04-08_ヒーローと女の友情
今回はアリエルと純の話がメインです。
04-08_ヒーローと女の友情
「被害区画の報告、ありがとうございます。業者の手配はこちらで行いますのでフレイムさんはアリエルさんと合流して下さい。」
ここは司令官室。これは純が破壊した廊下の被害報告を終えたナナシに露木がかけた一言である。
この遣り取りはナナシと純が遭遇するたびに起こっているようで、露木は少し疲れた表情をしている。そんな露木に全く事情が分かっていないナナシが無表情で露木に提案する。
「露木さん、心中察します。もし宜しければ葉山には自分からきつく言っておきますが。」
「・・・いえ、こちらで注意しておきますので結構です。それよりあなたは葉山さんに出来るだけ優しく接してあげて下さい。」
「んっ?それは構いませんが、ミスを注意してあげないと本人の為にならないのでは?」
「・・・はぁ、葉山さんが哀れでなりません。」
「???」
「・・・」×2
本当に何も分かっていないナナシの様子に露木のため息が止まらない。ナナシに怒られでもしたらきっと純は暫く落ち込んで使い物にならなくなるだろう。
この場にいる露木、龍堂、井戸亜の3人が肩を落とす中、困惑の表情を浮かべるナナシ。ここで僅かな沈黙を挟み、場の空気を変えるべく話を切り出したのは井戸亜である。
「さて、フレイム。アリエルさんの所には僕も一緒に行くよ。ちょっと彼女に用事が出来たからね。」
「そうですか。そのアリエルですがおそらく葉山と一緒にいます。アイツが今どこにいるか電話で確認しますので少しお待ちください。」
「いや、フレイム。僕が連絡しよう・・・(あのゴリラ、フレイムからの着信なんてあったら、絶対に携帯を握り潰すからね。)」
「それは助かります。アイツに電話をかけても何故かいつも繋がらないので。」
「・・はぁ~・・・そうなのか。(だろうね。携帯の買い替え代金も馬鹿にならないからやめてもらいたいものだ。)」
ナナシと純の遣り取りに内心ウンザリした気分で井戸亜は携帯をかける。
「こちら井戸亜だ。アリエルさんはそちらにいるか・・・そうか、今から合流したい。演習場で待っていてくれ。」
本当に用件だけ言って素早く電話を切る。その間わずか10秒。この男、絶対に女性にモテないタイプである。その電話の遣り取りを聞いた女性にモテないタイプのはずなのに何故かモテる男ナナシが井戸亜に問いかける。
「井戸亜さん。どうして演習場で待ち合わせをしたのですか?直接会った方が早いと思いますが。」
「あぁ、君達はどうせこの後勝負するのだろう。だったらさっさと済ませた方がいい。
今の時間なら演習場に防人さんもいるし、変身しての戦闘も可能だろう。」
「なるほど、お気遣い感謝します。」
「・・・言っておくけど、超変身は無しだからな。」
本当はナナシと純が演習場以外の所で会った場合被害が馬鹿にならないから、とはなかなか言えない井戸亜であった。(主に純への配慮)
一方ヒーロー連合の食堂、電話を受け取った純とアリエルはというと。
「ジュンさん、どうしたの?急に独り言なんか話して?もしかして精霊と。」
「いや、電話だ。ってあんたの国って携帯もなかったりするのか?」
「えぇ、あたしの国、というか世界だけど。」
「はぁ!世界?まさか別の世界から来たとか言わねぇだろうな。」
アリエルの返答に素っ頓狂な声を上げる純。
その反応を見たアリエルは少しバツが悪そうな表情を浮かべる。
「あっ!そういえばその話、ジュンさんにしてなかったね。」
「ちょっと待て・・・今落ち着くから・・・」
ここで純はタップリ間をおいて、深呼吸をした後に、努めて冷静な声でアリエルに質問をする。
「なぁ、アリエル。あんた異世界人だったりするのか?」
「うん、そうだよ。」
「・・・・そうか、じゃあもう一つ質問だ。フレイムが今まで任務で出かけていたのは異世界か?」
「うん、あたしの住んでる世界、アナシスにだよ。」
「・・・・」
質問に対して、普通なら考えられない返事を返すアリエルに純の思考は暫しフリーズする。
それから少し時間をかけて、何とか頭が回るようになった所で更に質問を重ねる。
「アリエル、あんたがここにいるってことはフレイムはまた異世界に行くってことか?」
「うん、今回は移動の為に一回チキュウに寄っただけ。明日の朝一番には出発する予定だよ。」
「なぁ・・・それって俺もついて行く事は出来ないか。」
純の言葉にアリエルは少し考えこみ、若干困った表情で返事をする。
「う~ん、実はその事なんだけど、今候補としてジュンさんとソウタ君が上がっているんだ。
ただ、ジュンさんには悪いんだけど、今のままだとソウタ君になりそうなの。」
「なっ!『ブルーゲイル』!あの天才児も候補なのか!」
「ブルーゲイル?」
「蒼太のヒーロー名だ。確かにあの子とフレイムは相性がいいからな。それに引き換え俺はフレイムと相性最悪だから。能力は被るし、テンパって連携なんて出来たもんじゃねえし・・・」
異世界行きの候補として蒼太がいる事に頭を抱える純。それに対してアリエルは思わず笑みが零れる。
「凄いね、ジュンさんって。」
「はぁ!何言ってんだ!俺じゃダメだって話をしてんだぞ!」
アリエルの言葉に思わず声を荒げる純だが、それにアリエルが笑みを深めながら答える。
「ちなみに最終決定権はあたしにあるから、お友達のよしみでジュンさんにする事も出来るけど。」
「はぁ!ふざけてんのか!戦場に私情を持ち込むんじゃねぇ!次ふざけた事抜かしたらテメェとは絶交だからな!!」
怒りを顕わにした純のこの言葉にアリエルは、
「ははぁ、やっぱりそうだ。ジュンさんは真っ直ぐで一途で、とっても素敵な人だ。」
込み上げてくる笑いを抑える事が出来なくなった。それを聞いた純は顔を真っ赤にしながらますます声を荒げる。
「おい!テメェ!なに頭の沸いた事言ってやがんだ!こっちは真面目に話してるってのによぉ!」
「あぁ、ゴメンゴメン。勿論命がけのお仕事だからね。私情を挟む気はないよ。
でも今の会話で確信した。私情抜きにしてジュンさんにならあたしの背中を任せれるって。」
「はぁ~、何でそうなるんだよ。わけ分かんねぇよ・・・」
アリエルの言葉に少し照れたような表情でそっぽを向く純。そんな純に対してアリエルは今しがた抱いた思いを口にする。
「ジュンさんはナナシ君の事が好きで一緒に仕事がしたい。でも自分の能力とソウタ君の能力を比較した場合、自分が不利だと思った。
ナナシ君と仕事をする方法として、最も確実なのは最終決定権を持つあたしに自分を売り込む事。
あたしは何も知らないのだから自分を大きく見せたり、ソウタ君を低く見せたりすることも出来なくはない。
でもジュンさんはそれをしなかった。どうしてかな?」
「あのな~、そんな事してもすぐにバレるだろうが。
それにそんなウソみたいな事を言って権利を手に入れても碌な結果にはならないだろう。
そして何より、それをやっちまうとあんたやフレイム、そして自分自身に嘘をつくことになる。
そんな事、俺のプライドが許さねぇ。」
「うん、ジュンさんならそう言ってくると思ったよ。やっぱりジュンさんは真っ直ぐで一途で男前なとっても素敵な人。」
「あのな~、俺は女だァ!男前ってなんだよ!」
笑顔で語るアリエルに声を荒げて反論する純。そんな純に対して、アリエルはおもむろに右手を差し出しながら言葉を紡ぐ。
「ジュンさん。これから私情抜きでメンバーを選ぶけど、どっちを選んでもあたし達は友達だからね。」
「・・・当然だろう。さっきも言ったけど、私情なんか挟みやがったら絶交してやるからな。」
返事と共にアリエルの右手を握り返す純。こうして女2人の友情はさらに深まるのであった。
純の姉御は本当に男前です。これが一部の人達に人気がある理由ですね。
次回、そんな姉御とナナシが再び接触します。




