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04-10_名も無き炎対破壊者

今回はナナシ対純の戦闘回です。

04-10_名も無き炎対破壊者


「・・・むごいな、純の姉さんが哀れ過ぎる。」


「フレイムさんって悪鬼羅刹か何かの生まれ変わりか。」


「・・・」


これはナナシと純の戦闘後に交わされた野次馬達の感想である。

肩で息をしながらその場に佇むナナシと仰向けになって倒れる純。

呆れと怒りが綯い交ぜになった表情のまま沈黙を保つアリエル。


何故こうなったかと言うと、少し時間を巻き戻す必要があるだろう。

純が防人をぶっ飛ばしてからナナシに決闘を申し込んだ直後まで遡ろう。


「さてと、そいじゃあ、始めようかねぇ~。」


「はい、お願いします。防人さん。」


「最高強度で頼むぜ。でないと全力でこの無愛想男をボコれねぇからな!!」


「おうよ!任せとかんね!」


「・・・」×3


ここで純に殴られた後、僅か10秒でしかも回復術無しで復活した防人が何事もなかったかのようにその場を仕切る。

その光景にアリエルは勿論、同僚であるはずの井戸亜と蒼太も唖然とする。その防人だが早速、彼の様子に変化が見られた。


「そいじゃあ、行こかね!アーちゃん!」


『了解じゃ。ウチに任せときぃ。大ちゃん。』


『変身!』


防人は自らの契約精霊『地球意志プラネットアース』と交信し、その姿を変貌させる。

眩く青白い光と共に現れたのは土色のスーツをベースに纏われた岩のフルプレートアーマー。その巌の如き異様はまさに大地そのもの。

この岩石で出来た身長約2.5mの大男こそが地球最強の防御力を誇る日本ヒーロー連合の砦、防人大地が変身した姿である。


その光景にアリエルが目を見開き、一般ヒーロー達が沸き立つ中、防人はその力の一端を披露する。


「そいじゃあ、闘技場を作るけん、観客はちょっとばかり下がるったい。『金剛壁(こんごうへき)』!!」


防人が術を発動させるとダイアモンドで形成された一辺が50mほどの闘技場とそれを覆うドーム状の壁と屋根が形成される。

ダイアモンドの壁と屋根は透明で外から中がしっかり見え、その上おまけとばかりにその周囲にアリーナ状に観客席まで作る始末。

この観客にとても優しい、ヒーローの力の無駄遣いにこの場にいる者全員が唖然とするが、


「う~む、流石アーちゃんたい。おいのイメージば完璧に仕上げる見事な仕事たい。」


『そうじゃろう、そうじゃろう。大ちゃん、もっと褒めてもいいんじゃよ。』


「おう、アーちゃんは強い上にめんこい、おいの最高のパートナーたい。」


『もう、大ちゃんってば。照れるじゃろが。』


「・・・・」


「・・・さぁ、アリエルさん、座ろうか。」


作った本人達はご満悦のようで、防人は自分の精霊である幼女型の地球意志プラネットアースことアーちゃんを褒め称えている。

アーちゃんも満更でも無い様で、上機嫌でクルクルと防人の周りを飛び回っているが、この光景は当然防人にしか分からない。

よって他のヒーローにはなんとなく、精霊と話しているんだろうな、と推測が出来るのだが、アリエルにとっては頭が愉快な岩の巨人にしか見えない。

そんなアリエルの心境を察してか、井戸亜が達観したような声で席を勧める。


そして待つこと暫し、観客が全員席についた所でナナシと純の決闘が始まる。


「さぁて、今日こそテメェの顔面に俺の拳をめり込ませてやるぜ!

行くぞ!シヴァ!『変身』!!」


「タイラント、行くぞ。『変身グラップラーフォーム』。」


純は咆哮を上げながら、ナナシはそれとは対称的に静かに、お互いの精霊と交信しその姿を変貌させる。

純が真っ青な光に包まれると同時に現したその姿は全身青をベースにしたスーツと白の手袋とブーツ。頭部全体を保護するマスクは顔の部分が白く、長い青髪を生やしている。

この姿のコンセプトは純の圧倒的な攻撃を阻害しない事、その攻撃力から純自身の身体を保護する事、ただそれだけである。

その顔を保護するマスクは無機質なようで女性的な美しさがあり、そのしなやかで引き締まった身体にフィットしたスーツはどこか色気を感じさせる。

一方ナナシは真紅のプロテクターに殴る事、蹴る事に特化した巨大なガントレットとグリーブ。

肘と膝と耳の部分には炎を象った装飾、目の部分は真紅より更に深い赤。

接近戦闘に特化した『名無しのフレイム』グラップラーフォームへとその姿を変える。


2人は変身を済ませた所で早速臨戦態勢に入る。彼我の距離は10m、既にお互いの射程圏内、先に動いたのは純だ。


『トリシューラ』


純はフレイムとの距離を一気に詰め、その右手を振るう。その強大な霊力を纏った破壊の拳はまさに破壊神シヴァが持つトリシューラ(三叉の槍)である。

その一撃をナナシは寸での所で躱すがその風圧だけで後ずさる。


「くっ!相変わらず、恐ろしい威力だな。『紅蓮連撃』!!」


「遅ぇんだよ!!『マハー・トリシューラ』!!」


攻撃をしのいだフレイムがすかさず灼熱の連撃で反撃するが、純も先ほどの万物を貫く破壊の拳の連撃で応戦。

赤と青がぶつかり合ったその結果、


「くッ!!!!」


「アッチィ!!!!」


ズドン!という激しい破壊音と共にフレイムが壁際まで吹き飛ばされるのに対して、純は少し熱そうに拳を振るだけ。

フレイムが吹き飛ばされる。その光景に野次馬の一般ヒーローは沸き立つ。


「スゲー!!流石は純の姉御!あのフレイムさんをぶっ飛ばしたぞ!」


「でも純さんも拳を火傷したみたいだ。」


「・・・・」


その一方でアリエルは言葉を失っていた。アリエルの中でフレイムは最強の存在なのである。

そのフレイムが純粋な殴り合いで力負けした。彼女にとっては驚天動地の出来事である。

呆然としたアリエルの様子を察した井戸亜が彼女に言葉をかける。


「アリエルさん、よく見ておくといい。これが日本ヒーロー連合最強の格闘士2人の戦いだ。

そして彼女が日本最強の攻撃力を持つヒーロー『デストロイヤー(破壊者)』葉山純。君と一緒に邪神と戦う候補の一人だ。」


「・・・はい・・・」


アリエルはそう答えるのが精一杯だった。2人のヒーローは次元が違い過ぎた。

2人は今もアリエルの目では負えないほどのスピードで殴りあい、アリエルの結界では一瞬すら持たないであろう炎と破壊の嵐をまき散らしている。


「ハハハハハァァァアァアアアアアア!!!どうした!!その程度か!!!俺をコケにした落とし前!!!ここできっちりつけてもらうぜ!!!『マハー・パラシュ』!!」


「ちっ!!『紅蓮煉獄破(ぐれんれんごくは)』!!」


殴り合いが進むにつれ、テンションが上がって来た純がその両手足をパラシュ(斧)に変えて怒涛の斬撃を繰り出す。

それに対してフレイムは今までアリエルに見せた事がないような極大の炎を手足に纏い応戦。

しかし、純の斬撃を受けたフレイムの両手足のガントレットとグリーブは紙切れの様に切り裂かれる。


「くっ!今回はいつも以上に手ごわい。流石『デストロイヤー』だ。」


「・・・うるせぇ!こっちだってテメェの炎で手足が火傷だらけなんだよ!ここいらで勝負をつけさせてもらうぜ。」


2人は殴り合いを継続しながら、少しずつ霊力を高めていく。(この時、純が褒められて少し照れているのは内緒。)

その光景を観戦しながら今まで黙っていた蒼太が思わず言葉を漏らす。


「あの~・・・井戸亜さん。なんか2人の周りの景色が歪んでませんか。」


「言われてみればそうだね・・・これは!」


「えぇ・・・フレイム兄さん・・・容赦ないです。」


「えっ!!どういう事?」


蒼太の言葉に井戸亜が驚きの声を漏らし、アリエルは理由が分からず疑問の声を上げる。

そんな中、フレイムと純の決闘はいよいよ決着へと近づく。


「くたばれ!フレイムーーーーーッ!!『マハー・ヴァジュラ』!!!!」


紅蓮灰燼衝(ぐれんかいじんしょう)


強大な霊力を身に纏い、その右拳をヴァジュラ(金剛杵)へと変えて振り抜く純と、超極大の炎を右手に纏い放つフレイムがぶつかり合う。

そこに生まれたのは轟音、爆音、破壊音。互いの暴力が空間そのものを爆発させ、その余波の音だけで闘技場に巨大なクレーターを生み出す。


そして・・・今度吹き飛んだのは純の方である。

その結果にこの場にいる者全て(蒼太と井戸亜は除く)は騒然とする。

今まで、圧倒的な破壊力でフレイムを押していた純が力負けした事に驚きを隠せないようだ。

それはアリエルも同じ様で思わず疑問を口にする。


「えっと・・・なんでジュンさんが負けたの?今まであんなに優勢だったのに。」


それに対して答えるのは蒼太である。


「アリエルさん・・・フレイム兄さんが強くなったんじゃありません。純さんが弱らされたんです。」


「へっ???」


「今、2人が戦っている空間って密閉されているでしょう。そんな場所で火を焚き続けたらどうなると思います。」


「・・・」


「おそらく闘技場の中は数百度を超える高温になっている上に極度に酸素が少ない状態になっているはずです。

先ほどからフレイム兄さんは炎でわざと酸素を消費していたみたいですし。

炎耐性があり、酸素の低い状態になれているフレイム兄さんは平気でしょうが、激しい運動で体力が落ち、血中の酸素を消耗した純さんには厳しかったのでしょう。」


「・・・・鬼ね。」


フレイムが勝つ為に行った徹底的な戦略に唖然とするアリエル。

だが本当の地獄はこれからである。何故なら純はまだ壁に寄りかかりながら立っている。

つまり戦闘は継続中だからである。


「流石だ、『デストロイヤー』。ではトドメと行かせてもらうぞ!『紅蓮拳』!!」


「ぐはァッ!!!」


戦意を失わずフラフラになりながら、なおも倒れない純にフレイムは敬意をこめて渾身の拳を放つ。

そして情け容赦など微塵も感じさせない全力のアッパーカットが純の顎を捉える。

この瞬間、純の身体は宙に舞い天井へと突き刺さり、そのまま落下。地面に仰向けに倒れ、意識を失う。


この光景を見たこの場の全員はいとも容易く行われたえげつない行為に背筋が凍り付く。

そして時間は冒頭へと戻る。


「ヒデェー・・・あの人は鬼だ、悪魔だ。この世の邪悪の化身だ。」


「ねぇわ。マジでねぇわ~・・・あの人本当にヒーローなのか。」


「いいか、絶対にあのひとには逆らうな。純さんと同じ目に遭うぞ。」


「・・・・ナナシ君・・・正座でお説教決定よ・・・・」


「・・・」×3


悪夢の光景に戦慄する一般ヒーロー達を余所に、ナナシを締め上げる事を決意したアリエル。

その後、本当にナナシに正座をさせ、容赦ない罵声を浴びせるアリエル。その風景にさらなる戦慄を覚えるヒーロー達。

この瞬間、アリエルはこの場のヒーロー全員に尊敬の念をもって接される事になった。

そして、次の日にはアリエルちゃん最強伝説が日本ヒーロー連合全体へと広まるのであった。

う~ん、これは酷い。純の姉御は本当に不憫です。

最強のヒーロー同士の戦いを見たアリエルは何を思うのか。

次回、アリエルの結論をお送りします。

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