03-33_ヒーローの一時帰還
アクルスの邪神を無事撃破したヒーローズジャーニーですが、今回旅立つ予定です。
03-33_ヒーローの一時帰還
「カトラ、リル。家庭教師候補を連れてきた。2人共、自己紹介をお願いします。」
「こんにちは、カトラ君、リルちゃん。家庭教師希望のルーファスだよ。」
「初めまして、カトラ君、リルちゃん。同じく家庭教師希望でルーファスの妻の由奈よ。」
「・・・」×2
これは『魔女の石碑』破壊から3日後
ベッドで寝ていたアリエル、ルーファス、由奈の3人の体調も全快したので、ルーファスと由奈の就職活動も兼ねて、カトリー家に訪問した時の遣り取りである。
ちなみにアポなしで来てしまったのでランスとリシアは不在、今はこの場にいるのはナナシ達5人とカトラとリルである。
いきなりの訪問に呆れながら兄妹はナナシ達に対応する。
「ちょっと、兄ちゃん達。いきなり来られても困るよ。こっちだっておもてなしの準備とかあるんだからさ。」
「ごめんね、カトラ君。あたしは止めたんだけどナナシ君が言う事聞いてくれなくて。」
「カトラとリルの家庭教師の選定を手伝うと約束したからな。いい人材が見つかったのだから早い方がいいだろう。そうしないと余所に取られてしまうからな。」
「フレイム君。そんなヒーロー式の方法、世間一般では採用されていないんだよ。確かに海外の支部はちょっと強引な方法で引き抜きしてくるから気持ちは分かるけど。」
「なんかフレイムさんと篝さんも苦労なさってるのね。取り敢えず今日は自己紹介だけって事でいいんじゃないかしら。」
皆の遣り取りに思わず苦笑いをしながら由奈が助け舟を出すと、それに乗っかりながらリルがルーファスに目をキラキラさせながら質問をする。
「そうだね。ところでルーファス先生ってご結婚されてたんだね。」
「いや、結婚したのは2日前だよ。」
「という事は新婚さんなんだ。どうやって知り合ったの?プロポーズはどっちから?熟年結婚だけど子供とかの予定はあるの?それから・・・」
「ちょっと落ち着いて。質問は一つずつよ。まずはどうやって知り合ったかと言うとね・・・」
やはりと言うべきか。リルは女の子という事もあって結婚の話に興味津々の様だ。
マシンガンの如く質問を繰り出すリルに由奈が丁寧に対応。流石、元作家先生なだけあってリルが知りたい事を分かりやすく且つ面白く受け答えする。
その話術は見事で元々リルほどは興味がなかったカトラも由奈の話を聞き入っている。
ちなみに2人が結婚した経緯だが、目を覚ましてすぐにルーファスから由奈に求婚し、由奈がそれを快諾。プロポーズの内容については2人だけの秘密という事にしておこう。
そうやって由奈と兄妹が仲良くなった所に、この家の当主ランスと妻のリシアが帰宅する。
「皆様、よくぞお越しくださった。孤島での調査は無事お済になったのだな。」
「あなた。初めての方がいらっしゃいますわよ。まずは自己紹介をしなくてはいけませんわよ。」
早速要件に入ろうとするランスをリシアが窘める。
その様子にこの場の全員が苦笑いをしながらルーファスと由奈が自己紹介を始める。
「初めまして、リシア殿。ランス殿には先日お会いしましたが自己紹介がまだでしたね。
私はルーファス、しがない学者です。お子様とは少し縁がありまして、今回は2人の家庭教師に応募に参りました。」
「初めまして、ランスさん、リシアさん。私はルーファスの妻の由奈です。
ルーファスと同じく、家庭教師の応募に参りました。これはお近づきの印です。」
そう言って由奈は一冊の本を取り出し、何か書き込み始める。
すると本の中から色とりどりの花束が現れる。そしてそれをリシアに渡しながら由奈は話を続ける。
「私、ちょっとですが魔法が使えまして、これは魔法で作った花で本物じゃないんですけど良かったら。」
「あら、これはご丁寧に。ありがとう、とっても綺麗な花ですね。」
この時、和やかな遣り取りを行う由奈とリシアを見守っていたランスの目が見開き、驚愕の表情が浮かぶ。
それに気づいたナナシがランスに理由を尋ねる。
「どうされましたか?ランスさん。由奈さんの魔法に随分と驚いていらっしゃいますが。」
「いや、すまない。あの魔法・・・まさか・・・『石碑の魔女』・・・いや、そんなまさか・・・」
「その辺はご本人に聞いてみるといいでしょう。それよりも先日の孤島の調査の話をしても。」
「・・・そうだな。頼む。」
ここでナナシが孤島であった出来事の報告と調査許可のお礼を口にする。
調査内容については孤島で『勇者ナベリウスの物語』の3部が発見されたので今は由奈が解読中という事にした。
また、あの時急いでいた理由については、孤島に危険なモンスターが住み着いていたので追い払う為、という事にした。
流石にドラゴンが10000匹以上とかアクルスの危機の話は出来ないのでモンスターのせいにして、ついでに島を破壊したのもモンスターのせいにした。
報告が終わったヒーローズジャーニーはカトリー家の家族に別れの挨拶をした後、ルーファスと由奈を残し、足早にこの場を後にする。
その時、ナナシが少し急ぎ足だったように思えた事に疑問を持ったアリエルが疑問を口にする。
「ねぇ、ナナシ君。ちょっと急いでいるみたいだけどどうしたの?もう少しカトラ君とリルちゃんとお話してもよかったと思うけど?」
「実は先ほどタイラント経由でノーラから連絡があった。今からユーナの元へ来て欲しいそうだ。」
「へっ?ユーナさんの所に?」
「タイラントに聞いても理由は分からないそうだ。どうも通信状態が良くないらしい。」
「あの女神ちゃん。またフレイム君にちょっかい掛ける気なのかな。今度こそ血祭に・・・」
「篝さん・・・もう一回滝行しますか?」
「いえ!冗談です!お姉ちゃんはフレイム君の言う事を聞くとってもいい子です!!」
「馬鹿やってないで行くわよ。2人共。」
「馬鹿をやっているのは篝さんだけだ。」
「うえ~~~ん!!お姉ちゃんの扱いが一段と雑だよ~~~!!」
などとお姉ちゃん(笑)が冷たくあしらわれた所で3人は駆け足で秘密基地の地下へと向かった。
「やぁ、やっと来た。思ったよりも遅かったね。」
「ユーナさん、仕方ありませんよ。私がいきなり呼び出したのですから。」
秘密基地の扉を開くと、そこには黒髪黒目の少女ユーナと銀髪銀目の10歳くらいの少女ノーラが椅子に掛けてお茶を飲みながらくつろいでいる姿があった。
いきなりの女神の登場にナナシと篝は唖然とし、その様子に初対面のアリエルは頭に疑問符を浮かべる。
そんな3人の反応に気づいたのか、ノーラが話を切り出す。
「まずは初めまして、アリエルさん。私がそちらのヒーロー2人をこの世界に送った女神、運命神ノーラです。
フレイムさんと篝さんもお久しぶりです。取り敢えず篝さんは土下座でもしてください。」
「あっ!えっと~、初めまして、アリエルです。」
「ふん、お姉ちゃんは何も悪くないもん。フレイム君にちょっかいを出した女神ちゃんが悪いんだよ。」
「篝さん、ノーラ様。話が進みませんのでその話は後にしてください。
自分達の前に現れたという事は何か重大な理由があるのでしょう。」
「そうなんだよ。ほら、ノーラ様。早く話を進めてください。」
「・・・コホン!分かりました。」
危うく篝とノーラが喧嘩になりそうになる所をナナシとユーナが諫めながら話を促す。
それに対して、ノーラも何か言いたげではあるが咳払いをしながら話を進める。
「まずは邪神の撃破お疲れさまでした。このアクルスに邪神がいない事を確認しました。
そこで早速で申し訳ありませんが次の話です。単刀直入にいいますと次の反応ですが普通の手段ではいけない場所にある事が判明しました。
そこで皆さんには、一回地球を経由して、再度私の力で転移してその場所に向かってもらおうと思います。」
「!!!!」×3
ノーラのいきなりの言葉に驚愕の表情を浮かべるヒーローズジャーニー。
そこに補足説明とばかりにユーナが口を開く。
「ちなみに一回地球に行くとこちらの世界で1ヶ月以上経過するから、やり残した事があったら今の内にやっておいて。
ただし、ノーラ様がこっちに居られるのは力の関係上あと10時間しかないからそれまでにお願いね。」
「ちょっと!いきなりそんな事言われても困ります。」
「確かに急だよね。ところでお姉ちゃん達、何かやり残している事とかあったっけ?」
「いえ、特には思いつきませんが。」
いきなりの地球行きに異議を唱えるアリエルに対して、のほほんとした様子の篝とナナシ。
その事にカチンときたのか、アリエルは声を荒げる。
「ちょっと!ナナシ君!あたしを強くしてくれるって言ったよね!
なのにあたしを置き去りにして地球に帰るの!あの約束は嘘だったの!」
アリエルの剣幕に対して、少し間を置きナナシはいつも通りの無表情で答える。
「・・・何を言っているんだ。君も地球に来るんだ。」
「えっ?」
「当たり前だろう。まだこの世界の『名前ある者の神』を全て退治していないのだから。
ヒーローズジャーニーのリーダーとして一緒に来てもらわないと困る。」
「フレイム君の言う通りだね。アリエルちゃんはお姉ちゃん達のリーダーなんだから。」
ナナシの言葉に驚くアリエルと相変わらずの無表情のナナシと太陽の様な笑顔で相槌を打つ篝。
そんな彼らを眺めながらノーラが話を切り出す。
「それでは、何もないのでしたら地球への転移を始めたいと思うのですが。」
「あっ!待ってください。ハンターギルドに休業申請しとかないと。
戻った時に登録抹消とかになるかも。」
「むっ、それは拙いな。そうなったら身動きが取れなくなるかもしれない。」
「じゃあ、ギルドに行くついでに地球のみんなへのお土産も一緒に買っていこうよ。
純ちゃんに百香ちゃんに百合ちゃんに蒼太君、それから・・・」
「おいおい、言っておくけど魔力を使ったものは地球では使えなくなるからね。
お土産は魔道具以外にするんだよ。」
「・・・あと9時間ですから、出来るだけ早めにお願いしますね。」
こうしてヒーローズジャーニーは次なる目的地へと向かうために、運命神の導きの元、一路地球を目指すのであった。
大量のお土産を抱えた篝に、ナナシとアリエルが呆れながら。
次の目的地は地球です。初めての異世界にアリエルは何を思うのか。
でも次回はアクルス編の最終回。
アクルスに残された由奈とルーファス、カトリー一家の様子をお送りしたいと思います。




