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03-17_ヒーローと仲直り

今回はカトラとリルの家族会議です。

無事仲直り出来るといいですが。

03-17_ヒーローと仲直り


「よし、今日の訓練はここまでだ。」


「やっと終わった・・・死ぬかと思ったよ。」


訓練が始まって2時間、アリエルはようやく訓練から開放された事に胸をなでおろす。

訓練内容はひたすらナナシとの組み手で全力攻撃、全力防御、へばったり気絶したりすれば篝の回復術で即復帰させられる、の繰り返しである。

この光景に一般人且つ子供のカトラとリルは完全にドン引き、篝は見慣れているので平気どころかナナシにしては優しいと思うほどである。

そして家族会議まであと1時間、ここで5人はナナシが持ち込んだ軽食をつまみながら作戦会議を行うことにした。


「もぐもぐ、ところで今回の家族会議の目的だけど、まずはカトラ君とリルちゃんの不満を纏めないとね。」


「もぐもぐ、そうだな。それから出来ればご両親の性格も知っておきたい。」


「もぐもぐ、お姉ちゃんとしてはあのマクガバン(クズ)がいなくなる事で大半は解決すると思うんだけど。」


「もぐもぐ、でもまた新しい教師があのマクガバン(ポンコツ)みたいだったら嫌だし。」


「もぐもぐ、そうだね。家庭教師に対する要望を言えるか、もしくは家庭教師を雇う事自体を辞めてもらうかしてもらわないと安心できないよね。」


「ごくん、加えて親の放任主義も気になるな。」


「がぶっ、それは言えてるね。そもそも親がしっかり2人とコミュニケーションを取っていれば今回の事態は回避できたのに。」


「むしゃむしゃ、それをウチの親に求めても仕方がないかな。2人共仕事の虫だし。」


「ごくごく、そこに関してはいくら口約束しても信用できないよね。」


「・・・・」×3


どうやらここの両親は子供からの信頼を完全に失っているようだ。何かを約束しても信頼がなければいつ約束を反故にされるか不安が残る。こうなってしまうとなかなか改善は難しくなる。

ヒーローズジャーニーの3人が沈黙する中、リルがポツリと独り言の様に言葉をこぼす。


「カガリちゃんみたいな人が先生だったらなぁ~。」


「・・・」


その言葉に再び、沈黙が広がる。それからタップリ時間を置き、口を開いたのは篝だ。


「ごめんね。お姉ちゃん、旅の途中だから2人の先生にはなれないんだ。でも2人がもしよかったらここにいる間はお姉ちゃんの所に遊びに来てもいいよ。」


「カガリちゃん・・・」


「そうだね。ついでに新しい先生も一緒に探してあげるっていうのはどうかな。

あたし達とカトラ君とリルちゃんのおメガネに適った人を先生にするって言うのは。」


「まぁ、親にその役割を期待できない以上、そうするしかないだろうな。だが・・・」


「・・・ナナシお兄ちゃん」


ナナシがカトラとリルに何かを呟いた所でドアからコンコンというノックの音が聞こえた。


「カトラス様、リリウム様。そろそろお時間です。」


「うん、今行く。父上にもそう伝えてくれ。」


「承知いたしました。」


迎えに来た執事に返答したカトラがみんなの方へ向き直る。


「それじゃ、行こうか。」


「うん。」


こうしてカトラとリルは自分達の権利を勝ち取る為の戦いへと赴くのであった。


そして場所は変わって屋敷の応接間。

彼らが到着すると既に2人の男女がソファーに腰かけていた。

片方は言わずと知れた兄妹の父ランス、もう一人の女性はおそらく母親だろう。

5人の到着を確認した女性が最初に口を開く。


「カトラス、リリウム。ご無事で何よりですわ。

そちらの方々が2人を連れて来て頂いたの事で、誠にありがとう存します。

わたくしは2人の母のリシアでございますわ。

あなた方には何かお礼をと思っておりますが、何かご要望はございまして。」


ヒーローズジャーニーに対して丁寧に挨拶をするリシアだが、この時アリエルは若干表情を引き攣らせる。

今回のお礼としてこの会談に臨んでいるのに、そこでお礼したいなんて追い出したいと言う意図が見え見えである。

それをわざとやっているという事は、つまりこちらを信用していない事の意思表示とも取れる。

アリエルは思わずヒーロー2人の様子を確認したが、彼らは気づいていないようだ。

その点にホッとしながらアリエルはチームの自己紹介と事情の説明、家庭教師に対する要望などを話す。

それに対して、カトラとリルが頷き、両親が口を開く。


「・・・なるほど。あれは妻の親戚の紹介で優秀な男だと聞いていたのだが、どうやらあてが外れたようだな。

子供達の教育の為に良かれと思って雇ったのだが。」


「全くですわね。マクガバンは即刻解雇し、親戚には抗議を致しませんと。

しかし困りましたわね。早く新しい教師を見つけないと、マクガバンのせいで遅れた教育が更に遅れてしまいますわ。」


「!!!」


この瞬間アリエルは自分の後ろから感じる気配に背筋を凍らせた。


「・・・それだけですか?」


そこにはこの両親の反応に対して、怒りを燃やす者、篝(現在オン)がいた。

篝は煮えたぎるような思いを静かに吐き出す。


「あなた達が雇った家庭教師のせいで子供達が家出するほどの苦痛を味わったんですよ!

なのに言う事が、教育が遅れる、ですか!あなた達にとって子供とは何ですか!」


「・・・」×2


部屋の中に篝の怒声と重たい沈黙が広がる。

『子供の教育』にしか言及しない親達に対して、怒気を抑えられない篝が勢いのまま言葉を重ねる。


「はっきり言わせて頂きます。子供の事を顧みる事が出来ない人間に親を名乗る資格はありません。

あなた方は「カガリちゃん・・・もういいよ。」」


熱くなり本来言うべきではない言葉を口にしようとする篝をカトラが静かな声で制止する。

それから少し間を置き、場の空気が静まった所でカトラが言葉を続ける。


「もう、いいんだ。ここに来る前から言っただろう。この両親には何も求めていないって。

だから、もうどっちでもいいんだ。」


「今まで食べさせてもらった分の恩義があるから跡継ぎ教育は頑張るけど、それ以上の事は期待するのが間違いなんだ。

きっともうこの関係は変わらないしそれが気に入らなければ家を出るしかないんだよ。」


「いや、ちが・・「当主様、これからは立派な跡継ぎになれる様に頑張りますので、どうか我々を見捨てないでやって下さい。」」


「カトラス、リリウム。私達はそんな・・「奥方様、先ほど申し上げさせて頂いた通り、今まで食べさせていただいた恩義を返す為、これからも精進いたします。どうかご安心下さい。」」


カトラとリルの言葉に今までほとんど感情を動かさなかったランスの顔が初めて焦りと後悔に歪み、リシアの顔から張り付けていた笑顔が剥がれ、憔悴しきった表情が浮かぶ。

そんな2人に追い打ちをかける様にカトラとリルは張り付けた笑顔で頭を下げる。


「ご当主様、奥方様。これより我々は跡取りになる為の勉強がございますので失礼されて頂きます。」


「貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。それではこれにて。」


その言葉を残して2人は応接間を後にする。

そして残されたのは意気消沈したランスとリシア、それからヒーローズジャーニーの3人だけだ。

ランスは絶望した表情で独り言の様に呟き、リシアもそれに続く。


「カトラスとリリウムは・・・私達をご当主様、奥方様と呼んでいたな・・・親ではないと。」


「・・・そうですね。今思えばあの子達に親らしい事ってした事あったかしら・・・」


「もう・・・手遅れなのだろうか。」


「それは子供達が決める事です・・・でも今更虫が良すぎる気もしますが。」


そんな後悔に沈み重すぎる空気を放つ2人に対して、そういった空気を一切無視してナナシが言葉を投げつける。


「随分と落ち込んでおられるようですが、跡取りが戻って来たのならそれでいいのではないですか。」


この言葉はランスとリシアの傷に塩を塗り込むものだった。

流石にこれにはアリエルも焦り、急いでナナシを止めようとするがそれを篝が何かを呟きながら制止する。

一部騒然とした雰囲気の中、ナナシの言葉がショックを受ける2人を更に抉る。


「結果だけ見れば、あなた達の望みは叶いました。この上何が不満なのですか?」


「・・・ナナシ君。君は親になった事がないから分からんのだろう。

一部の例外はあるが大抵の親は子供が生まれた時にはこの上ない喜びを感じるものだよ。」


「・・・」


「だがいつからだろうな。日々の忙しさにかまけてその時の気持ちを置き去りにしてしまった。」


「・・・」


「私は・・・私達はカトラスとリリウムがいればそれでよかったんだ。」


「・・・」


この瞬間、ナナシの無表情な口角が僅かに上がる。


「だ、そうだ。カトラ、リル。」


その声と共に


応接間の扉が開き、俯いたままどうすればいいか分からず途方に暮れるカトラとリルが姿を現す。


そんな2人にランスとリシアが駆け寄り抱きしめる。


「すまない、カトラス、リリウム。辛い思いをさせたな。」


「ごめんなさい。寂しい思いをさせたわね。」


「・・・うん、寂しかった。心細かった。」


「でも・・・もう大丈夫なんだよね?」


「ああ、もう大丈夫だ。」


4人が抱き合い、再び家族になったのを見届けたヒーローズジャーニーはその場を一旦離れる。

そしてある程度距離が離れて自分達の声が聞こえない事を確認してアリエルが口を開く。


「しかしカガリさんがいきなりあの両親に『エアウィスパード』(スピーカー魔法)を掛けろって言った時は驚いたよ。」


「まぁ、お姉ちゃん程になればフレイム君が何を考えているのかなんてお見通しだからね。両親を煽って本音を引き出そうとしていた事くらいバレバレだったよ。」


「正直助かりました。そのままの声ではあの二人に届くか五分五分でしたから。」


「聞こえていなくても追わせる気だったでしょうから結果は同じなんだけどね。」


「ああいう場合、当事者を前にすると本音を言いづらいものです。特に親ともなれば。」


「所でナナシ君。部屋を出る前に2人に何か呟いていたけどあれは何だったの?」


「あぁ、あれは『両親の本音を知りたければ、自分達が部屋を出るまでは何があっても扉の前から離れるな。』と伝えたんだ。」


「ねぇ、ヒーローってエスパーかなんかなの。」


ナナシの余りの先読みっぷりに頬を緩ませながら呆れるアリエルだった。

無事、家族と仲直りが出来たカトラとリル。

次回は子供達にルーファスとの関係を聞いていきたいと思います。


補足

ナナシが何故エスパーばりの先読みが出来たかというと、まずは心音や呼吸音で心理状態が分かる事、それから読書家で本を大量に読んでいたため、そういったシチュエーションを想像出来た事が理由です。

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