04-05_ヒーローが語る天才と破壊魔
今回はナナシの中で蒼太と純がどう映っているか、と言う話です。
04-05_ヒーローが語る天才と破壊魔
「さて、蒼太君と葉山。どちらから会いに行こうか。」
「あたしは2人の事を知らないから、どんな人か教えてほしいんだけど。」
これから新しい仲間になるであろう神崎蒼太と葉山純について思案を巡らせるナナシ。
そんなナナシに対して、2人の情報開示を要求するアリエル。
「そうだな。まずは蒼太君からだな。
彼は日本ヒーロー連合のNo.4で風と氷を使う万能の術師だ。
彼の術は威力、正確さ、速度、全てに優れており、その応用力はヒーローでも1番だと言ってもいい。どんな局面でも対応できる優れた戦士だ。」
「なるほど、ナナシ君がそう言うなら相当強いんだよね。ちなみに性格面は?」
「基本的にいい子で全体の和を大事にする性格だ。
ただ自分の事を過小評価する傾向があるのが玉に瑕だがな。」
「ふ~ん、話を聞く限りいい子そうね。ちなみにもう1人のハヤマジュンさんは?」
アリエルがこの質問をした瞬間、ナナシは露骨に嫌そうな顔をする。
そのナナシがする初めての反応にアリエルは少しためらいながら質問を続ける。
「えっと・・・もしかしてヤバい人だったりするの?」
「あぁ、この日本ヒーロー連合一の問題児。
『戦闘狂』『破壊魔』『歩く厄災』『1人アルマゲドン』『アンゴルモアの生まれ変わり』数々の悪名を持つ女。
アイツの至る所で破壊をまき散らしては周りに迷惑をかけている。アイツが起こす器物破損の被害総額は年間10億だと言われている。
そのくせ、何故か一部の人間に人気があり、結果的に治安維持に一役買っているから質が悪い。」
「うわぁ~~!もうこの時点でソウタ君一択なんだけど、一応全部聞かせて。」
「アイツの戦闘スタイルは接近でのステゴロ。
破壊力だけで言えば自分より遥かに上だ。おそらく接近格闘のみの戦いなら世界一はアイツだろう。自分もアイツとやり合う時はあのバカ力に手を焼かされる。
大体は技でいなして返り討ちにするのだが、アイツに捕まってしまったら一撃で終わるからいつもヒヤヒヤしている。」
「なるほど、ナナシ君以上の近接戦闘能力か。でもナナシ君だけでも戦力過剰気味なのにそれ以上の破壊力って必要なのかな?
正直、遠距離戦力や補助の方が重要だよね。」
「そうなるといよいよ蒼太君一択だな。」
2人の情報を聞いて、アリエルの心の天秤は100%蒼太に傾くが、一応会わないと決められないので、そのまま2人を探す事にした。
だが運が悪かったのか、今の2人の会話を聞いている者がいた。
「おい!フレイム!陰でコソコソと人の悪口とはいい度胸だな!アァァァ~~~ッッ!!!」
ナナシとアリエルが歩いていた廊下の曲がり角から現れたのは、少しウェーブの入った黒のショートボブヘアに黒の瞳、長身のスレンダーな女性、葉山純である。
どうやら彼女に今までの会話を聞かれていたようだ。純の肩はプルプルと震え、感情が昂った声は若干掠れていた。
「葉山、今言った事は全て事実だろう。確かに本人がいない所でこういう事を話すのはマナー違反だが、お前の説明をしようと思ったらどうしてもこうなってしまう。」
「テメェ~って奴は~ッ!俺の前でそういう事を言うか!俺だって一応女なんだぞ!」
「だったらもう少し破壊行動を自重しろ。今だってそうやって地団駄を踏むから床にヒビが入っているじゃないか。」
顔を真っ赤にしながらドンドンと足を踏み鳴らし、床を踏み抜きそうになっている純にナナシの無情なツッコミが入る。
そのツッコミが火に油を注いだようで、純は更に顔を真っ赤にして叫ぶ。
「うるさい!うるさい!うるさい!俺だって好きで物を壊してるわけじゃねえんだよ!」
「なら力のコントロールをする訓練を一緒にしよう、といつも言っているのにお前は逃げるだろう。」
「うるさ~~~い!!テメェと一緒だと訓練にならねえんだよ!!そんくらい分かれよ!!!」
「いや、全く意味が分からないのだが。それよりどうせ今回も勝負を挑みに来たのだろう。ここでやるか?それとも防人さんにお願いして全力で戦える場を作ってもらってからにするか?」
「・・・クソ~~ッ!!!防人さんに頼んでくる。今度こそテメェに勝って、絶対に言う事聞かせてやるんだからな~~~~ッ!!」
そう捨て台詞を吐きながら、顔を茹でダコの様に真っ赤にしながら、涙目でその場を後にする純。
床にヒビを生やしながら走り去っていく純にナナシは思わずため息をつく。
「はぁ~、また修繕業者に依頼を出さないといけないな。後で露木さんに報告するか。」
「ねぇ、ハヤマさんっていっつもあんな感じなの?」
「あぁ、早速床を一面修繕だ。」
「・・・あの反応は・・・ナナシ君!悪いけどちょっとハヤマさんの様子を見て来る。しばらく待ってて。」
「おい!アリエル・・・行ってしまったか・・・」
純を追いかけて走り出したアリエルに対して、ナナシの制止は無情にも届かず、その右手は空を切る。
それから暫くの静寂の後、
「・・・さて、取り敢えず床の修繕依頼を済ませるか。」
すぐにやるべき事を見つけ、頭を切り替える。実に合理的な動きをするナナシだった。
あちゃ~~、よりによって乙女の純にこの話を聞かれましたか~。
でもアリエルは純に何か感じたようですね。
次回、純を追ったアリエルの話です。
裏話
ナナシが普段他人を呼ぶ時は『君』もしくは『あなた』なのですが、純を呼ぶ時だけ『お前』になっています。
これはナナシが純のことを対等の戦士だと認識しているから、という感じですね。
実はこれって、純に対してだけなのでかなり凄い事なんですけどね。




