03-22_ヒーローと秘密基地探索再び
今回からヒーローが『石碑の魔女』を救うために動き出します。
03-22_ヒーローと秘密基地探索再び
「うっ、グズッ。ガドリーナざん、がわいぞ~~!!ズズッ!!」
「カガリさん。ハンカチどうぞ。」
「うん・・・ありがどう・・・アリエルぢゃん。」
「・・・」×2
ルーファスの話を聞いた後、篝は顔面からありとあらゆる液体をまき散らしながらボロ泣きしていた。
そしてその隣で涙目になりながら篝にハンカチを渡すアリエルをなんとも言えない表情で眺める男2人。
どうやら男2人は篝がガチ泣きするものだから涙が引っ込んだらしい。(ナナシは多分それが無くても泣かないが)
彼らは篝が落ち着くのを待ってから話を進める。最初に口を開いたのはナナシである。
「ルーファスさん。あなたが記憶を取り戻したのはいつですか?自分達と会った時にはまだ記憶は戻っていなかったみたいですが。」
「ここに来た時から少しずつは戻っていたんだけど、完全に戻ったのは君達と別れた直後、調査資料をでっち上げている時だね。
それらしい資料を作ろうと記憶を探っている時に思い出したんだ。」
「あなたの目的は何ですか?ただの知的好奇心だけで『勇者ナベリウスの物語』の3部を探しているわけではない事は分かりましたが。」
「カトリーナの未練を断ち、彼女を救うためかな。勿論彼女の残してくれた最後の作品を読みたいという個人的な欲求もあるけど。」
「彼女を救うとは?」
「彼女はおそらく黒い瘴気、邪神の力に今も苛まれている。
それでも彼女は邪神の力を手放さないだろう。僕が幸せになった事を確認するまではね。」
「その根拠は?」
「ない。でも分かるんだ。彼女は今も苦しんでいる。そしてそれはもう限界を迎えようとしている。
彼女が抑えてくれている邪神の力が解き放たれるのは時間の問題だ。そうなればまたアクルスは滅びてしまうだろう。」
「また・・とは?」
ナナシはルーファスの言葉に引っ掛かりを覚え、疑問を口にする。
「アクルスは一度『石碑の魔女』の手によって滅ぼされているんだ。
それを彼女が保護した一部の善良な市民が復興したのが今のアクルスだよ。
今の領主やカトリー家はその末裔だね。」
「彼女の未練を断ち切れたとして、邪神の復活を阻止できる可能性は?」
「それは正直分からない。彼女の未練が無くなった瞬間、彼女が消えて邪神が蘇るという可能性もある。」
「その際の邪神を止める手段は?」
「ない。僕が全盛期と同じだけの力を持ってたとしても全く歯が立たないだろう。」
この言葉を聞いたナナシは・・・思わず獰猛な笑みを浮かべる。
これは倒すべき敵を見つけた狩人の表情だ。
今まで無表情だった彼が放つ凄まじい殺気にルーファスが思わず怯む。
「つまり自分達の出番というわけですね。ようやく尻尾を掴んだぞ。
『名前ある者の神』。」
「・・・君達は一体?」
困惑するルーファスの問いに冷静さを取り戻したナナシが淡々とした口調で答える。
「自分達はヒーローズジャーニー。邪神『名前ある者の神』を追って世界を旅するヒーローチームです。」
「・・・・」
ナナシの名乗りに戸惑いと共に沈黙するルーファス。
そんな張り詰めた空気の中、アリエルが話を切り替える。
「取り敢えず目的地が決まったのはいいけど、許可が下りるまでには少し時間があるよね。この後どうしようか?」
「そうだな。少し時間もある事だし、アリエルの戦闘訓練を集中して行うというのはどうだ?」
「そんな事されたら、あたし死んじゃうからね。比喩無しで。」
「そうだよね。赤坂君ですら48時間しか耐えられなかった集中訓練をアリエルちゃんにやったら、間違いなく死んじゃうからね。」
「えっと、今までちょくちょく名前が出てきたけどそのアカサカってどんな人なの。」
ここでアリエルが2人の会話によく出て来る人物、赤坂について気になったので質問してみる。
それに対してナナシが少し渋い顔をしながら答える。
「赤坂列人、ヒーローチーム『エレメンタルズ』所属。炎の刀の使い手。
自分達の所属する日本ヒーロー連合における問題児の一角。連合の中でもトップクラスの接近戦闘能力、耐久力、精神力の持ち主。
基本的な性格は真面目なのだが思考パターンや持っている能力が色々と厄介でトラブルが絶えない人物だ。
最近起こした問題としては『胸囲の格差社会廃絶の会』の設立未遂と訓練用防具の買い替え事件だな。」
「へっ?なんかわけの分からない会は置いておくとして、どうして防具を買い替えた事が問題なの?」
「一人一人の体にピッタリの防具に買い替えたからだ。それも男女問わずにな。」
「それってつまり・・・」
「奴はヒーロー全員の身体情報を所持しているという事だ。」
「変態だッッッッ!!!!」
アリエルは真の変態の存在に絶叫する。
そんな彼女を後目にナナシは淡々と説明を続ける。
「奴は相手を一目見ただけでその身体情報が分かるという特殊能力の持ち主だ。」
「ヤダ!あたしその人に絶対会いたくない。見られただけでスリーサイズが駄々洩れになるって事でしょう!
そんなの覗きにあっているのと同じじゃない!」
「しかも彼にはデリカシーというものが欠片もないので、時々その情報をポロリと口にする。」
「やめて~~~!!そんな事されたらあたし、お嫁に行けなくなる!!」
「自分は奴が問題を起こすたびに制裁を加えるのだが一向に直る気配がない。任務中ではあるが一度様子を見に戻りたくはあるな。」
「一応フォローしておくけど、赤坂君は優しい子なんだよ。困っている人はほっておけないし、後輩や子供の面倒見は凄くいいの。
小さな子をいじめている男の子とかいたらサブミッションかけて黙らせたり、お洋服が破けて困っている子がいたら気づかれない様に縫って直してくれてたり。
ただサブミッションは本当に痛みMaxな感じの奴やるからトラウマになったりするし、お洋服を直す時は本当に気付かれないようにするからある意味ホラーって言うのはあるんだけどね。」
「怖いよ!!ナナシ君といい、カガリさんといい、その人といい、ヒーローって碌な奴がいないの!!」
「随分と失礼な言いようだが取り敢えず置いておこう。今はこの後どうするか、という話だ。」
「それなら僕に一つ提案があるんだがいいかな。」
ここで今まで蚊帳の外だったルーファスが言葉を発する。
「一度、カトラ君とリルちゃんの秘密基地に行ってみたいんだ。
あそこは元々僕とカトリーナがハンター時代に暮らしていた場所なんだ。
今の記憶が戻った僕なら何か気づけるかもしれない。」
「なるほど。それではそうしましょう。他に出来る事もありませんし。」
こうしてルーファスの提案に従い、ナナシ達は再び秘密基地へと向かう事にした。
歩く事暫し、ナナシ達は秘密基地にたどり着き、アリエルが扉に手を掛けるが、
「ん?開かない。鍵はついてないと思うけど?」
「どれどれ・・・」
「ちょっと!ナナシ君!」 バキッ!
開かない扉を確認する為に手を掛けるナナシに対して、嫌な予感がしたアリエルが制止するも一歩及ばなかった。
無情にも破壊音と共に扉が開かれる。だが部屋の中の様子は以前来た時とは違っていた。
「ちょっと!なんなのこれ!」
「・・・どうやら防衛装置が働いたようだな。」
ナナシが壊した扉のその先には無数の黒い本が宙を浮き、今にもこちらを攻撃せんと警戒態勢を取っていた。
黒い本からけたたましいブザーと警告のメッセージが流れる。
『侵入者に告ぐ!!至急この家から退去せよ!!繰り返す!!この家から退去せよ!!』
どうやら黒い本はまだ警告だけでこちらを襲ってくるつもりはないようだ。
ナナシ達は遠巻きに様子を窺いながら原因について思案してみる。
「前回は平気だったよね。どうして今回はダメなんだろう?」
「・・・おそらく、カトラ君とリルちゃんがいないからだよ。」
「そう考えるのが妥当かと。ここに入るにはカトリーの一族が必要だったのでしょう。」
「どうする?今からでもカトラ君とリルちゃんを連れて来る?」
「いや、これからは危険な事も多くなる。これ以上子供達は巻き込めない。ここは強行突入する。」
アリエルの問いに篝が答え、ナナシがそれに同意する。
本来、入場にはカトリーの一族が必要なのだろうが、邪神が絡んでいる以上、ナナシには子供達を巻き込むという選択肢はないようだ。
ナナシは部屋へ足を踏み入れたと同時に1000を超える黒い本の群れに対して単独での突入を敢行する。
『侵入者あり!迎撃を開始する!』
『紅蓮連脚』
黒い本はナナシに対して無数の魔法弾にて迎撃行動を開始する。
それに対してナナシは灼熱の業火を帯びた蹴りにて迎撃。
一瞬の出来事だ。魔法弾はナナシの蹴りで相殺され、そこから発生した紅蓮の炎の余波が黒い本を残らず焼き払う。
この光景にナナシの強さを唯一知らないルーファスは口を大きく開け驚愕する。
「・・・凄まじいね。英雄と呼ばれていた頃の僕ですら比べ物にならない。」
「まだまだだよ。フレイム君、部屋の中に被害を出さない為にうんと手加減してたから。」
「それは本当かね・・・」
「残念ながら本当です。ナナシ君が本気を出したら街一つじゃ済みませんから。」
「・・・・・・アリエル君がそう言うのなら本当なのだろう。」
「えっ!お姉ちゃん、信用されてない!!」
篝の悲しい抗議が木霊する中、彼らは秘密基地での調査を再開するのであった。
再び秘密基地を探索する事になったナナシ達。
一体何が見つかるのか。次回、地下室にて驚愕の発見を予定しております。
ちなみに今回、ナナシ達の話に出てきた赤坂列人は前作の主人公です。
気になる方は『ヒーローは二度死ぬ 転生先はゲームの世界? 世界を守ったヒーローが今度は村の平和を守ります。』をご覧ください。(宣伝乙)




