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03-25_ヒーローは怖い読者

今回も引き続き、秘密基地の地下室を探索して参ります。

03-25_ヒーローは怖い読者


「家具等に怪しい点はないな。となるとやはり気になるのは本棚だが。」


「うん・・・多いね。」


「地上の本の数の比じゃないからね。」


「まぁ、調べるしかないだろう。」


ヒーローズジャーニーとルーファスは答え合わせのヒントを探すべく地下室を探索するのだが、これがなかなかに曲者だ。

とにかく本が多い。これを全部読んでいたのでは時間がかかり過ぎてしまう。

その上書かれているの大半が日本語の為、この場で読めるのがナナシと篝の2人しかいない。

今はナナシと篝が本の表紙を見てジャンルごとに振り分けている所だ。

一方アリエルとルーファスはアナシスの言葉で書かれた書物を確認している所だが、アリエルは慣れない本との格闘に早くもノックアウト寸前である。

そんなアリエルを余所にルーファスは一冊、気になる本を発見する。『日本語辞書』である。

これを発見したルーファスとナナシが『石碑の魔女』の意図について思考を巡らせる。


「これって・・・つまり僕にこの日本語の本を読めってことなのかな。」


「そうだと思いますよ。自分が楽しむ為だけならその本は必要ありません。

わざわざ日本語で書いて、辞書を用意するあたりに何かしらの意図を感じますが。」


「多分、その答えはこれに書いてるんじゃないかな。」


そう言ってアリエルが一冊の本を手に取りながら、全員に話し掛ける。


「『日記帳』か。おそらく『石碑の魔女』のものだろうがこちらはアナシスの言葉で書かれているな。

こんな誰でも見れる場所に置いているという事はルーファスさんに読ませたかったのだろう。」


「では失礼するよ。」


そういってルーファスはアリエルから日記を受け取り中身をあらためる。


「えっと・・・

『〇月×日

私はナベリウスを送り出した後、アクルスを滅ぼした。邪神の力を使って。

今、生き残っているのは私を悪党の手から助けてくれた人達とその仲間と家族だけだ。

私は大量虐殺者だ。でもこの人達は決して私を責めなった。

助けてもらった恩を仇で返すような愚か者には当然の報いだと慰めてくれた。

でもおそらく私は私の事が許せないだろう。もう誰にも合わせる顔が無い。

だから私は石碑に願って私の分身を作り、彼女に『石碑の魔女』の名を譲り皆の世話をお願いした。

この日『石碑の魔女』は生き残った人達をカトリー家と名付け、街の復興を始めた。


□月△日

あれから数年が経った。『石碑の魔女』とカトリー家による復興作業は順調。

街は少しずつだが活気を取り戻しつつある。私の出番はもうないだろう。

私の残された使命はこの身に巣くう邪神の力を抑える事だけだ。

何年持つかは正直分からない。それでも耐えなくてはならない。

あの時、虐殺した私の被害者の怨念が今でも囁きかけて来る。

痛みを訴え、私を呪う声を上げ、私の心を蝕む。全く私は卑怯者だ。

私は今、受けるべき報いを受けているだけなのに被害者面して自分の現状を嘆いている。

こんな姿、ナベリウスにはとても見せられないなぁ。


△月〇日

ナベリウスと約束した本『勇者ナベリウスの物語』3部が完成した。

これでナベリウスとの約束を果たせる。今は記憶失くしているだろうけど、きっと世界中を冒険してたくさん楽しい思い出を作っているだろうなぁ。

そんな事を想像するだけで、怨念達の声に耐える力が沸いてくる。あなたが幸せなら私はそれで十分。早くあなたの思い出話が聞きたいなぁ。

あなたがどれだけこの本の中身と同じことを体験したか、きっとこの本以上の素敵なことがたくさんあったんだろうなぁ。

あぁ~、早くあなたに会いたい。


×月□日

あれから更に数十年が経った。アクルスの復興はほぼ完了し、世代も少しずつ変わりつつある。

あの頃子供だったカトリーのお坊ちゃんが今では孫に囲まれている。

私達を知っている人達がどんどんいなくなる。私の代わりを務めてくれていた『石碑の魔女』ももう表舞台には出ていない。

後どれくらい、怨嗟の声に耐え続ければいいのだろう。この声に負けるのが先か、ナベリウスとの約束を果たすのが先か。

お願いナベリウス。どうか早く戻って来て。あなたのいない世界はとても寒い。


〇月△日

あれから多分数百年が経過したと思う。アクルスはすっかり平和なリゾート地へとその姿を変えた。

あとは私の中に抱えた爆弾を処理出来れば、この街の安全を脅かすものは無くなる。

私がいなくなった後もこの街ならナベリウスもきっと幸せに生きていける。

そろそろ私は限界だ。ナベリウス、お願い、早く私を見つけて。そして全てを終わらせて。』


・・・ここまでだよ。」


日記を読み上げたルーファスの手は震えていた。

あんまりだ。こんな事許されていいはずがない。これでは彼女があまりに報われない。

ルーファスはこの世界の理不尽と己の無力に憤りを感じずにはいられなかった。

だが決して涙だけは零してはならない。何故なら彼女も耐えがたい苦痛に耐え、今でも自分の事を待ってくれているのだから。


そんな彼の元にナナシが無言で一冊の本を渡す。表題にはこう書いていた。


『勇者ナベリウスの物語_終わりの章』


本を受け取ったルーファスは無言で読み始める。

そして待つこと、数時間。ルーファスは『ナベリウスの物語』の全てを知った。

先ほどまで必死で堪えた涙を抑える事が出来なくなったルーファスは蹲り、自分の肩を抱きながら震える声で呟く。


「こんなのひどすぎる。僕はこんな未来・・・望んでない・・・」


「・・・ではその結末を変えに行きましょう。」


ナナシは普段は無表情なその顔に柔らかい笑みを浮かべながら答える。


「自分も先程この本を読ませて頂きましたが、この内容はいただけない。

これは作者に是非とも抗議する必要がありますね。」


「フレイム君・・・君は一体何を?」


「自分の趣味は読書ですが、バッドエンドは好みではありません。

一読者としてこの物語をハッピーエンドにするよう、作者に書き換えさせましょう。」


そう言ってヒーローはかつての英雄に手を差し伸べる。

つまらない物語を書いた作者がどうなるか。怖い読者(ファン)達は力づくで物語を改稿させることを決意した。

『ナベリウスの物語』の全てを知ったルーファスとナナシ。

次回からは内容を改稿させるべく孤島へと乗り込む準備を始めます。

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