03-15_ヒーローと悪夢の予感
今回はダメ教師を追い出した後の家出兄妹の様子をお送りします。
なんかサブタイが物々しいですが、あくまでも予感です。
03-15_ヒーローと悪夢の予感
「さて、お勉強はここまでにしようか。」
「えっ!もう終わりなの?」×2
カトラとリルが勉強を始めてから1時間、篝が勉強の終わりを告げる。
それに対してカトラとリルは早く終わった事に驚きを見せる。どうやらあの役立たずはダラダラと長い事、授業と言う名の拷問をやっていたようだ。
そんな2人の様子に篝が太陽の様な笑顔で応じる。
「うん、2人共良く頑張ってるみたいで、その年にしてはお勉強も進んでるみたいだし、このくらいでいいと思うよ。
それより2人が普段どうやって過ごしているのか知りたいな。」
篝はどうやら今だオンの状態らしく、その表情は優しい先生である。
篝はこれでオンの時は優秀な教育者である。教え子の生活環境にも気を配るのは彼女にとっては当然の事なのである。
そんな意図を知ってか、知らずか、カトラとリルも篝の求めに素直に応える。
「うん、それじゃ、俺達の部屋に案内するぜ。まずは俺の部屋からだな。」
それから部屋を出てカトラの先導の元、彼の部屋へとやって来た。
部屋の中は小ざっぱりしていて整理整頓が行き届いており、掃除もきちんと行われている。
まぁ、この屋敷には使用人が何人もおり、専属のメイドさんもいる為、当然と言えば当然である。
本棚には小説と教科書が数冊、壁には訓練用と実戦用の剣が立てかけられている。
どうやらカトラは剣術の手ほどきも受けているようで、ナナシはカトラの手に出来た僅かな剣だこを見逃さなかった。
そして気になるのは本棚の小説である。なんと一部日本語の物が含まれていた。その事についてナナシがカトラに質問をする。
「カトラ。この本だがこれは家に代々伝わるものだったりするのか?」
「うん、それはあのマクガバンに写本させられた時の物で内容は分からないんだけど。」
「ちっ!あのクズ。読めない物を写本させてどうするのよ。それじゃ字の勉強にも本の内容の勉強にもならないじゃない。」
カトラの返答に篝が思わず舌打ちをしながら毒づく。
その反応に苦笑いをしながら、カトラが話を続ける。
「もしよかったら兄ちゃん達それ貰っていいよ。どうせ俺達には読めないし。」
「そうか、でももらうだけでは悪いから翻訳した本を後で渡そう。見た所娯楽小説みたいだからな。」
「・・・ウチに代々伝わっている秘蔵の本って娯楽小説だったのか。」
自分の家で受け継いできた物のあんまりな正体に思わず間の抜けた声を漏らすカトラ。
ちなみに本のタイトルは『頑張れプルコギトン1号』である。内容は少年ケイとロボット『プルコギトン1号』と博士ドカの交流を描いたコメディーの様だ。
これを見たナナシはロボットをこの世界の人間にどうやって説明するか真剣に悩んでいた。
そんなナナシを置いてけぼりにしながら次はリルが元気に手を挙げながら話を切り出す。
「はいは~い!それじゃ次は私の部屋に行きま~す。」
嫌な教師の授業が無くなった為か、先ほどより元気なリルが皆を自分の部屋へと案内する。
部屋の中はカトラの部屋と同様シンプルで整理整頓および掃除は行き届いているが、やはり女の子でだけあってぬいぐるみ等がいくつか見受けられる。
そして衣装箪笥にはフリフリの洋服と魔法使いのローブの両方が入っており、リルが淑女と魔法使い両方の教育を受けている事が窺えた。
そして本棚にはやはり日本語の本があり、こちらのタイトルは『アメリー、アメリー』だった。
内容は天真爛漫な少女アメリーがその明るい性格で学園の生徒達と友情を深め、恋をする少女向けの小説である。
どうも『石碑の魔女』は小説を自作していたと思われる。そうでもなければ異世界でこんなに日本語の小説が出てくるわけがない。
しかも世界設定が完全に地球である。どう見てもこちらの世界の人間が書ける代物ではない。おそらく『石碑の魔女』は異世界転移した地球人なのだろう。
そんな事をナナシが考えていると、リルがその本を手に取り篝に駆け寄ってくる。
「えっと。もしよかったらこの本も貰ってくれるかな。私はどうせ読めないし。」
「えっ!いいの?だって家に代々伝わるものなんでしょう?」
「いいの。それって写本だし、その本にあんまりいい思い出ないから。」
「クソ!あのゴミめ!幼気な少女にトラウマ植え付けやがって!あいつは後でOSHIOKIだ!」
「落ち着いて、カガリさん。気持ちは分かるけど、あいつは失業者にでもしてやって、再就職不可にしてやれば十分地獄を見ると思うし。」
「うわぁ~。アリエルお姉ちゃんも結構えげつない復讐思いつくんだね。」
「まぁ、奴の処罰はご両親に任せるとして、その本も良ければ翻訳しよう。見た所明るい内容の少女向け小説だ。出会いはともかく本に罪はない。」
「・・・うん!じゃあお願いするね。」
蛆虫の所業に対して、怒りに燃える篝とアリエル。そしてその嫌な思い出を明るい思い出に変えてくれるナナシの提案にリルが笑顔で応じる。
ちなみにナナシは本を読む時は超雑食でジャンルは一切問わないので、少女向けの物でも割と抵抗なく読むことが出来、翻訳も問題なく行える。
能無し以外は特に問題が見受けられなかった事にホッとした一同は家族会議が始まる昼過ぎ(13時頃)まで時間を潰すことにした。
そしてこの時、ナナシはアリエルに悪夢の提案をする。
「家族会議が始まるまでおよそ3時間だが。アリエル、今から君の訓練をしようと思う。」
「えっ!嘘!こんなところで!」
この寝耳にウォーターなナナシの発言に困惑するアリエル。だがナナシの目はマジだ。
これを聞いたカトラとリルは面白そうな事が起こる予感に目を輝かせ、篝はアリエルの末路に思わず合掌する。
「カトラ、リル。すまないが運動が出来る広さの庭などがあれば案内してほしい。」
「うん、分かった。みんな俺についてきて。」
「さぁ、みんな行こう。」
ここに来た時よりはるかに元気になった少年少女を見ながら、肩をがっくり落としその後を追うアリエルであった。
はい、サブタイの悪夢の対象はアリエルでした。
次回、ナナシ対アリエル?をお送りします。




