同じくらいの価値があるだなんて!!」
「ねぇ、ジュンさん。あれって褒めてるの?」
「言ってやるな。蒼太の卑屈レーダーに引っ掛からないギリギリで褒めてるんだから。」
「・・・人に食い物にされるだけの価値しかないって意味じゃない事を願うよ。」
こうして蒼太の扱いがいまいち分からないアリエルが黄昏るのを、生暖かい目で見守る純と痛烈な皮肉を漏らす井戸亜。
アリエルはこの瞬間、蒼太の扱いはナナシに任せる事を心に誓った。
ヒーローズジャーニーの次のメンバーも無事?に決まったところで、出発まで予定について話し合う事になった。
仕切るのは井戸亜である。
「さて、ここからは出発まで自由時間だがどうする?フレイムと蒼太君は通常任務を片付ける必要があるだろうが。」
「そうですね。せっかくですから怪人退治をアリエルに見てもらうと言うのはどうでしょう。」
「いいと思います・・・でも僕が戦う怪人は弱すぎるからきっと参考にならないですけど。」
「ちなみに、どんなのがあるんだ?」
「はい・・・純さん、これです。」
「なになに・・・首領級怪人ドラゴントゥース討伐に、怪人組織『黒狼』の壊滅。こりゃアリエルのいる場所じゃ出来ねぇな。被害自体は少ないから後回しでもいいんじゃねぇか。」
「ちなみに自分はこんな感じです。」
「うむ、難易度的には問題なさそうだね。では今回はフレイムの分から片づけるという事で。」
「了解」×3
「ちょっと!勝手に話を進めないでよ!怪人って何なの?」
ヒーロー達が勝手に話を進める中、彼等の話について行けないアリエルが抗議する。それに答えたのはナナシだ。
「これから自分達は普段やっている通常任務の一つ、怪人の討伐に向かう。
怪人とは端的に言えば邪神の手下だ。奴らは様々な方法で負のエネルギーを集め、自分達の力を蓄えようと画策している。」
「今回、向かうのは東京~福岡間の地下高速通路に現れた怪人の討伐だな。」
「えっと~、つまり街道に現れたモンスターを退治するの?」
「ははぁ、アナシス風に言うとそうなるね。」
「ちなみに・・・今回は狼の獣人型の怪人とその使い魔です。」
ここでこの22世紀の日本がどのようになっているか説明しておこう。
日本は地球の中でも最も怪人と邪神が出現する地域だ。現在、地表の大部分が人間の住めない領域となっている。
理由としては怪人との闘いによる被害、怪人による破壊活動、怪人や邪神の毒で汚染されていたりと様々だ。
そこで22世紀の日本人がどうやって暮らしているのかと言うとアルコロジーである。
アルコロジーとは狭い土地の中に巨大な建造物を立て、そこで生産、消費を完結させた未来型都市で、それにバリアを設置することで文明を維持している。
現在日本には北から札幌、青森、仙台、東京、名古屋、京都、岡山、福岡、鹿児島、沖縄と10個のアルコロジーが存在し、一か所当たり最大で約3000万人の人口が居住可能となっている。
ちなみにナナシ達がいる日本ヒーロー連合の総本山は京都にある。霊的なものが一番集中しているのが京都だと言うのが設置の理由である。
日本の人口はこの時点で1億程で一番人口の多い京都でも1500万人であるため、まだまだ十分な余裕があると言える。しかしそれは外敵つまり怪人がいなければの話である。
アルコロジーを一つでも破壊されれば当然人的被害は甚大なものとなるし、居住空間は狭くなるし、気軽に作れるものでもないので何としても死守する必要がある。
しかし怪人の力は強大な上にほとんどが人と同じ大きさなので、重火器や大量破壊兵器による掃討もいまいち効果が薄い上、人の生活圏内に侵入された場合には手の出しようがない。
そこで登場するのがヒーローである。
ヒーローの主な仕事は人の生活圏に近づいた怪人の退治である。
ナナシ達が今向かっているのは地下高速通路。各アルコロジーとの間を行き来する為に作られた、物資や人の輸送の為の列車や車両が地下を行き交う交通の要である。
ちなみに今の地上は怪人だらけの為、一般人の通行は不可能であるし、これは空や海も同様だ。
地下高速通路は一般人が都市間を移動できる唯一の手段であり、物資輸送の為の生命線なのである。
補足説明も済んだ所でナナシ達の様子に話を戻そう。
今、彼等は任務の状況を確認している所だ。やはり仕切るのは井戸亜である。
「これから現場に向かうわけだけど、装甲車の利用申請は済んでいるみたいだから早速向かおう。状況確認も移動しながらということで。」
「了解。」×3
「・・・」
そしてヒーロー達と状況が飲み込めず困惑するアリエルが車庫へと向かう。
アリエルは何も分からないまま、彼等について行き、何やら小さい部屋 (エレベータ)に入れられて、それから暫く待つと別の部屋についていた事にひどく驚いていた。
ナナシにエレベータの仕組みを聞かされた時のアリエルは狐に化かされたような気分だっただろう。
そんな彼女を微笑ましく思いながら井戸亜が車へと案内する。
「さあ、アリエルさん。今回はこの車で移動するよ。運転は僕がするから蒼太君が助手席で残りは後ろに頼む。
フレイム、車の中でのアリエルさんの面倒は任せたよ。」
こうして井戸亜に言われるがまま、全員が乗車を始める。
ちなみに座席の配置は運転席に井戸亜、助手席に蒼太、後ろの席に純、ナナシ、アリエルの順番である。
この配置の理由は、まず蒼太が知らない人間 (アリエル)の近くにいるとテンパるという事と、純の訓練(ナナシの近くでも器物破損をしない)の為で、アリエルの面倒は正直ついでである。
全員が車に乗ったところでアリエルからは異世界人らしい質問が飛び出す。
「あの~、車を引っ張る馬とかはどうするんですか?」
「あぁ、そういえばアナシスではまだ自走する車はなかったね。この車には引く動物は不要なんだよ。」
「えっ!!エェェェェェェエエエエエ~~~~~~~~ッ!!!!!」
「ちょっ!アリエル、耳元でうるさいぞ!!」
「だって!ジュンさん!!車が勝手に動くんだよ!!そんなのあり得ないよ!!」
「そうか、アナシスと地球では文明レベルに500年ほどの差があったな。もしよければ仕組みや構造の説明をするが。」
「その話は長くなるからやめろ。それより任務の話だ。」
「そうですね・・・では僕から説明します。」
「じゃあ、出発するよ。」
「はい、お願いします。」
「・・・あり得ない・・・ホントに走ってるよ・・・あわわわわぁぁ~~~~・・・」
こうして井戸亜が運転する車の中で、蒼太が任務の説明を始める。
自動車の存在に恐れおののくアリエルを置き去りにして。
なんか世紀末と近未来がハイブリッドされたような世界ですね。
そして文明の利器にビビりまくる異世界人アリエル。
次回、初の怪人戦をお送りする予定です。




