03-24_ヒーローと邪神?との対話
今回は『名前ある者の神』を名乗る少女との対話です。
03-24_ヒーローと邪神?との対話
「まぁ、待ちたまえ。私に敵意はない。」
「・・・そうみたいだね。あなたからは邪神特有の負のオーラが感じられないもの。」
「・・・」
黒髪の少女が『名前ある者の神』を名乗った瞬間、ナナシが即座に臨戦態勢に入ったが、少女と篝がこれを制止する。
篝の言葉を受け、ナナシもひとまず拳を収める。ただし即座に攻撃はしないもののナナシは依然警戒態勢。
そんな剣呑な空気の中、少女はため息をつきながら話を始める。
「はぁ、しっかしナベリウス君。エラいものを連れて来てくれたもんだね。
まさか私の前身である『名前ある者の神』を砕いた『名前のない悪魔』を連れて来るとは。」
「名前のない悪魔?」
ルーファスが少女の発言に引っ掛かりを覚え思わず聞き返した事に対して、少女が応じる。
「あぁ、そこの黒髪の男の事だよ。彼は真正の化け物だからね。元邪神の私ですらこの男は怖くて仕方ないよ。」
「・・・」
「・・・訂正して・・・」
この少女の発言に沈黙が広がる中、アリエルが肩を震わせながら彼女に食って掛かる。
「はぁ?・・・」
その言葉は少女にとって意外だったらしく思わず間抜けな声で聞き返すが、それがアリエルの逆鱗に触れた。
「訂正して!ナナシ君は悪魔なんかじゃない!!」
「アリエル、放っておけ。自分は別に奴に何を言われようと気にしない。」
「あたしが気にするの!あなたはあたしの恩人なんだから!」
「・・・アリエル。」
激昂するアリエルに対して、少女は両手を上げ降参のポーズを取りながら先ほどの発言を詫びる。
「・・・そうだね。訂正しよう。確かに彼は悪魔じゃないね。立場が違えば見え方も違ってくるし、これから話をしようって相手にこれは失言だったよ。
ナナシ君でいいかな、非礼を詫びるよ。それとついでにその殺気を向けるのをやめてくれると助かるんだけどなぁ~。」
「・・・はぁ、本当に敵意がないようだな。こちらこそ悪かった。」
「まぁ、君の立場ならそれも仕方ないよ。それより私は『石碑の魔女』に託された使命を果たしたいんだけどいいかな。」
そう言って、今までのどこか飄々とした態度から打って変わって真剣な表情で少女が話を切り替える。
「ナベリウス君。彼女は私にメッセージを託した。
『私達が出会った孤島で待っている。そこで答え合わせをしよう。』だそうだ。」
「・・・」
「私は彼女が何を思ってそんなメッセージを残したのかは分からない。
でも一つだけお願いしたい。彼女を開放してやって欲しい。
私はもう、彼女のふりをする事に疲れてしまったんだよ。」
目の前の少女が口にする意外過ぎる言葉にナナシが思わず問いを投げかける。
「・・・君は『名前ある者の神』ではないのか?」
「『名前ある者の神』だよ。でも邪神じゃない。」
「・・・」×4
少女が放つ思いもよらない言葉に一同が黙り込む中、少女『名前ある者の神』が言葉を続ける。
「君達、地球人は少し誤解をしているみたいだね。
邪神が負のエネルギーを喰らうんじゃない。負のエネルギーを喰らった者が邪神になるんだ。
この違い、そこのお嬢さんなら分かるんじゃないかな。」
少女がそう言って篝に水を向けると、それに篝も頷く。
「つまり、邪神も元を正せば精霊と同質の超常的なエネルギーから生まれた者ってことだよね。
要するに餌が違えば育ち方も変わるって事かな。」
「まぁ、平たく言うとそういうことになるね。正のエネルギーを食べれば精霊、負のエネルギーを食べれば邪神になる。
ちなみに邪神『名前ある者の神』の元の姿ってなんだと思う?実は意外とどこにでもあるものだよ。」
この少女の質問にナナシが少し考えこんで答える。
「墓・・だな。」
「ナナシ君、正解!もっと言っちゃえば無念の内に死んだ人間の墓だね。
ほら、墓って誰でも最後には入るものでしょう。それが『名前ある者の神』のコピー能力の正体。
無縁仏って言うのもこの世にはあるけどそんなのは関係ない。名前があれば誰かしらと繋がるし、実際に墓が立たなくてもその繋がりから墓に入る事だって出来る。
コピーできないのは名付けられる前に死んだ赤ん坊くらいかな。」
「それと自分みたいに本当に名前を失くした人間くらい・・・か。」
「それに関しては完全にイレギュラーだけどね。そんな生物がこの世に存在するなんて邪神だって想像出来なかっただろうから。」
「ちなみにモンスターは?」
「それは人間がアンデット化を避ける為に土に埋めるだろう。それが墓と見なされるんだ。」
「では何故、あなたは邪神じゃないの?」
「それはね。満たされて死ぬ人間もいるからだよ。もっともそんな人間なんて本当に微々たるもので、ほとんどの人間の死は苦痛が伴うから大体は邪神の燃料になるんだけどね。
つまり私は『名前ある者の神』の微々たる部分ってわけだ。」
「よく分からないけど、君は味方という事でいいのかな。」
「うん、その認識でいいよ。流石ナベリウス君、重要なのはその一点だけだよね。」
自分の身の上を話す『名前ある者の神』に対して、話について行けないルーファスが取り敢えず必要な事だけ確認する。
そしてそれに答えた少女が今後についての話を切り出す。
「じゃあ、私が味方だと理解してもらえた所で今後について話していこう。
まず『石碑の魔女』についてだが、彼女はもう限界だ。
ナベリウス君は何となく分かっていると思うけど、また数百年前に起きた『魔女の厄災』が起こりつつある。
今度はアクルスだけじゃ済まない可能性があるよ。」
「それを回避する方法は?」
「正直分からない。ナベリウス君の答え合わせがカギになってくるだろうね。
一番確実なのはそちらのヒーロー2人による『石碑の魔女』の完全討伐だろうけど・・・きっと好みじゃないよね。」
「それについては行ってからの判断になるね。」
「『魔女の厄災』までの猶予は分かるか?」
「こればかりはなんとも。明日すぐってことはないけど、100年後ってこともない。そのくらいしか分からないよ。」
「それなら許可をもらった後に行っても問題なさそうだな。」
「あっ!一応気にしてくれてたんだ。」
「気にしろといつも言ってるのは君だ。」
「では、許可が下りるまでは宿題の答えについて調査しよう。」
「うん、それが良さそうだね。まずはこの部屋の探索からだね。」
こうして、ヒーローズジャーニーとルーファスの4人は部屋の調査を始める事にした。
その様子を眺める少女『名前ある者の神』が微笑ましいものを見る様な目で彼らを眺めている事に気づくものはいなかった。
『名前ある者の神』から齎された危機、『魔女の厄災』。
ヒーロー達はこれを止める事が出来るのか。
次回、ルーファスの宿題について調べてまいります。




