03-34_エピローグ_幸せを見つけた者達
アクルス編最終回。
ヒーローが去った後の老夫婦とカトリー一家の話です。
03-34_エピローグ_幸せを見つけた者達
「ユナ、どうやら行ってしまったようだね。」
「彼らは旅人だから仕方ないけど、寂しくなるわね。」
ここはカトリー家の屋敷。
ヒーローズジャーニーを見送ったルーファスと由奈が思わず呟く。
そんな彼らに同意するかのようにカトリー親子も口々にヒーローズジャーニーとの別れを惜しむ言葉を口にする。
「そうか。兄ちゃん達、もう行っちゃったんだ。」
「なんか凄いあっさり出て行っちゃったけど、もう会えないんだよね。」
「そうね・・・彼らがいなかったら、きっとあなた達とも仲直り出来ていなかったでしょうね。」
「・・・そうだな。確かに寂しくなるが彼らにも事情があるのだろう。
まぁ、別れが寂しいのは仕方ないとして、新しい出会いもあった。これから子供達の事をよろしくお願いします。ルーファス殿、ユナ殿。」
「あら、ランスさん。採用って事で宜しいのでしょうか?」
ランスがサラリと採用通知を出した事に笑みを浮かべながら確認を取る由奈。
それに対して、ランスが表情を変えずに理由を説明する。
「当然ですよ。子供達はあなたとルーファス殿の事を気に入っているようですし。
それにあの高名なルーファス博士に子供達を見てもらえるのでしたら、私どもも安心です。」
「えっと、ルーってそんなに有名だったの?」
「あっ!ユナには言ってなかったね。僕って歴史学者の学会ではそれなりに有名なんだよ。」
「そうなんだ・・・本当に色々学んだのね。」
「あぁ、それが君の望みだっただろう。」
見つめ合うルーファスと由奈。危うく2人の世界に入りそうになる老夫婦を子供2人がすかさずツッコむ。
「ちょっと~、2人共~!イチャつくのは構わないけど俺達を置いてけぼりにしないでくれる。」
「そうだよ~。そんなにイチャついてると2人の恋バナを根掘り葉掘り吐かせちゃうよ。」
「おっと、そいつは困ったね。じゃあ僕らの話はこの辺にして、お仕事しようか。」
「そうね。じゃあ、カトラ君はルーと剣術の実技を、リルちゃんは私の魔法のお勉強ね。」
「えっ!ルーファス先生って剣術分かるの?」
「これでも昔はそれなりに強いハンターだったんだよ。得意武器は銛だけど剣も少しなら教えられるよ。」
「ユナ先生のお花を出したやつ。私にも使えるかな。」
「う~ん、あれは普通とはちょっと違う魔法だから難しいかも。取り敢えずやってみて出来そうなら教えるってことで。」
「わ~~い!!やった~~!!」
老夫婦と一緒に勉強出来る事に喜びはしゃぐ子供達。それを大人2人は目を細めながら眺める。
「フフッ、2人共楽しそうね。」
「・・・そうだな。さて、私は領主に話をつけてこなくてはな。まぁ危険なモンスターを追い払うためと言っていたし、今回は『石碑の魔女』のお告げもあったからそれほど問題にはなるまい。」
「あなた、夕飯にはちゃんと帰って来てね。」
「分かってるよ。では行ってくる。」
こうして老夫婦と家族の幸せな物語はこれからも続いていくだろう。
ご都合主義上等のハッピーエンドを齎してくれたヒーローへの思いと共に。
一方この風景をのぞき見している輩がいた。元『石碑の魔女』代行と運命神である。
「はぁ~。やっと私の肩の荷も下りたよ。ところでノーラ様、いつまでここにいるんですか?」
「まぁ、いいじゃありませんか。私だってたまには地上で羽を伸ばしたいですよ。」
「こう言っちゃなんですけど、あなたって私の力使って地上にいるんですよね。つまり、ただでさえ少ない私の力がガリガリ削られるって事なんですけど。」
「その事なら心配いりません。今回ので少なくとも6人があなたの力になる事が決まりましたから。
それにあなた、もう半分神様になってますので、信仰があれば割と簡単に力をつける事が出来ますよ。
さしずめ『石碑の魔女教団』でしょうか?」
「なんか名前がギリギリなんですけど!それよりも本題に入ってくれますか?あなたはかなり忙しい方なので理由もなく居付いたりはしないでしょう。」
「そうですね。取り敢えず私にもドクピいただけますか。」
「はい!分かりましたから、キリキリ喋っちゃってください!」
ユーナはドクピを再現能力で生成し、乱暴にノーラの目の前のテーブルに叩きつける。
それを何事もなかったかの様に受け取ったノーラはドクピを一服して話を切り出す。
「いえ、実はあなたという存在が非常に気になりまして。」
「ははぁ~ん。つまり邪神の一部であるはずの私を神様として調査しに来たわけですか。」
「まぁ、そう受け取ってもらって結構です。と言っても天界ではあなたを危険視する声はほとんど無いのですが。
これは単純に私の知的好奇心です。」
「さいですか・・・で、なにを聞きたいんですか?」
「まず、今回の邪神があのクレイジーサイコ女の索敵に引っ掛からなかった理由ですね。」
「クレイジー・・・もしかして篝ちゃんの事?彼女に恨みでも?」
「えぇ~、もの凄く大きな恨みがあります・・・まぁそれは置いておきましょう。
彼女の索敵能力は本物です。『魔女の石碑』には世界を数回滅ぼせるだけのエネルギーが内包されていました。
それだけ強大な負のエネルギーに気づかないはずがありません。
それにそれだけの負のエネルギーにさらされながら、あなたが邪神にならなかったのかも気になります。」
「そうだね~。まず何故発見出来なかったのか。これは単純に由奈ちゃんが完全に抑えていたからだと思いますよ。
いくら力が大きかろうと外に出てないんだったらそれは0と同じですから。」
「それは・・・流石チート能力持ち・・・いや、これは彼女の力ですね。
私が与えた能力に邪神を抑え込むだけの力はありませんでしたから。」
「あれ?やっぱり由奈ちゃんってノーラ様が関わっていたんだ。道理で変わった魔法を使うわけだ。
えっと次は私が邪神にならないわけ、でしたっけ。」
「はい、お願いします。」
「う~ん、これは単純に私と邪神が完全に分離しているってだけなんですよねぇ。
ご存じかと思いますが、邪神にとって正のエネルギーは毒ですから。
私みたいに正のエネルギーで生まれた部分はすぐに切り捨てられます。
つまり私と今回の邪神は同じ『孤島の石碑』という母体を共有していながら、全く別の2つの個体として存在していたというわけです。」
「少しややこしいですね。つまり家は一緒でも部屋は別々、と言う感じでしょうか?」
「まぁ、ちょっとざっくりし過ぎな気もしますがそんな感じです。
そして今回は汚部屋の住人を追い出して、残ったのが私という感じです。」
「邪神は汚部屋の住人なんですね・・・ゴミはちゃんと片付いたのでしょうか?」
「それはご心配なく。退去させた掃除屋さんがちゃんと焼却処分してくれましたから。」
「それを聞いて一安心です。ではここからが本題です。
私、実は通常業務が忙しくて、あまりこちらに構っていられなくなってしまったんです。
そこでユーナさんに私の代理としてヒーローズジャーニーをサポートして欲しいんです。
あなたなら邪神の居所も把握できますよね。」
「そりゃ全ヶ所、リアルタイムで分かりますけどいいんですか?私、元邪神ですよ。」
「それに関しては心配していません。先ほども言いましたが天界におけるあなたの危険度はほとんど0となっています。
それにあなたは由奈さんとルーファスさんの幸せの為なら協力は惜しまないはずです。
なんせ、将来自分のエネルギーになる候補なのですから。」
「まぁ、それ抜きにしてもあの二人には幸せになってもらいたいですけどね。
私は由奈ちゃんの書く、ハッピーエンドの物語が好きなんです。
だから彼女達にもその物語以上の最高のエンディングを迎えて欲しいんですよ。」
「それでは協力して頂けると言う事で結構ですか。」
「はい、これからよろしくお願いします。上官殿。」
こうして元邪神『名前ある者の神』ユーナがヒーローズジャーニーの新たなサポーターとなるのであった。
おまけ
「ではユーナさん、最後に質問があるのですが。」
「いいですよ。どんな質問ですか?」
「あなたの物語に書いていたエロ同人みたいになるって何ですか?」
「・・・お子様にはまだ早いです!!」
「つまり、由奈さんはお子様にはまだ早いような目にあったと。」
「すみません。なってません。あれはノリで書きました。ほら、本文にもしたりしなかったりって書いてるじゃないですか。」
「つまり、読者に勝手に期待させるような疑わしい内容を記載したと。」
「ちょっと、ナナシ君みたいな事言わないで下さいよ!既に一回ナナシ君に鉄拳制裁されてるんですから~~~!!!」
この後、先輩神様にコッテリ絞られる新人神様でした。
アクルスの危機を未然に防ぎ、一組の夫婦と家族を救ったヒーロー達。
次回からは地球編をお送りして参ります。




