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03-27_ヒーローと『勇者ナベリウスの物語_終わりの章』

今回は『勇者ナベリウスの物語_終わりの章』の内容について触れて行きます。

03-27_ヒーローと『勇者ナベリウスの物語_終わりの章』


「では、これより作戦会議を始めるよ。」


ヒーローズジャーニーとルーファスが秘密基地を出た後の事。カトリー家に向かおうと思っていたがその日はもう遅かったので一旦ホテルに戻る事にした。

4人がヒーローズジャーニーの泊まるホテルに戻り、そこでルーファスが発した一言をきっかけに作戦会議が始まった。


「ではまず、どこから話そうか。」


「まずは行動指針からだね。アリエルちゃんには悪いけどもう領主の許可とか悠長な事は言ってられないね。」


「それについては悔しいけど同感ね。一応ランスさん達には一言断りを入れてすぐに乗り込むしかないね。」


今まで散々犯罪者にならない様に気を使っていたアリエルだが、先ほどの地下室の調査とナナシの様子からもはや悠長に許可を取っている暇はないと判断していた。

そんな皆の様子を確認したナナシは軽く頷いた後、話を続ける。


「では、明日は朝一番でカトリー家に行き、ランスさん達に断りを入れた後にその足で孤島の地下に乗り込む。この流れでいいな。」


「異議なし!!」×3


一刻も早く『石碑の魔女』を助けたい。皆の想いは完全に一致しているが、流石に世話になる人間に迷惑は掛けられない。

その結果、孤島に乗り込むのは明日の朝に決まった。方針が決まった所で次の議題はアリエルから出る。


「ところであたしとカガリさんは『終わりの章』を知らないんだけど、内容を聞かせて貰ってもいいかな?」


「そうだね。お姉ちゃんも気になる。」


「では自分が・・・」


2人の求めに応じ、ナナシが『終わりの章』を読み始める。



==================


『勇者ナベリウスの物語_終わりの章』


ナベリウス達が海竜を倒してすぐの事だ。

海に平和が戻ったことで街の人達は大喜び。みんなは海竜殺しの英雄を称えてお祭りを始めた。

ナベリウスもみんなに英雄として祭り上げられ、もみくちゃにされながらもみんなが幸せそうにしているのが嬉しくて一緒に祭りを楽しんだ。


だがそんな幸せな光景の中にも碌でもない人間はいるものだ。

悪い事を考える人間はナベリウスと少女に取り入ろうと近づいてきた。

少女がそれを突っぱねると、あろうことか悪い人間は少女を捕らえて監禁した。

そしてナベリウスに嘘をつき、悪事の片棒を担がせた。

その事に怒った領主はナベリウスを悪党共々牢屋へと放り込んだ。


ナベリウスが囚われの身となったのと時を同じく、少女は街の中にいた善良な市民達の手によって助け出されていた。

そしてナベリウスが捕らえられた顛末を知った。


少女は怒り狂った。今まで自ら禁じていた石碑の使ってはいけない力に手を出した。

少女は禍々しい瘴気に覆われながら、石碑から無数の飛竜を召喚した。

そして自分を助けてくれた善良な市民達を『絶対に壊れない要塞』へと避難させ、ナベリウスの元へと向かった。


飛竜は街の全てを蹂躙した。少女は怒りのままに魔法を放ち、逃げ惑う人々を無差別に攻撃した。

大人も子供も老人も男も女も関係ない。ナベリウスを捕らえた者とその家族に友人知人、ナベリウスの窮状を見て見ぬふりした者とその家族と友人知人。

ナベリウスをこんな状況に追い込んだ人間とそれに関わる全てが憎かった。

気づけばアクルスは瓦礫の山と化し、復讐は果たされていた。だが少女の心の闇が晴れる事はなかった。

少女が次の標的を求めて歩き出すと彼女の後ろから、ゴトゴトと瓦礫から何かが這い出る音がした。

次の標的が現れたと思い少女がそちらを向くと、そこにはボロボロのナベリウスがいた。


この時、少女は正気を取り戻した。ナベリウスが生きていた事に歓喜した。

だが同時に後悔した。少女はナベリウスと一緒に歩くには穢れ過ぎていた。

今も飛竜達に蹂躙される人々の怨嗟の声が聞こえる。

もう消えたい。こんな姿ナベリウスに見せたくない。その思いから動けなくなった少女を・・・


ナベリウスは抱きしめてくれた。


少女はナベリウスの暖かな腕の中で、完全に自分を取り戻した。

最後の力を振り絞り、少女はナベリウスの幸せを願う言葉を紡ぎ、彼に幸せな『物語』を送る事を約束した。

そして少女はナベリウスの記憶を消し、彼を飛竜の背に乗せ旅立たせた。


それから幾十年もしかしたら幾百年かもしれない。とにかく長い年月が流れた。

世界中を旅し、たくさんの知識を学び、たくさんのものに触れ、たくさんの人に出会った老人のナベリウスが復興したアクルスへと訪れた。

そこでナベリウスは2人の兄妹に出会った。彼らは親と喧嘩をして家を飛び出してきたらしい。

ナベリウスは2人に事情を聞き、仲裁し親子を仲直りさせた。その親子こそがかつて少女を助けた一族の末裔、カトリー家の人達だった。

その事をきっかけにナベリウスはカトリー家の人達と仲良くなり、カトリーの子供達の家庭教師になった。

それから暫くはカトリーの人達と穏やかで幸せな日々を過ごした。


だが、そんな穏やかな日々は長くは続かなかった。

ナベリウスがアクルスに戻ってから、少しずつ昔の記憶を取り戻していったからだ。

そしてある日の事、ナベリウスはとうとう少女の事を思い出した。


ナベリウスは居ても立っても居られず、約束の地、自分の生まれた孤島へと向かった。

だがそこはナベリウスが知る、白い砂浜と青い海と空に囲まれた美しい孤島ではなかった。

黒い瘴気に包まれ、植物は死滅し、無数の飛竜が飛び交う、悪夢のような光景だった。


このままでは近づけない。ナベリウスがそう思った矢先、島の東の方から光が見えた。

どうやらそこだけは瘴気もなく、飛竜も近づけない安全な場所らしい。

ナベリウスは光に導かれるまま、島の東へと上陸する。そこには見た事もない洞窟があり、そこを進むと・・・


【黒い瘴気に包まれた少女】がいた。


ナベリウスが少女に呼びかけると彼女もそれに気づいたようだ。その黒い瘴気は少しずつ晴れていく。

瘴気が薄くなったのを見たナベリウスはそのまま少女の元へと駆け寄ろうとする。

だが少女がそれを制止した。


「ナベリウス。私はもう限界みたい。だからお願い。あなたの手で私を終わらせて。」


少女のその言葉と同時にナベリウスの身体に変化が訪れる。

老人から青年へとその姿は変わり、その手にはかつて海竜を退治した時に使った巨大な銛。

これが意味する所は一つ。その事を悟り動揺するナベリウスに少女は微笑みかける。


「ねぇ、ナベリウス。最後にお願いがあるの。」


「・・・何?」


「もう全部思い出したでしょう。私の本当の名前を呼んで。最初にあなたに自己紹介した名前。」


「うん、分かったよ。・・・さよなら・・・〇〇」


その言葉をトリガーにナベリウスの銛は少女と彼女の持つ石板を砕く。

その瞬間、ナベリウスは光に包まれ意識を失う。


そして気が付けば、老人に戻ったナベリウスはどこかの浜辺に打ち上げられていた。

そこには心配そうに彼の様子を確認するカトリー家の人達とたくさんのアクルスの住民達がいた。

老人に戻ったナベリウスの中からは少女の記憶は完全に消えていた。


このあと彼は優しい人達に囲まれて、幸せに暮らすだろう。

例え自分が忘れられていてもそれだけで少女は満足だった。

これからおそらく地獄に落ちるであろう少女は最高の笑顔を浮かべながら旅立つ。

少女が愛した英雄の幸せを願いながら。


『勇者ナベリウスの物語』 完


作:香取(かとり) 由奈(ゆな)


==================


・・・・・


ナナシが『終わりの章』を読み上げてから暫し、部屋の中は重い沈黙に沈む。

それからタップリ時間をかけて、最初に口を開いたのはアリエルである。


「何、この最低の駄作は!誰一人救われてないじゃない!!!」


「お姉ちゃんも同感だよ。これは断固抗議だね。」


女性2人が作者『石碑の魔女』香取由奈に対して怒りの咆哮を上げる。

その意見に男性2人も同感だったらしく、頷きながら声を上げる。


「僕も2人に同感だよ。何が『幸せな物語を書く』だ!こんな駄作、僕は絶対に認めない!」


「・・・決まりですね。では今日はこの辺で休んで、明日の為に英気を養いましょう。」


「うん、賛成!!」


「と言いたいところだが、アリエルはまだ訓練が終わってないから、これから訓練だ。」


「えっ!嘘でしょう!ナナシ君の鬼!悪魔~~~ッ!!!」


「・・・やっぱりお姉ちゃんもアリエルちゃんに付き合うよ。」


「・・・・・・」


本当に毎日2時間訓練を行おうとするナナシのせいで、木霊するアリエルの悲鳴。そして篝は肩を落としながら訓練に付き合う事を宣言。

ルーファスは心の中で『明日本当に大丈夫なのか』とツッコミを入れながら、一人ベットの中へと向かうのであった。

なんというか、我ながら酷い出来ですね。

こんなものを『幸せな物語』と言われたら誰だって腹が立つでしょう。


次回、とうとうヒーロー達が『石碑の魔女』香取由奈が待つ孤島へと向かいます。

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