04-14_ヒーローと悪徳教祖
今回はナナシと純と蒼太の話です。
サブタイが今までの中でも最高に酷い部類ですね。
04-14_ヒーローと悪徳教祖
「異常なしですね。しかし相変わらずあなた達最強の10人はとんでもないですね。」
井戸亜の指示により、医務室で純の体調を見てもらった後に、医者に掛けられた言葉である。
まぁ、予想はしていた事なので特に何事もなくこの場を後にする。
アリエルの元に向かいながら、最初に話を切り出したのは純である。
「なぁ、フレイム。この後・・・アリエルと合流した後だけどどうする?」
「そうだな。まだアナシスに戻るまで時間があるからその間にこちらの用事を済ませておこうと思う。」
「具体的には?」
「まず貯めていた読書と通常任務の消化、それから後輩たちの様子の確認だな。」
「うわ~・・・結構ハードですね。大丈夫なんですか?」
「蒼太君、君にとっても他人事じゃないんだぞ。今回はおそらく君もアナシスに行くのだから。」
「えっ?」
フレイムの言葉に、蒼太は初めて聞きましたよ、といった風な呆気にとられた顔をする。
それを見た純が少し苛つきながら蒼太に詰め寄る。
「おい、蒼太~。なんで今までの話からテメェが行かないって思った。怒らねぇから答えてみぃ。」
「もうすでに怒ってるじゃないですか・・・あっ!すみません!僕みたいな羽虫が口答えしてすみません!」
「葉山、話が進まないから怒るのをやめてやれ。」
「あぁ、そうだな。蒼太、怒ってないから質問に答えてくれるか?」
ここで純が全神経を集中して何とか苛立ちを抑える。そして少し落ち着いた蒼太が口を開く。
「だって・・・僕がやった事って井戸亜さんとアリエルさんが手加減してくれた魔法を防いだだけですよ。
きっと・・・僕に気を使ってくれたんだと思うんですけど、それで選ばれても足手まといになるだけだと思いますし。」
「・・・」×2
「それに僕って物凄く弱いですし、通常任務だってヒーローなら誰でも倒せるような新人向けの怪人とたまに出て来る弱い邪神と戦うだけですし。」
「・・・」×2
蒼太の言葉にナナシと純は絶句する。まず井戸亜もアリエルも一切の手加減なしで魔法をぶっ放している事。
それから彼が戦っている通常任務の相手は、新人 (に)向け(ると間違いなく戦死するレベルの幹部級の)怪人である事。
それにたとえ弱い邪神でも普通のヒーローチームがダース単位で戦っても勝てない相手であるし、たまたま出て来てそこいらのヒーローに倒させるものでもない。
この大きな認識のズレに言葉を失った2人を見て、弱すぎる自分に呆れられたと思った蒼太は更にネガティブな言葉を発する。
「大体・・・僕がヒーローになれたのだって神崎家の人間だという事と姉さんが優秀だからって言う理由なんです。
これは・・・つい最近分かった事なんですけど、僕は10人の中でNo.4なのは不吉な数字を割り当てる為の数合わせなんです。
この間だって・・・ベテランのヒーローチーム『テンペスツ』の応援に行けって言われて、でも実際は怪人は虫の息で僕が手柄を取ったみたいになっちゃって。
あの時・・・悪い事をしたと思って『テンペスツ』の皆さんには一生懸命謝ったんですけど、なんか呆れられちゃったみたいで黙ってましたし。それから・・・ブツブツ・・・」
ちなみに最強の10人は純粋な強さと連合への貢献度によって順位が決まるので実力が無い者が入る可能性は皆無である。
そして『テンペスツ』はヒーローの中でも上位の実力者で蒼太が助けに行かないと間違いなく壊滅していたと言うほどの危機的状況だった。
彼等が黙っていたのは、自分達が苦戦していた相手を蒼太が1秒も掛けずに瞬殺した事に驚き、呆然としていたからである。
ネガティブスパイラルで地面にめり込むどころかブラジルまで行きそうな蒼太を放っておくわけにもいかない為、ナナシが引き攣る顔面の筋肉を必死で制御しながらフォローを入れる事にした。
「実はな、蒼太君。今回、君がこの任務の候補になった理由は君を鍛える為なんだ。」
「えっ?」
「おい!フレイム!そんな出まかせ言っていいのか!」
「葉山、少し耳を貸せ。」
「ひゃッ!!!」
ナナシのいきなりの発言に蒼太が驚きと疑問の声を上げる。
ここでナナシは蒼太に内緒で打ち合わせをするべく、動揺する純の耳元に顔を近づける。
純からすれば想い人の顔がいきなり自分の耳元に近づき、その吐息が耳にかかっている状態である。
この時、心拍数と呼吸が異常に上昇するがナナシにはストレスが原因だと思われている。
緊張する純を余所にナナシは手早く自分の思惑を語る。
「いいか、蒼太君がネガティブスパイラルに入った場合、そのネガティブ思考を否定しても逆効果だと篝さんが言っていた。
こういう場合、今の蒼太君が抱えているネガティブを解消する為に、別の仕事があると思わせるのが彼の正しい操縦法らしい。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「だから、お前は自分の言う事に適当に合わせて欲しい。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「了承と言う事でいいな。それじゃ始めるぞ。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
完全に使い物にならなくなった純を余所に、ナナシが篝に教わった対蒼太用交渉術を開始する。
「蒼太くん、今から自分が言う事をよく聞いて欲しい。」
「はい・・・お願いします。フレイム兄さん。」
「今回、自分達はアナシスと言う異世界に行き、そこで『名前ある者の神』という邪神を殲滅しに行く。
だが、自分とアリエルだけでは手が足りないし、アリエル自身は現地のガイド的な立ち位置だから直接戦闘能力を期待するのは酷だ。ここまではいいか。」
「はい・・・大丈夫です。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「そこでアリエルの護衛及び自分を援護する実力者が必要になってくる。
そこに抜擢されたのが君と葉山だ。」
「えっ・・・でもさっきも言ったと思いますが僕って弱いですし。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「君はそう思っているかも知れないが、鍛えれば話は別だ。
今回の任務は身体も頭も霊力もフルに活用しないと達成は困難だ。
そんな環境に身を置けば、一回り大きな自分になれると思わないか。」
「確かに・・・フレイム兄さんの言う通りだと思いますが。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「君はまだ若いし、今から鍛えていけばきっと素晴らしいヒーローになれると自分は確信している。
どうだろう。今回の任務、受けてみる気はないだろうか。」
「フレイム兄さん・・・ゾウリムシ以下の僕なんかの事をそこまで思ってくれているなんて。
フレイム兄さんは・・・お釈迦様か何かですか。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
「よし、今回の任務受けてくれるか。」
「はい・・・喜んで。」
「へぇ~・・・そうなのか・・・」
もはやどこかの新興宗教の勧誘か催眠商法である。
今のナナシを傍から見た場合、どう考えても何も知らない少年 (蒼太)を騙して危ない仕事をさせようとしている悪いあんちゃんである。
こうして、悪徳教祖ナナシと騙された気弱な信者蒼太、使い物にならない客引きの純と言うカオスな状況で次のアナシス行きのメンバーの最終候補が決定した。
井戸亜側に比べて温度差が酷いですね。
次回はこの世界の日本の設定について少し触れてみようと思います。




