03-16_ヒーローとアリエルの特訓(入門編)
さぁ、今回はナナシによるアリエルの特訓です。
アリエル・・・生きろ。
03-16_ヒーローとアリエルの特訓(入門編)
「アリエル、まずは君の実力を知りたい。全力で掛かって来い。」
「うん、本気で行くよ!」
カトラとリルに案内されてやって来たのは屋敷の中庭。
今から行われるのはナナシによるアリエルの戦闘訓練である。
彼我の距離は10m、アリエルが剣を構えているのに対してナナシは素手で構えすら取っていない。
これを見たカトラとリルは心配そうに篝に話掛ける。
「ねぇ、カガリちゃん。アリエル姉ちゃんは剣を持ってるけど大丈夫なの。
構えの感じからちゃんと訓練を受けているっぽいけど。」
「しかもアリエルお姉ちゃんの魔力ってかなり高いよ。多分お父さんより。
ナナシお兄ちゃん大丈夫なのかな。」
それに対して篝は苦笑いをしながら答える。
「えっとね。お姉ちゃんとしてはアリエルちゃんの方が心配かな。
フレイム君を本気で倒そうと思ったら軍隊でも足りないから。」
そんな話を3人がしている中、ナナシとアリエルの方に動きが見られた。
最初に動きだしたのはアリエルだ。
「せい!!」
袈裟掛けに剣で切りつけるアリエルの攻撃がナナシに命中した・・・ように見えたがその剣はナナシをすり抜けた。
視覚では確かに剣は命中したのに、手には全く感覚が残っていない。この現象に困惑しながらアリエルが2撃目を放つ。
今度は腹部に対する刺突だが結果は同じ。またしても剣はナナシの体をすり抜ける。
その後もアリエルは振り下ろし、切り上げ、逆袈裟、横薙ぎと様々な攻撃を繰り出すがどれもナナシの体をすり抜ける。
その光景に観戦していたカトラとリルも目を丸くして驚嘆の声を上げる。
「えっと、お兄ちゃん。これってどうなっているの?」
「分からないよ。俺にはアリエル姉ちゃんの攻撃がナナシ兄ちゃんに当たっている様にしか見えないけど。」
「あれはね、命中する瞬間に紙一重で攻撃を躱して元の位置に戻ってるだけだよ。」
「えっ!そんなの無理だよ。アリエル姉ちゃんの剣って結構速いよ。多分いっぱしの騎士でも勝てないくらいの実力があるよ。」
「そうなんだ。そう言えばカトラ君は剣もやるんだったね。という事はこっちの騎士の実力はそれほどでもないってことか。」
そんな話を3人がしている中、アリエルの攻撃が100を超えたあたりでナナシが静かに呟く。
「次は魔法も使って、自分を本気で殺すつもりで打ち込め。」
「うん、分かった!『サンダーボルト』!!」
「ちょっと!アリエルお姉ちゃん!何てことするの!」
ナナシの言葉を合図にアリエルの魔力が一気に高まり、雷撃となってナナシに襲い掛かる。
それを見たリルが思わず非難の声を上げる。アリエルの魔力はこの世界の基準で言うと最上位だ。
今アリエルが放った雷撃も上級の魔法使いが扱うそれで、魔法の心得があるリルにはその危険性を十二分に理解できたからである。
その上、魔法の心得があればナナシに魔力がない事はすぐに分かる。リルがナナシの身を案じるのはある意味当然なのだ。
しかし今回は完全に取り越し苦労だった。
「・・・アリエル。もっと出力を上げてもいいぞ。」
そこには全く無傷でしかも威力に対して不満全開のナナシが佇んでいた。
ナナシのその様子に対してアリエルが全力で抗議する。
「ちょっと!そんな事したら周りに被害が出るでしょう!」
「周りの被害は考えなくてもいい。どうせ君の魔法の威力では周りに被害など出ない。」
「ちょっと!何よ、その言い草!!自分がちょっと強いからって調子に乗って!もう頭来た!全力でいかせてもらうわ!『メイルシュトローム』!!」
淡々と語るナナシの態度に頭に血が上ったアリエルが自分持てる最強の攻撃魔法を放つ。今アリエルが放ったのは水の上位魔法で渦潮を巻き起こす範囲攻撃魔法である。
その凄まじい魔力の量にカトラとリルは顔を青くし、これから起きるであろう惨状に震え上がる。
だが魔法はいつまで待っても発動しない。この現象にアリエルは思わず舌打ちし、カトラとリルは困惑して声を上げる。
「えっ!なんで魔法が発動しないんだ?リル、確かに魔法は発動したよな?」
「うん、間違いなく発動したよ。今でも凄い量の魔力がこの辺に渦巻いてるもん。」
「カガリちゃん、なんでか分かる?」
「・・・あの魔法って確か水の魔法だよね。フレイム君は魔法が発動した瞬間に炎で水をすべて蒸発させたんだよ。」
「えっ!嘘!『メイルシュトローム』の水を一瞬で・・・ありえないよ!」
「でも言われてみると少し蒸し暑い気がしないか?これって水を蒸発させたせいじゃないか。」
篝の説明を受け、あまりの出来事に驚きを隠せないカトラとリル。
そんな2人を余所にナナシはアリエルに対して非情に宣言する。
「アリエル、今度は攻守交代だ。自分が打ち込むから結界で全力でガードしろ。」
「えっ!嘘でしょう!『守護方円』!!ってちょっと・・・きゃ~~~!!」
「うむ・・・弱5000か。思ったより持ったな。」
結界でカメの様にガードを固めるアリエルに対して、ナナシの拳が無情にも結界ごと彼女を吹き飛ばす。
その後何か呟いているナナシに対して、篝が話し掛ける。
「あぁ~、アリエルちゃん、伸びてるよ~。フレイム君!女の子にはもう少し優しくしないとダメじゃない!」
「篝さん、これは訓練ですよ。優しくしては強くなれません。それより彼女を起こしますので回復術をお願いします。」
「相変わらず鬼だね。ところで結果はどうだった?」
「攻撃は全く話になりませんが結界はそこそこ強いと言った所でしょうか。弱パンチを5000発耐えた所を見るに怪人の攻撃を数発くらいなら防げそうです。」
「う~ん、こっちの世界で怪人の攻撃を防ぐような事態が発生するかは疑問だけど、それなら初心者向けの訓練くらいはできそうだね。」
「そうですね。では、アリエルを叩き起こして訓練の続きをしますので。」
「・・・この人達、絶対ヤバいよね。」×2
カトラとリルは、自分達から見ると十分に強いアリエルを赤子の手にサブミッションを掛けるが如く易々と倒された挙句不満を漏らすナナシと、それを見て平然とアリエルの治療をし訓練に送り出す篝にドン引きするのであった。
なお、アリエルの地獄の特訓、本日分はまだまだ続く模様。
アリエルの受難はまだまだ続きそうです。
次回は家族会議を予定しております。
補足
ヒーローの訓練法ですが、基本的に今回のアリエルみたいにギリギリまで追い込んで、回復術で超回復を促すと言うものです。
この方法で1日で10~100日分くらいの訓練をするからヒーローはあっという間に人外になります。




