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04-09_ヒーローと乙女心クラッシャー

今回は再びナナシと純が接触します。

04-09_ヒーローと乙女心クラッシャー


「それでジュンさん。そのデンワ?の要件は何だったの?」


「あぁ。井戸亜って奴があんたに会いたがっている。」


井戸亜からの電話を受け取った純とアリエルに通話内容を説明する。


「えっ!イトアさんが?一体どんな用事だろう?」


「なんだ、知り合いか。あの野郎演習場に来いとしか言わなかったからな。」


「・・・イトアさんって絶対にモテないよね。」


「あぁ、あの人の恋人は研究だから。」


アリエルの正直な感想に苦笑いで答える純。

2人はわけも分からないまま、演習場へと足を進めるのであった。



またまた場面は変わって、先に演習場についていたナナシと井戸亜はというと、


「・・・また派手にやりましたね。」


「蒼太君・・・毎回、演習場を南極に変えるのは自重してくれないかな。」


「すみません!すみません!!僕みたいな蛆虫が作った氷のせいで皆様のお邪魔をして本当にすみません!」


「おいおい!おまんら。事情も聞かんで蒼太どんを責めんと。これはおいの訓練に付き合ってもらった結果たい。」


ナナシと井戸亜の目にまず飛び込んできたのは氷漬けになった演習場とそこに佇む2人の男。

1人は小柄で痩せた、青みがかった黒の長髪と目元を隠すほど長い前髪の少年、神崎蒼太。

もう1人は対称的に大柄で白髪を茶色に染めた短髪、筋骨隆々の身体に、厳つい中に人の良さそうな笑顔を浮かべた豪快そうな50代半ばくらいの男、防人大地である。


どうやらこの状況は蒼太と防人が作ったらしい。

日本最強の10人同士だと訓練をしただけでこの有様。野次馬をしていた一般ヒーローが隅っこのほうで震えているのがなんとも哀愁を誘う光景である。

この日本にいきなり召喚された南極の風景の中、話を切り出したのはナナシである。


「そういう事ですか。蒼太君、こちらの早合点で責める様な事を言ってすまなかった。この氷だが消しても構わないか。」


「はい・・・僕みたいなナメクジにそんなに気を使ってもらって恐縮です。氷については消してもらって大丈夫です。」


「蒼太君・・・その卑屈ぶり、どうにかならないのかい。」


「ハハハァッ、井戸亜どん。そう言ってやらんと。蒼太どんは人よりちょっと謙虚なだけたい。」


「あなたはおおらか過ぎなんです。この子はもっと自分の実力に見合った自信と態度を持つべきです。」


「あの・・・もしかして僕のせいで言い争っていますか?やっぱり羽虫以下の価値しかない僕がいけないんですね。」


「おいおい!蒼太どんも落ち着かんね。だ~れもおまんが悪いなんて言っとらんけんね。」


「・・・」


蒼太の卑屈さに物申す井戸亜とそれを笑いながら窘める防人。そんな中淡々と氷を溶かし演習場を使える状態にするナナシ。

日本最強のヒーロー4人が彼等にとっては和やかな遣り取りをする事暫し、ナナシが氷を溶かしたところで新しい客がやって来る。


「お~す!井戸亜さん。アリエル連れてきたぞ。」


そこにはなんとも気怠そうに手を振る純と横を大人しくついて来るアリエルの姿があった。


「あぁ、ちょうどいいところに来た。葉山、アリエルさん、こっちだ!」


「えっと~・・・井戸亜さん。あの緑髪の子はどなたですか?」


「緑髪・・・ホントたい、珍しか色やね。外国の人かね。」


「いえ、アリエルは異世界人です。」


「えッ!!!」×2


「・・・はぁ、2人共、順を追って説明するから。それよりまずは自己紹介だ。」


アリエルの素性をいきなり聞かされて驚く2人に対して、井戸亜はため息をつきながら話を進める。

まずは合流してアリエルへの紹介と事情の説明からだ。


「アリエルさん、まずは紹介するよ。この小さい方が今回の候補の1人、神崎蒼太君。

それからデカい方がウチの防衛隊長の防人大地さんだ。」


「えっと・・・初めまして・・・神崎蒼太です。」


「嬢ちゃん、初めまして!おいが防人大地たい。よろしくたい。」


「はい、アリエル=ユーリアスです。こちらこそよろしくお願いします。」


今回初めましてのアリエルと蒼太と防人がそれぞれ挨拶を済ませ、井戸亜が彼等に今回の目的を説明する。

そんな中、


「チョッ!!なんでここにフレイムがいるんだよ!!」


ナナシがいきなり現れた事に、純が顔を真っ赤にしながら抗議し、それにナナシは淡々と受け答える。


「自分は現在、アリエルと一緒に任務にあたっている。彼女と合流するのは当然だろう。」


「そりゃ、確かにテメェとアリエルが一緒に仕事しているのは聞いたけどよ。やっぱ・・・あれか!テメェは俺より蒼太の方がいいのか?」


この会話から純がアリエルからある程度事情を聞いている事を察したナナシがその質問に応じる。


「そうだな。現状では蒼太君の方が適任だと考えている。その事はお前も分かっていると思うが。」


「くっ!確かにそうだが、もうちょっと言い方ってもんはねぇのかよ!!」


だがその直球過ぎる言い方に流石の純も顔を真っ赤にしながら抗議をする。

だがこの乙女心を全く解さない鈍感男は更にズケズケとした物言いで追い打ちを掛ける。


「だが、お前は自分と同じ接近戦闘型だし、お互いの連携経験も少ない。

その上お前は自分の事を良く思っていないだろう。そんな者同士が無理に組んでもいいことはない。」


「ハァ・・・・」


ナナシの言葉に場の空気が凍り付く。ここにいる者全員が純の想いに気づいている。

にもかかわらず本人はそれに気づかず、あまつさえ反対の認識をし、それを口にした。

自分の想いが全く理解されていない事に愕然とし声を上げる純に対して、乙女心ブレイカーナナシがトドメを刺しにかかる。


「まさか気づいていなかったと思ったのか。いつも会うたびに説教をする男など普通の人間ならいい感情を持つわけがない。

お前は根が真っ直ぐだから言われた事はちゃんと受け止めているだろうが、それでも感情的な部分はどうにもならないのが人間と言うものだ。

自分だって同い年の異性に口うるさくあれこれ言われたらうんざりすると思う。だがそこは任務だから割り切ってほしい。」


(プルプル!!)


「・・・・」×4


ナナシの的外れな認識に肩を震わせる純と、その様子に言葉を失う残りの4人。


ここで少しナナシの認識に疑問を持った方もいるかも知れないので説明しておこう。

ナナシは相手の心音や呼吸音、脈拍等からその心理状態を極めて高い精度で推測する特殊技能を持っている。

にもかかわらず純に関する事については完全に真逆の推測をしている。これは何故か。

ここで皆様に誤解しないでもらいたい。ナナシがやっているのはあくまでも推測(・・)。つまり自分の常識の外の事については分からないのである。

ナナシの常識の中に自分が女性に好意を持たれると言うものは微塵も存在しない。故に推測も出来ない。

好意を持った相手に対して鼓動が高まったり、呼吸が早くなるのを聞いても、ストレスや怒りでそうなっているとしか思わない。


この世で最も落とすのが難しい相手、それは高嶺の花などではない。自分が好かれている事を認識できない人間である。


そんな難易度SSSクラスの無愛想男が純の乙女心に死体蹴りを敢行する。


「先ほどの様子からアリエルとはうまくいっている様で、それで自分で守りたいと思ったのだろう。

だが無理に嫌いな男と一緒に行動してストレスをためるよりかは蒼太君に任せた方がお互いの「ストーップ!!!」」


流石に聞いていられなくなったアリエルがナナシの発言を止める。

その事にナナシが困惑しながら周りを見回すと、何故か四つん這いになってこの世の終わりとばかりに絶望する純と、今までにないくらいの鬼の形相で睨みつけて来るアリエル。

それから生気が完全に抜け落ちた目をした井戸亜と蒼太、最後に呆れたような表情で苦笑いを浮かべる防人の姿があった。

ナナシはこの中で一番まともに話せそうな防人に声を掛ける。


「すみません、防人さん。みんなの様子がおかしいのですが、自分は何か拙い事を言いましたか?」


「おいおい!フレイムどん。これはおいでもフォローしきれんったい。」


「いえ、その理由を伺いたいのです。」


「そうさなぁ、純の嬢ちゃんはおまんの事が「言うなァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」グバァアアアアアア!!!!!」


ここでデリカシーと言うものを感じさせないストレートな言葉で、乙女心を暴露しようとする防人の腹に純の鉄拳が炸裂する。

防人はそのまま絶叫と共に100m先にある演習場の壁へと叩きつけられ、人型のスタンプを打つ事になる。

それを見て、今まで風景と一体化していた一般ヒーロー達がざわめき始める。


「おい、防人さんを一撃で吹っ飛ばしたぞ。」


「なんなんだよ、あの威力。変身もせずに人を100m以上飛ばす人間なんて初めて見たぞ。」


「しかも飛んだのはただの人じゃねぇ!トラックに轢かれてもトラック側が大破するような人外だぞ!」


「これが接近攻撃力最強のヒーロー『デストロイヤー』の力だって言うのか・・・」


そのざわめきが少しずつ大きくなり、場は騒然とする。ちなみに防人を心配する声は一切聞こえない。無事だと分かっている人間を心配する者などヒーローには存在しない。

そんな騒がしい空気を意に介さず、純はナナシを指差しながら怒鳴りつける。


「フレイムーーーー!!テメェーーー!!よくも俺をここまでコケにしてくれたなァアア!!

今の発言の落とし前つけさせてもらうからなァアアア!!!!今すぐ勝負だァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!ゴラァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


そんな怒り狂い、咆哮を上げる純に対して、ナナシは無表情な顔をほんの少しだけ緩ませながら応じる。


「それでこそ、葉山純だ。こちらも全力で挑ませてもらおう。」


久しぶりに全力で戦える予感に僅かに心が踊るナナシ。なんだかんだでこの男も戦闘狂なのである。

そしてそんな彼、彼女を余所に黄昏る者達がいた。


「あの・・・井戸亜さん・・これどうしましょうか?」


「・・・蒼太君。すまないが防人さんに回復術をかけてくれ。あの人に壁を作ってもらわないととんでもない被害が出そうだ。」


「・・・・はい、分かりました。」


「ナナシ君・・・あとでお説教だから・・・覚悟しておきなさい・・・」


「・・・」×2


一般人であるはずのアリエルの怒気に震え上がる最強のヒーロー2人。

井戸亜と蒼太はこれ以上被害が拡大しない為にも、さっさと防人を起こして決闘の場を整えるべく動くのであった。

そして今回だけはナナシがボコられる事を願う2人であった。

うわぁ~、流石に純の姉御が哀れでなりません。果たして純の想いが報われる時は来るのでしょうか。

それから防人さんを方言キャラにしてみましたが難しいですね。どうしても色々な場所の言葉が混じってしまいます。一応九州の言葉が中心ですが使い方を間違えていたらすみません。

次回、ナナシ対純をお送りする予定です。

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